Qualcommがデータセンター向けAI市場に本格参入:推論アクセラレーターを発表(2/2 ページ)
Qualcommはサーバ市場において、急速に競争が激化しつつあるデータセンター向けAI(人工知能)推論処理の分野に参入するという、新たな挑戦を試みている。
Qualcommの発表で打撃を受ける新興企業も
Facebook AIのプロダクトマネジャーを務めるJoe Spisak氏は、同社の消費電力量が毎年倍増している主な原因がAI分野にあることを示すデータを披露し、データセンターの消費電力量の重要性を強調した。同氏は、「こうした状況は当社にとって、持続不可能であるため、十分な高速化を実現可能なデータセンターを構築することができない」と述べている。
Moorhead氏は、「今回Qualcommは、確かに差別化を実現した」と述べる。同氏は、QualcommのKressin氏の低消費電力化に関する考え方や、半導体チップを大型化する方が小型化よりも容易だとする見方について賛同している。
さらにMoorhead氏は、「Cloud AI 100の発表は、現在AI推論処理市場への参入に力を入れている新興企業に大きな打撃を与えるだろう。中には、今後5年以内に、倒産に追い込まれたり買収されたりする新興企業も出てくるのではないか」と指摘した。
また、同氏は皮肉交じりに、「今回Cloud AI 100が発表されたことで、ベンチャーキャピタル市場では不安のため息がもれているのではないだろうか」と述べる。
Qualcommはこれまで、サーバ市場への参入がうまくいかず苦労してきた。同社は2017年に、Armベースのサーバプロセッサ「Centriq」を鳴り物入りで発表したが、その約1年後となる2018年に、Centriqを市場から撤退させる結果となった。
この他Qualcommは2019年4月9日に、同社のモバイルプロセッサ「Snapdragon」のロードマップを拡充し、モバイルプラットフォーム「Snapdragon 730/730G/665」を追加したと発表した。AIやゲーミング、高性能カメラ機能など、優れた機能の搭載をうたう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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