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感染症の解析に貢献するPCR検査と遺伝子検査、迅速検査(前編)福田昭のデバイス通信(387) 2022年度版実装技術ロードマップ(11)(2/2 ページ)

今回と次回は、JEITAの「2022年度版 実装ロードマップ」から、「感染症とPCR検査、遺伝子検査、迅速検査」(2.3.2.3)の概要をご紹介する。

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PCR法によるDNA増幅の原理

 COVID-19の流行によって一般に広く知られるようになった遺伝子検査技術に「PCR検査」がある。PCRとは「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」の略語で、酵素であるポリメラーゼを使ってDNA(デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid))の特定領域を連続して増やす反応を指す。「PCR増幅」とも呼ぶ。

 PCR増幅の手順を以下に示そう。前提として、温度が化学反応の種類を決めることに留意されたい。まず、DNAサンプル(通常は2本鎖)を95℃前後に加熱して1本鎖のDNA(鋳型DNA)に分離する(この工程を「熱変性(denaturation)」とも呼ぶ)。

 次に温度を55℃〜60℃に下げて1本鎖のDNA(鋳型DNA)にプライマー(増幅したい核酸に特徴的な塩基配列とその相補配列を両端に備えた短い1本鎖のDNA)を結合させる(この工程を「アニーリング(annealing)」とも呼ぶ)。

 それから温度を72℃前後に上げ、酵素である耐熱性DNAポリメラーゼによるDNA合成反応を起こす。DNAポリメラーゼは反応溶液中から適切なヌクレオチド(dTNP)を選択してプライマーに付加する操作を繰り返す。このようにしてプライマーを伸長することで、DNAを複製する(この工程を「伸長(extention)」とも呼ぶ)。伸長は5‘(ダッシュ)端子から3’端子の方向に進む。

 これで1サイクルのポリメラーゼ連鎖反応が完了する。2本鎖のDNAからは2つの2本鎖DNAが、1本鎖のDNAからは2本鎖のDNAが得られる。つまり、DNAの数が2倍になる。このサイクルを繰り返すことで、サイクル数をNとすると2のN乗にDNAを増やせる(DNA増幅)。

 PCR法により、測定限界以下の微量なDNAサンプルを増やし、遺伝子の特定が可能な量のDNAを得る。新型コロナウイルスの感染検査でPCR検査が高い感度を有するとされるのは、このDNA増幅工程があることによる。

PCRによるDNA増幅方法(左)と増幅したDNAの検出方法(右上)、サンプルが含むDNA濃度の換算方法(右下)
PCRによるDNA増幅方法(左)と増幅したDNAの検出方法(右上)、サンプルが含むDNA濃度の換算方法(右下)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

(後編に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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