ありふれた元素、わずかな温度差で熱電発電するモジュール:IoT機器向けに、新熱電材料を研究(2/2 ページ)
NEDO、物質・材料研究機構、アイシン精機、茨城大学は2019年8月21日、「汎用元素だけで構成する新熱電材料」を使った熱電発電モジュールの開発に成功した、と発表した。IoT(モノのインターネット)機器の駆動やBLE通信が可能になる発電量を得ることができるといい、「将来、日本国内で1兆個ともいわれるIoT機器の駆動を支える自立電源としての普及と使途範囲の拡充に貢献する」としている。
FAST、モジュールの性能
FASTは、目標通り室温から200℃までの低温熱源を利用した発電を実現。発電性能は現在、5℃の温度差で85μW/cm2であり、高際氏は「プロジェクトの残り時間(2020年5月末まで)に、目標を達成したい。また、高性能化を進めれば、さらに低温度差で、十分な発電も可能になっていくだろう」としている。
また、大気中で昇温しても650℃まで安定と、ビスマス・テルル材やケイ化マグネシウムなどより耐酸化性に優れるほか、モジュールの耐久性確保に必要な機械特性についても、「宇宙利用もされるシリコンゲルマニウムと同程度だ」という。
今回開発に成功した熱電発電モジュールは、アイシン精機の登別事業所(北海道登別市)の量産ラインで製造。1cm角のセラミックス基板に、FASTのチップ14個を搭載している。製造にあたり、ダイシング時にはメッキの剥離やチップの破損もないなど、アイシン精機の小島宏康氏は、「非常に加工性に優れているといえる」と強調していた。
試作機によるデモも実施、低温度差で発電しIoT機器が駆動
研究グループは、実際にこの熱電発電モジュール4つと温度、湿度センサー、BLE通信モジュールを搭載した試作機を使ったデモンストレーションで、その性能を紹介した。
デモでは、お湯の入ったカップを試作機の上に置いたり、人の手で触れたりといった低温度差で内蔵した熱電発電モジュールが発電。センサーが取得した温度や湿度の情報をBLEで送信し、タブレット端末上にリアルタイムで表示させる様子が確認できた。
高際氏は、今後さらなる材料の高性能化を進めるとしつつ、「実用にあたっては、機器によって消費電力も変わってくる。それぞれの機器を駆動できるだけの出力さえ確保できればいいので、モジュールの設計によって対応することもできるだろう」と話していた。実用化については未定であり、今後ニーズを探っていく予定だ。
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