米下院、CHIPS法への資金提供とR&D強化を含む法案提出:America COMPETES Act of 2022(2/2 ページ)
米国の半導体製造の復活と技術サプライチェーンの強化を目指す取り組みは2022年1月24日(米国時間)の週、米国製半導体の「生産の急増」に向けた資金提供と幅広い技術の研究開発への投資を盛り込んだキャッチオール法案が提出されたことで、進展を見せた。
投資先、「研究室 VS 製造工場」の議論に
上院は2021年の夏に、CHIPS法への520億米ドルの資金を含む別の法案を承認した。2021年6月に可決された米国技術革新競争法案(U.S. Innovate and Competition Act)には2500億米ドルの研究開発資金が含まれているが、その多くは米国立科学財団(National Science Foundation)およびエネルギー省の研究所から、議員らが所属する各州の既存のプログラムに移管された。その結果、基礎研究への資金提供額は290億米ドルに減少した。
下院の法案は、技術開発から基礎研究に重点を移すことを目指しており、同法案の支持者は「基礎研究こそが、将来の技術革新を促進する」と主張している。
下院の法案が可決される時期はまだ不明だが、CHIPS法案に関する両院会議では「研究室 VS 製造工場」の構図の議論がなされる可能性が高い。下院の科学および宇宙、技術委員会の委員長を務めるテキサス民主党議員のEddie Bernice Johnson氏は、半導体メーカーに対する連邦政府の支援よりも技術革新と競争力を重視してきた。
下院法案の主唱者であるJohnson氏は同法案について、「21世紀に成功するために最も必要なことについて、科学界からの厳しい意見を参考にして一から作成した」と述べている。
Johnson氏は、「科学とイノベーションへのこうした変革的な投資は、研究インフラの活性化や、全ての人に向けたSTEM機会の創出、クリーンエネルギーソリューションの構築、気候危機への対処、国家安全保障の強化、米国の半導体製造能力の強化に役立つ」と付け加えた。同氏は、優先順位の高いものから順にリストアップしていると思われる。
とはいえ、下院法案の最初の条項は、「Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors」の頭字語であるCHIPS法に十分な資金を提供するとしている。
「America COMPETES Act(アメリカ競争法)of 2022」の全文はここから参照できる。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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