半導体業界の行方は米中の交渉次第:まずは3月1日に注目
2018年の世界半導体チップ出荷数量は、1兆個を上回るという過去最高記録を達成した。米国と中国は現在、米ワシントンDCにおいて、広範を網羅する貿易協定を成立させようとしており、世界中の注目を集めている。
2018年の半導体業界は非常に好調だったが、2019年の行方は、今後の交渉にかかっている。
2018年の世界半導体チップ出荷数量は、1兆個を上回るという過去最高記録を達成した。米国と中国は現在、米ワシントンDCにおいて、広範を網羅する貿易協定を成立させようとしており、世界中の注目を集めている。この協定が実現すれば、世界最大の半導体チップ市場とサプライチェーンに大きな影響が及ぶことになるだろう。
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)によると、中国と米国の2018年における半導体売上高成長率は、それぞれ20.5%と16.4%で、過去最高を記録したという。2018年の世界半導体売上高は、前年比13.7%増となる4688億米ドルだった。
半導体の売上高成長率は、メモリ価格の下落や貿易摩擦、中国の景気低迷などといった圧力を受け、急速に低迷している状況にある。2018年の12月と第4四半期の成長率は、2017年同一期間比で横ばい状態、2016年同一期間比で7%〜8%下落している。
WSTSは、2019年の半導体売上高成長率について、わずかながら2.6%伸びる見込みだとしている。市場アナリストたちが−1%〜+2%と予測しているのに対し、わずかに高い予測となっている。
実際の数値は、少なくともある程度、2019年3月1日を期限とする米中間の貿易交渉の結果によって、左右されることになるだろう。この貿易交渉では、大豆から半導体に至るまで、あらゆる分野が対象となる。
米国政府への要望
米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)は、トランプ政権に対し、「貿易交渉の中で、IP(Intellectual Property)保護の強化と、中国が技術移転を強制していることに対する方策について、取り上げてほしい。また中国は、国内の半導体業界の中でも、特にDRAMおよびNAND型フラッシュメモリの新工場建設に数十億米ドル規模の助成金を投入しているが、それを中止させるべきだ」とする要望を上げている。
SIAのCEO(最高経営責任者)を務めるJohn Neuffler氏は、「メモリ市場の成長低迷や、非市場によってけん引される過剰生産能力に関する予測などは、それほど重大なシナリオではない。それでも、中国が2019年に、どれくらいの量のメモリを市場に投入することができるのかは不明だ」と述べている。
またSIAは、トランプ政権に対し、関税を利用するのを止めるべきだと陳情している。Neuffler氏は、「関税をツールとして使用するのは間違っている。関税によって打撃を受けるのは、米国経済の方だ。われわれはこのことを、うんざりするほどトランプ政権に説明してきた」と述べる。
今回の貿易交渉は、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiが、米国から詐欺罪と産業スパイの嫌疑を掛けられているさなかに行われる。Neuffler氏は、このようにかなり政治色の強い状況を解決するための方法については、助言を控えている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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