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名古屋大、アダマンタン縮環芳香族分子を合成市販化合物から二段階で簡便に

名古屋大学は、ダイヤモンド構造を有するアダマンタン分子を芳香族分子に密結合させた機能性分子「アダマンタン縮環芳香族分子」の合成に成功した。「ダイヤモンド−グラフェンハイブリッド物質」の精密合成につながる成果とみている。

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ダイヤモンド−グラフェンハイブリッド物質の創製にもつながる

 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の八木亜樹子特任准教授と伊丹健一郎教授、同大学院理学研究科の吉原空駆博士前期課程学生(研究当時)らによる研究グループは2023年5月、ダイヤモンド構造を有するアダマンタン分子を芳香族分子に密結合させた機能性分子「アダマンタン縮環芳香族分子」の合成に成功したと発表した。「ダイヤモンド−グラフェンハイブリッド物質」の精密合成につながる成果とみている。

 アダマンタン(C10H16)は、かご状の飽和炭化水素で、ダイヤモンド構造と同じ炭素骨格を有することから「ダイヤモンドイド」とも呼ばれている。「ひずみのない構造」「融点が270℃と高い」「他の炭化水素とは異なる反応性」「分子間で比較的強いロンドン分散力が働く」といった特長がある。ただ、アダマンタン骨格を他の分子骨格に密結合(=縮環)させる手法は、これまで開発されていなかったという。

 そこで研究グループは、芳香族分子にアダマンタン骨格を密結合させる手法を開発した。この手法を用いると、市販されている化合物から二段階で簡便に、アダマンタン縮環芳香族分子を合成できるという。しかも、6員環構造を介して密結合した分子だけでなく、5員環構造を介して密結合した分子や、アダマンタン骨格が2つ密結合した分子も合成できることが分かった。

 研究グループは、科学計算により反応経路を検証した。まず、メタル化された芳香族分子「4-プロトアダマンタノン」に対する付加反応で「第三級アルコール」が合成された。この第三級アルコールでは酸による脱水、カルボカチオンの転位と、分子内でフリーデルクラフツ反応型の反応が進行し、アダマンタン縮環芳香族分子が生成されることを確認した。開発した手法を用い、30種類以上のアダマンタン縮環芳香族分子を合成することに成功した。

アダマンタン縮環芳香族分子の合成法と、今回合成に成功したアダマンタン縮環芳香族分子の一部
アダマンタン縮環芳香族分子の合成法と、今回合成に成功したアダマンタン縮環芳香族分子の一部[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 研究グループは、合成したアダマンタン縮環芳香族分子の性質を調べた。この結果、単体の芳香族分子に比べて、「紫外可視吸収スペクトル」と「蛍光スペクトル」が長波長側に観測された。1つのアダマンタンが密結合することで、芳香族分子の溶解性が飛躍的に向上することが分かった。

 さらに、アダマンタン縮環芳香族分子を化学酸化することで、安定したカルボカチオンが得られることを明らかにした。多くのカルボカチオンは室温環境の空気中では不安定となり分解するという。これに対し、アダマンタン縮環芳香族分子から得られるカルボカチオンは、室温環境の空気中や溶液状態であっても、分解することなく安定していることが分かった。アダマンタンの炭素−炭素結合とカルボカチオン中心において、超共役が起きたことが安定性につながったとみている。

アダマンタン縮環芳香族分子の性質
アダマンタン縮環芳香族分子の性質[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

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