低電流密度かつ無磁場の磁化スイッチングを実現:生成される全方向のスピン流を活用
東北大学は韓国科学技術院(KAIST)と協力し、垂直磁化強磁性体に対して外部磁場を必要とせず、少ない電力消費で磁化反転を可能にする手法を確立した。不揮発性磁気メモリの高密度化と省電力化を可能にする技術だという。
不揮発性磁気メモリの高密度化と省電力化を可能に
東北大学は2022年4月、韓国科学技術院(KAIST)と協力し、垂直磁化強磁性体に対して外部磁場を必要とせず、少ない電力消費で磁化反転を可能にする手法を確立したと発表した。不揮発性磁気メモリの高密度化と省電力化を可能にする技術だという。
高密度記録が期待できる垂直磁化強磁性体/非磁性体構造では、スピン流を生み出す起源としてスピンホール効果が用いられてきた。ところが、さまざまな方向のスピン流を生成し磁化反転させるためには、外部磁場を印加する必要があった。しかも、不揮発性磁気メモリの電力消費を抑えるには、低電流密度での磁化スイッチングが求められているという。
研究グループは今回、「面内磁化した下部強磁性体」「非磁性体」「垂直磁化した上部強磁性体」という三層構造の素子を試作。面内磁場角度を変えて上部強磁性体と下部強磁性体の磁化角度を変化させたところ、全ての方向に生成されるスピン流を同時に活用することが可能となり、低電流密度で無磁場の磁化スイッチングを実現した。
特に、下部強磁性体に用いたエピタキシャルコバルトは、面内結晶磁気異方性が大きいため、上部強磁性体の磁化との相対角度を自在に制御し、さまざまな方向に生成されるスピン流を磁化反転に活用できるという。また、磁化方向に依存するスピン流成分を明確に分離して同定することが可能となった。
新たに開発した手法を、スパッタリング法で作製した多結晶CoFeB/Ti/CoFeB構造に適用したところ、無磁場磁化スイッチングの効率を向上させられることが分かった。しかも、スピン流を用いた既存の磁化反転方法に比べ、電流密度を30%も抑えることができたという。
今回の研究は、東北大学大学院工学研究科高等研究機構新領域創成部(FRiD)の好田誠教授や新田淳作名誉教授らと、韓国科学技術院(KAIST)のJeonchun Ryu研究員(東北大学大学院工学研究科博士課程修了/現Samsung Advanced Institute of Technology)、Byong-Guk Park教授、Kyung-Jin Lee教授らが協力して行った成果である。
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