ゼロカーボンの実現に不可欠な自動車の電動化技術:福田昭のデバイス通信(409) 2022年度版実装技術ロードマップ(33)(2/2 ページ)
今回は第2章第5節の第3項(2.5.3)「電動化技術」の概要を紹介する。第3項は、6つのテーマで構成されている。
電動車の種類と仕組み
最近まで自動車の課題と言えば、「安全」と「環境」だった。「安全」は先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Assistant Systems)」の継続的な改良によってかなりの水準にまで達した。このため現在では「環境」の比重が増している。具体的には地球温暖化ガス(温室効果ガス)の排出抑制(ゼロカーボンの達成)であり、排出抑制を実現する代表的な要素技術が「電動化技術」である。
とはいうものの、単純に排気ガスをゼロにすれば、ゼロカーボン(カーボンニュートラル)を実現できるとは限らない。部材や製造、廃棄などの環境負荷まで含めた、トータルでの評価(ライフサイクル評価)が必要となる。もちろんそれでも、駆動系を内燃機関から電気モーターに変更することが、温室効果ガスの削減に大きく寄与することに変わりはない。
駆動系を電気に変更した電動車(電動自動車)には、いくつかの方式が存在する。一般的に「電気自動車」と呼ばれる電動車とは、バッテリー(蓄電池)を動力源とし、モーターによって駆動する「BEV(Battery Electric Vehicle)」を指す。
「ハイブリッド自動車(ハイブリッド車)」(HEV:Hybrid Electric Vehicle)は内燃機関(ガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジン)とモーターの両方を搭載しており、内燃機関と発電機によってバッテリーを充電し、モーターによって駆動する。あるいはモーター駆動と内燃機関による駆動を組み合わせて走行する。動力源としてはバッテリーのほか、燃料タンク(ガソリンあるいは軽油)を備える。
「プラグインハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド車)」(PHEV:Plug in Hybrid Electric Vehicle)は、充電方式を2通り備えたハイブリッド車である。ハイブリッド車と同様の内燃機関と発電機による充電に加え、外部の電源(充電スタンド)を通じてもバッテリーを充電できる。
さらに、燃料電池を動力源とする「燃料電池自動車(燃料電池車)」(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)がある。燃料電池は水素(燃料)と酸素を反応させて電力を発生するタイプのバッテリーであり、一般的な電気自動車(BEV)に比べると1回充電当たりの走行距離が長いという特徴を有する。
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