世界初、「完全固体型」色素増感太陽電池を発売へ:カラフル、半透明化も実現(2/2 ページ)
リコーは、「第19回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2020年1月29〜31日/東京ビッグサイト)で、電解液を固体材料のみで構成した完全固体型色素増感太陽電池モジュール「RICOH EH DSSC シリーズ」を公開した。2020年2月下旬から順次販売を開始する予定で、同社によると完全固体型の色素増感太陽電池モジュールを発売するのは「世界初」だ。
リモコンやセンサーなど、搭載製品を展示
今回、リコーが発表したのは52×84mmの「DSSC5284」、28×32mmの「DSSC2832」、17×19mmの「DSSC1719」のサイズが異なる3種類。発売時期はDSSC5284が2020年2月下旬、DSSC2832が同年4月下旬、DSSC1719が同年3月下旬を予定している。DSSC5284については一部顧客向けに先行販売しており、大成とデザインオフィスラインが販売中のバッテリー搭載型デスク「LOOPLINE T1」に採用されている。
ブースではバッテリー搭載型デスク「LOOPLINE T1」上で、展示を行っていた。LOOPLINE T1の引き出し内にはモバイルバッテリーが入っており、DSSC5284からの電力を蓄電していた(クリックで拡大)
最大出力は、室内でやや暗い照明の場合(白色LEDで明るさが200ルクスの設定)でDSSC5284が230μW、DSSC2832が40μW、DSSC2832が11μW。説明担当者は、「室内のリモコンや、連続、または間欠的な測定を行うセンサーなど、用途に応じて適したものを選択できる」としている。ブースでは実際にLOOPLINE T1のほか、DSSC2832を搭載したプロジェクター用リモコン、DSSC2832を用いた環境センサーなどの製品が参考出品されていた。
また、色素の変更によってモジュールの色を変えられるほか、半透明なモジュールも実現できるといい、高いデザイン性をもった製品への展開も狙っている。
リコーはPETを用いることで軽量かつフレキシブルとなるうえ、半屋外でも利用可能な広い照度領域における高変換効率を持つ「フレキシブル環境発電デバイス」についても開発を進めており、屋内/半屋外用ワイヤレスセンサーノードの自立電源向けに展開していく方針という。
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