自動運転、カーシェア……車の未来を照らすスタンレー:エレメーカーが展望する車の未来(3/3 ページ)
自動車のヘッドランプを始めとして、各種の光デバイスに関して高い技術力を持つスタンレー電気。同社で先進技術担当取締役を務める貝住泰昭氏に、未来の自動車で生まれる光デバイスのビジネスチャンスを聞いた。
光源とセンサーのマッチングを突き詰める
EETJ 光源の自社開発によって生まれる価値とはどのようなものですか。
貝住氏 自動運転に必要不可欠なセンサーに最適なランプが開発できるということだ。例えば、ステレオカメラに搭載されたCMOSイメージセンサーの光学特性に沿った波長で発光する光源を開発する。この光源をランプに追加することで、カメラの感度向上が実現する。
この業界では、発光素子を開発するメーカーと受光素子を開発するメーカーが協力関係を構築することはあまりなかった。スタンレーでは、10年以上前よりイメージセンサーメーカーと手を組んでマシンビジョン用光源の開発を進めており、センサーの感度向上に貢献している。また、われわれも社内でToF(Time of Flight)センサーを開発しており、センサーが光源に求めることを肌で理解できている。
光源とランプへのこだわりで新しい価値を
EETJ 人の目のための光源から、センサーのための光源へと、光源の役割は拡大していますね。
貝住氏 他にも、光源で実現できることは、数多くある。
カーシェアリングによってドライバーと車の関係性が変わりつつある中、可視光で光るランプだけでなく、紫外線や赤外線といった見えない光で新しい価値を提案したい。カーシェアでは不特定多数の人が1台の車を共有するが、風邪などの病気に感染した人が利用した場合、ウイルスや菌が車内に残存する可能性がある。
われわれは発光波長265nmで50mWと高出力な深紫外LEDを開発しており、このLEDをエアコンブロワーに組み込めば車内空気の殺菌ができる。このブロワーは、カーシェアリングに衛生という付加価値を提供できるだろう。
ランプと光源の開発はスタンレーが手掛ける。この部分は絶対に譲れない。しかし、先ほどの話でいうセンサーメーカーやブロワーメーカーなど、自社の事業領域以外に強みを持つ会社と手を組み、新しい価値を創造することにためらいはない。
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