車載向け28nm CMOS 76〜81GHzレーダーMMIC、Infineon:electronica 2022(2/2 ページ)
Infineon Technologies(以下、Infineon)はドイツ・ミュンヘンで開催された欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2022」(2022年11月15〜18日)において、それぞれ4つの送信/受信チャンネルを備えた28nm CMOS技術採用の車載向け76G〜81GHzレーダーMMIC「RASIC CTRX8181」を展示した。
初の28nm CMOS技術採用76G〜81GHzレーダーMMIC
CTRX8181は、Infineonが2022年11月3日(ドイツ時間)に発表した、76G〜81GHzレーダーMMICシリーズ初の製品だ。同社は77GHzレーダーに関しては、2009年にSiGeをベースにした77GHz車載レーダーチップを発表するなど15年以上の歴史を持つ「トランシーバー集積送信機+受信機のワンチップ化)のパイオニア」(同社)だという。なお、CTRX8181は同社が初めて28nm CMOS技術を採用した製品だ。
CTRX8181の周波数範囲は76G〜81GHzで、帯域幅は最大4GHz。同社によると送信(TX)/受信(RX)チャンネルをそれぞれ4つ備えた初の製品で、既存品(3TX/4TX)と比べ、角度分解能を33%向上している。また、S/N比も向上し、標準的な検知距離を最大25%拡大。同社は、これらの特徴が、「コーナーレーダーから高解像度レーダーまで、あらゆるアプリケーションに対応するレーダーモジュールの開発に貢献する」としている。
デジタルPLL(位相同期ループ)内蔵による性能
Lucia氏が特に独自の強みとして挙げるのが、「市場で初めて」(同社)デジタルPLL(位相同期ループ)を内蔵した点だ。これによって、高速なランプが可能となり距離分解能の向上、「現在のベストソリューションと比較して4倍に向上した」という高速なフライバック時間(1マイクロ秒)も実現している。この機能によって、同じような速度の物体を分離するのに必要な、より高精度な速度情報の取得が実現。また、位相ノイズを犠牲にすることなく、完全に自由にランプを設定できるため、高速道路(高速)から駐車場(高解像度)に至るまで、状況に応じたオンザフライの適応が可能となった。なお、アナログPLLの製品と比べ、低消費電力化も実現したという。
将来的には、より長距離(200m以上)にある小さな対象を検出することが要求されるとし、カスケード接続に対応した「CTRX8191」もラインアップするとした。Lucia氏は、「自動車メーカーはそれぞれ違うものを求めており、柔軟性と拡張性が重要となる。市場がわれわれに求めているのは複数のアプリケーションへの対応だ」と説明。今回発表した28nm CMOS技術採用のレーダーMMICシリーズのバリエーションおよびレーダー専用MCUの「AURIX」によってあらゆる対応を可能にするとした。
CTRX8181は既にサンプル提供中。「遅くとも2025年の量産開始を目指す」としている。
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