武器は横断提案と密結合、東芝が見いだす車載の勝ち筋:エレメーカーが展望する車の未来(3/3 ページ)
日系半導体ベンダーの雄として、ディスクリートからシステムLSIまで豊富な車載ラインアップをそろえる東芝デバイス&ストレージ。同社は2017年10月に、車載半導体事業の拡大に向けて「車載戦略部」を新設した。同部署で部長を務める早貸由起氏は、これからの車載事業戦略をどのように描いているのか――。
コネクテッドカー実現に向け、Ethernet AVBを活用
EETJ 情報の観点では、どのような点に注力されていますか。
早貸氏 車と車内、車外の人やデバイス、インフラは今後ますますつながりを深めていく。このようなコネクテッドカーの実現をサポートする技術について、われわれは幅広く提供している。特に、車とスマートフォンなど身の回りのデバイスを接続する無線や、エッジ動作可能なボイストリガー、車載ネットワークのEthernet AVBに注力しているところだ。
車載ネットワークは広帯域化とワイヤハーネスの軽量化に取り組まなければならず、イーサネットの採用が進みつつある。一般的なイーサネットはベストエフォート型のネットワークだが、車載システムではより低リスクで安定した接続性能が必要だ。Ethernet AVBでは、遅延保証などネットワークの安定性に関わる点を規格に盛り込んでおり、高信頼性な接続性能を確保している。
Ethernet AVBが特に必要とされる領域は、テレマティクスのモデム部分だ。この点に関してわれわれはQualcommとの共同開発を行っている。同社の次世代LTEモデム「Snapdragon」を車に搭載する場合は、東芝のEthernet AVBブリッジチップが標準部品として紹介されることとなっており、グローバルで引き合いを得ている製品だ。
2020年には売上規模を1000億円強に
EETJ 今後の事業戦略をお聞かせください。
早貸氏 ディスクリート製品とシステムLSIを併売する半導体メーカーが少なくなった現在、技術に対する裾野の広さを強みとして生かす。また、Viscontiやモーター制御技術といったミックスドシグナル製品に加えて、LiDAR、Ethernet AVBブリッジチップといった新機軸の製品も高い競争力があると期待している。
また、地域戦略を策定し海外市場での拡販を進めている。技術のけん引役となっている欧州市場では支社を置き営業活動を推進し、成長著しい中国市場では月1回は各OEMやTier1に訪問活動を行っている。
これらの活動を堅実に実行し、車載半導体事業の売上規模を2016年度実績の約700億円から2020年度には1000億円強にすることを目指している。
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