多ピンと小型・薄型・低コストを両立させるFO-WLPの組み立て技術:福田昭のデバイス通信(217) 2019年度版実装技術ロードマップ(28)(2/2 ページ)
パッケージの組み立てプロセス技術を紹介している。今回は、FO-WLP(Fan Out-Wafer Level Package)の組み立て工程を解説する。
FO-WLPの組み立て工程はSiPに向いている
始めは、FO-WLPの中でも最も多く生産されているタイプの組み立てフローを紹介しよう。前回でも説明したようにFO-WLPの組み立て工程では、最初に完成ウエハーを個別のシリコンダイに分割する。それから剥離用テープを表面に貼り付けたガラスウエハー(支持ウエハー)またはガラスパネル(支持パネル)にシリコンダイをフェースダウン(回路面を下にする形態)で搭載する。
ここで重要なのは、支持ウエハーに搭載するシリコンダイは1種類である必要はなく、異なる製造プロセスによる複数のシリコンダイを搭載できることだ。この特徴により、1個のパッケージにシステムを収容するSiP(System in Package)の実現手法としてもFO-WLPは利用されることが少なくない。
組み立てフローに話題を戻そう。シリコンダイを支持ウエハーに搭載した後は、搭載済みのシリコンダイ全体をモールド樹脂で封止する。モールド樹脂の材料には硬化による体積の収縮率が1%以下と低く、熱膨張係数(硬化収縮後)が10ppm/℃前後と小さいことが要求される。それから支持ウエハー(あるいは支持パネル)を剥離する。残されたモールド樹脂封止済みシリコンダイ群でウエハー状のものを「疑似ウエハー」、パネル状のものを「パネル」と呼ぶ。
続いてシリコンダイのフェース(回路面)側に絶縁層を塗布し、銅(Cu)の再配線層を電解めっきによって形成する。なお再配線層の線幅/間隔は20μm/20μm以上である。そしてフラックスを印刷し、はんだボールを搭載する。最後に疑似ウエハーを個別のパッケージに分割する。
ところで、このタイプのFO-WLPはシリコンダイとモールド樹脂の界面(構造図では黄色の円で囲んだ部分)に応力が集中する。この応力は絶縁層と再配線層にクラックを発生させる恐れがある。そこで応力を緩和するため、絶縁層は30%以上と大きく伸びることが求められる。
シリコンダイとモールド樹脂による応力を緩和
さらに、シリコンダイとモールド樹脂の界面における応力集中の問題を積極的に緩和した構造のFO-WLPが考案され、一部では実用化が始まっている。以下に、応力を緩和したFO-WLPの組み立てフローを説明しよう。
まず、完成ウエハーの入出力パッドにCuバンプを搭載し、裏面を研削する。続いて個別のシリコンダイを切り出す。そして剥離用テープを表面に貼り付けたガラスウエハー(支持ウエハー)またはガラスパネル(支持パネル)に、シリコンダイをフェースアップ(回路面を上にする形態)で搭載する。続いてシリコンダイを覆うようにモールド樹脂で封止し、表面(フェース側)を研削してCuバンプを露出させる。
次に、絶縁層と再配線層を形成する。なお、この構造では支持ウエハーがあるので、全体が反りにくい。絶縁層と再配線層を形成してから、支持ウエハーを剥離する。続いてシリコンダイの回路面にフラックスを印刷し、はんだボールを搭載する。シリコンダイの裏面には保護膜(樹脂フィルム)を貼る。それから個別のパッケージに分割する。
(次回に続く)
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