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ハイブリッド型トランジスタ、GaNとSiCを一体化産総研が作製、動作実証にも成功

産業技術総合研究所(産総研)は、GaNを用いたトランジスタとSiCを用いたPNダイオードをモノリシックに集積したハイブリッド型トランジスタを作製し、動作実証に成功したと発表した。GaNとSiCの特長である、低オン抵抗と非破壊降伏の両立を可能とした。

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GaNトランジスタにおける耐圧破壊の課題を解決

 産業技術総合研究所(産総研)先進パワーエレクトロニクス研究センターパワーデバイスチームの中島昭主任研究員と原田信介研究チーム長は2021年12月、GaN(窒化ガリウム)を用いたトランジスタとSiC(炭化ケイ素)を用いたPNダイオードをモノリシックに集積したハイブリッド型トランジスタを作製し、動作実証に成功したと発表した。GaNとSiCの特長である、低オン抵抗と非破壊降伏の両立を可能とした。

 電力変換器に用いられるパワートランジスタは、高い性能と効率のさらなる改善、小型化、高い信頼性などを実現するため、ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスの開発が進む。ただ、GaNやSiCはそれぞれ特性が異なるため、さまざまな用途向けで、十分な信頼性を確保することは、これまで難しかったという。

 研究チームは今回、高速スイッチングを特長とするGaNと、高電力で信頼性に優れたSiCの特長を兼ね備えるハイブリッド型トランジスタの開発に取り組んだ。このため、産総研や東京大学などが協力して運営するオープンなイノベーション拠点「TIA」において、SiCパワーデバイスの100mm試作ラインを拡張し、SiCとGaNの共用試作ラインを立ち上げた。


直径100mmウエハー上に形成されたハイブリッド型トランジスタとその等価回路[クリックで拡大] 出所:産総研

トランジスタの等価回路。Si型(左)、GaN型(中央)、ハイブリッド型(右) 出所:産総研

 実験では、コンセプト実証に必要な小型デバイス(定格電流は約20mA)を試作した。製造プロセスはこうだ。まず、SiC基板上に「p型SiCエピタキシャル膜」の結晶を成長させた。次に、イオン注入によって、「p+型SiC」と「n型SiC」によるダイオード構造を形成。これらの上部に、「GaNエピタキシャル膜」と「AlGaNバリア膜」および、「GaNキャップ膜」をエピタキシャルに成長させ、GaNトランジスタ構造を作製することで、SiCダイオードとGaNトランジスタのモノリシック化を実現した。さらに、p+型SiC上のアノード電極とAlGaNバリア層上のソース電極を接続し、n型SiC上のカソード電極とAlGaNバリア層上のドレイン電極を接続して、3端子のハイブリッド型トランジスタとした。


開発したハイブリッド型トランジスタの構造 出所:産総研

 試作したハイブリッド型トランジスタについて、「オフ状態」の降伏特性を評価した。この結果、SiC側の耐圧をGaNに比べわずかに低く設計することで、SiCダイオードにおける非破壊のアバランシェ降伏が得られたという。降伏電圧は約1.2kVである。複数回の掃引に対しても、安定した可逆的降伏動作を確認した。「オン状態」の通電特性も調べた。これにより、300mA/mmという高いドレイン電流と、47Ωmmという低オン抵抗を確認した。


SiトランジスタとGaNトランジスタにおける降伏特性の模式図 出所:産総研

オフ状態における「降伏特性」(左)と「オン状態」(右)におけるオン抵抗特性の評価結果 出所:産総研

 これらの結果から、開発したハイブリッド型トランジスタは、低オン抵抗という特長と非破壊の降伏動作を兼ね備えていることを実証した。SiCは熱伝導率がSiの3倍も高く、放熱特性に優れていることも特長の1つとなる。

 研究チームは今後、定格電流が10A以上という大面積デバイスの動作実証にも取り組む予定で、早期実用化を目指している。

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