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オハイオ州の新工場がIntelのIDM 2.0戦略を加速一部観測筋からは懸念も(2/2 ページ)

Intelは、200億米ドル以上を投じて米国オハイオ州に半導体製造工場を新たに2棟建設する計画だ。この計画は、同社が集積デバイス製造の幅を広げることや、欧米においてファウンドリー能力の主要な提供者となることを目指した戦略「IDM 2.0」を強調するものだ。

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米国内のサプライチェーン強化に向けて

 Gelsinger氏は、2021年3月にIntelのIDM 2.0戦略を明らかにした。その中で、パンデミックが引き起こしたサプライチェーンの混乱に応えて、半導体製造のリーダーになるという同社のビジョンを詳しく説明した。この戦略は3つの原則に基づいている。すなわち、大規模製造のための内部のファクトリーネットワーク、サードパーティーファウンドリーの生産能力の利用拡大、そして「Intel Foundry Service」である。

 初期のフェーズは、アリゾナ州チャンドラーにある、推定200億米ドルが投じられた2棟の新しい製造工場(Fabs 52およびFab 62)から始まった。Intelは2021年9月、チャンドラーの「Ocotillo」と呼ばれる敷地で2棟の新たな製造工場の建設に着工した。両施設は2024年にフル稼働となる予定である。

 DeWine氏とIntelの重役らは、IDM 2.0のようなイニシアチブを通じて米国内のサプライチェーンを強化することに向けた経済および国家安全面の要件についても強調した。

 TSMCとSamsung Electronicsは、サプライチェーンの混乱と中国との技術競争の高まりに対応するため、米国で新たな製造工場を稼働させることを発表した。いずれもIntelの施設と競合する規模になる見込みだ。TSMCは既に120億米ドルを投じて、アリゾナ州フェニックスで5nmチップ製造工場の建設に着手している。

 中国は現在、世界半導体製造の9%を占めているが、半導体工業会(SIA)によると、アナリストらは同国が約17%以上のシェアを獲得する可能性があると予測している。米国が世界半導体製造に占める割合は現在約12%で、1990年から37%減少している。DeWine氏はWebキャストの中で「米国で半導体を製造することが極めて重要である」と発言した。

IDM 2.0の未来は

 だが、IntelのIDM 2.0は、520億米ドルが投入される法案「CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors)for America Act」が連邦議会で可決されるかどうかに大きく依存している。2022年1月21日(米国時間)にホワイトハウスが主催したイベントにおいて、バイデン大統領とGelsinger氏はいずれも、米国の半導体製造の復活に対する同法案の重要性を強調した。

 Gelsinger氏は「現在、大半の半導体は海外で調達されている。半導体のような基幹技術を輸入だけに頼ることは国としてすべきではない。このような経済安全保障上のリスクに対処する唯一の方法は、米国国内での半導体製造能力を高めることである」と述べた。

 また両氏は、法案「U.S. Innovation and Competition Act」の可決も強く求めた。この法案には、今後5年にわたり半導体研究開発(R&D)に1100億米ドルを投じることが含まれている。バイデン大統領は「米国はかつて半導体研究開発において世界一の座にあったが、現在では第9位に甘んじている。30年前に第8位だった中国が現在では第2位となっている」と述べた。

 一部の観測筋は、米国に高度な製造工場を建設することに伴う複雑さや課題を踏まえて、Intelが過剰生産能力や収益性の消失に向かっていると懸念している。

 Wedbush SecuritiesのMatt Bryson氏は「半導体サイクルは避けられない。だが、大半のことはIntelの遂行具合によって決まるだろう。新たな製造体制を構築しても生産能力や設計の面で苦戦すれば、シェアを失い続けたり、製造工場をフルに活用できなくなったりする可能性がある」と述べた。

 さらにBryson氏は、Intelの戦略の成功は、「半導体需要がどれくらい伸びるのか」にもかかっていると付け加えた。同氏は、「製造面でのサポートがかなり必要になると思われる多数の新しいアプリケーションが存在する。それらの中には、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)のように既に急速な成長がみられるものもある。一方で、メタバースや自動運転車など、けん引力がまだ未知数の領域もある」と述べた。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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