全固体電池、2035年には2兆1014億円規模へ:富士経済が世界市場を調査
富士経済は、全固体電池の市場調査を行った。市場規模は2020年見込みの34億円に対し、2035年は2兆1014億円と予測した。次世代車(xEV)やエネルギー貯蔵システム(ESS)向けの需要が拡大する。
硫化物系、2030年頃より本格的な普及段階へ
富士経済は2020年12月、全固体電池の市場調査を行い、その結果を発表した。市場規模は2020年見込みの34億円に対し、2035年は2兆1014億円と予測した。次世代車(xEV)やエネルギー貯蔵システム(ESS)向けの需要が拡大する。
今回の調査は、全固体電池4品目の他、非リチウム系二次電池7品目、新型リチウム二次電池8品目、次世代電池材料6品目を対象に実施した。また、応用製品3品目における次世代電池の採用動向や次世代電池の製造プロセスについても分析した。調査期間は2020年7〜10月。
全固体電池市場は、酸化物系と高分子系の市場が立ち上がる。当面はこれらが市場をけん引していくとみられる。将来は硫化物系の市場がxEV向けを中心に拡大。錯体水素化物系も2030年頃には市場が立ち上がると予測した。なお、xEV向け全固体電池の容量ベース需要は、2020年見込みの44MWhに対し、2035年は101600MWhと予測している。
酸化物系は、大型用途に向けた「バルク型(全固体/疑似固体)」と、小型用途向けの「薄膜型/積層型」に分類される。バルク型はxEVに向けて開発が進む。ただ、全固体電池は実用化に向けての技術的ハードルが高く、現時点では全固体電池に比べ性能がやや落ちるものの、疑似固体電池が先行しているという。調査によれば、疑似固体電池は2020年前半にEVへ搭載される予定だ。バルク型全固体電池は2030年代にxEVへ搭載される可能性があると予測した。
薄膜型は、ウェアラブル機器やICカード、IoT関連での採用を見込む。薄型で省スペースといった特長はあるが、製造コストが高く、容量の増加も難しいため、その用途は限定的だという。積層型はMLCCやチップインダクターを手掛ける日本メーカーが積極的に展開している。
高分子系は現状、欧州での需要が大半で、EVやEVバス、ESSなどで用いられている。中国の電池メーカーが量産化に取り組んでいる。容量など性能面での改善が進めば、2030年以降にも需要が本格化すると分析している。
硫化物系は、サンプル出荷が始まった段階である。現状は宇宙向けなどに限定されている。量産技術が確立されれば、将来はxEVに向けた需要が期待される。調査によれば2020年前半にもEVに搭載され、2025年頃から搭載車種が増える見通しだ。2030年頃には本格的な普及段階を迎え、2035年は1兆5775億円規模と予測する。
製造プロセスは、湿式塗工法が有力とみられている。この工法は現行のリチウムイオン二次電池で用いられている技術を応用できるため、製造コストの低減に対する期待が大きい。
錯体水素化物系は、EVへの搭載を狙って電池メーカーが開発を進めており、2025年頃にも商品化される見通しである。耐熱性や高容量密度を必要とする用途から採用が始まると分析している。
なお、金属空気やナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムといった非リチウム系電池の市場についても調査した。2020年はナトリウムイオンを中心に1億円の市場規模を見込むが、3030年以降はESSやxEV向けを中心に需要が立ち上がり、2035年は555億円の市場規模になると予測した。
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