産総研AIスパコン、TOP500世界5位に:LINPACKで19.88PFLOPSを達成
富士通は2018年6月26日、産業技術総合研究所(産総研)向けに開発するAI(人工知能)処理用途スーパーコンピュータ(スパコン)が、スーパーコンピュータ性能ランキングの1つである「TOP500」において、世界5位、国内1位を獲得したと発表した。
富士通は2018年6月26日、産業技術総合研究所(産総研)向けに開発するAI(人工知能)処理用途スーパーコンピュータ(スパコン)「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(AI Bridging Cloud Infrastructure、以下ABCI)」が、スーパーコンピュータ性能ランキングの1つである「TOP500」において、世界5位、国内1位を獲得したと発表した。
また、スパコンの電力性能比を測るランキング「Green500」においても世界8位を獲得している。
NVIDIA Tesla V100を4352基備える
ABCIは、同社製サーバ「PRIMERGY CX2570 M4」を計算ノードとして1088台集積する。1ノードあたり、Intel Xeon Scalable Processorを2基(合計で2176CPU)、NVIDIA Tesla V100を4基(合計で4352基)備え、ローカルストレージにはNVMeに対応したIntel SSD DC P4600シリーズを採用した。外気に近い温度の冷却水によってサーバを冷却する水冷方式を採ることで、高い省電力性を実現した。
LINPACK計測では計算ノード1088台を用い、ピーク性能は19.88PFLOPSを達成。同社と富士通研究所がこれまでHPC(High Performance Computing)開発で培ってきた経験から、システムの性能バランス最適化を施し、GPU演算効率の向上やノード間通信処理の最適化を最大限に引き出したとする。また、1Wあたりの演算性能は12.05GFLOPSで、「(ピーク)性能だけでなくエネルギー消費効率の良いスーパーコンピュータシステム」(同社)だという。
ニューラルネットワークなど、AI開発において有効とされる16ビットの半精度浮動小数点におけるピーク性能は550PFLOPSを見込んでいる。
産総研は2018年8月よりABCIの本格稼働を予定しており、国内最速のAI処理向けオープンインフラストラクチャとして、研究機関や大学、民間企業の研究など幅広い層に向けて計算資源を提供するとしている。
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