ソフトバンクとAlphabet、“空飛ぶ基地局”設置へ:成層圏に無人機を飛ばして基地局に(2/2 ページ)
ソフトバンクは、2019年4月25日、AeroVironmentとの合弁会社であるHAPSモバイルを通して、成層圏に無人航空機を飛ばして通信基地局とする「HAPS事業」を展開することを発表した。無人航空機「HAWK30」も開発しており、2023年の実用化を目指す。
2025年には日本でも実用化へ
HAWK30は、バックボーン回線にあたる「フィーダリンク」と、スマートフォンと通信する「サービスリンク」の2つの周波数を利用する。サービスリンクで利用できる周波数は、現在2.1GHz帯だけだが、標準化活動により2024年以降には、450MHz〜2.6GHz帯でも使用可能になる予定という。フィーダリンクで利用できる周波数については、もともと1.3GHz強のバンド幅が確保されており、標準化活動よって、今後さらに追加される予定だという。5Gへの対応については、「端末の普及を見ながら展開していく」(宮川氏)と説明していた。
日照量などの要因から、飛行可能な範囲は北緯、南緯ともに30度までとなっているため、まずは、アフリカや南米、東南アジアといった赤道付近の低緯度地域を対象として、2023年に実用化を目指す。日本や北米などのエリアでのサービスに向けては、北緯、南緯50度まで飛行可能となる「HAWK50」の開発を行っているといい、宮川氏は、「2025年には全ての課題を解決し、日本の上空を飛ばしたい」と説明した。
Alphabet子会社と協業
HAPSモバイルが提携するのは、Alphabetの子会社「Loon」。Loonは、気流予測AIを用いたバルーンタイプのHAPSを開発しており、既に3000万km以上の飛行実績や世界で数十万ユーザーもの接続実績がある。競合同士であるが、宮川氏は、「成層圏の利用は、人類にとって大きな挑戦であり、目指す方向も同じだ」と話し、「(HAPSを)より早く、より広く世界中に広げるため」と提携の理由を説明している。HAPSモバイルは、Loonに1億2500万米ドルを出資することを決定しており、Loon側もHAPSモバイルに同額を出資できる権利を有しているという。
具体的な協業については、両社の機体を相互で活用していく「ホールセール事業」のほか、ビッグデータ活用などによる「機体管理システムの最適化」や、両社のプラットフォーム上への通信提供を可能とする、グローバル展開可能な「地上ゲートウェイの統合」、各種航空機やITU準拠の周波数帯に適用可能な「ぺイロードの共同開発」、各国の規制当局および官公庁に対する「HAPSアライアンスの形成」「HAPS間通信」を検討しているという。
宮川氏は会見の中で、「まだ半数の人類がインターネットに接続できていない」と話し、「インターネットを世界中に広げたい。生まれる場所が異なっても、平等にインターネットに接続できる環境を作りたい」と強調していた。
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