検索
連載

航空機の温室効果ガス削減と電動化福田昭のデバイス通信(416) 2022年度版実装技術ロードマップ(40)(2/2 ページ)

今回は「電動化技術」の第6パート「2.5.3.6 航空機と空飛ぶクルマ」の内容を紹介する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

2050年のネットゼロが航空輸送業界の目標

 航空輸送業界では既に、温室効果ガスを削減するための目標を設定済みである。国際民間航空機関(ICAO)は、2020年以降は国際航空輸送における温室効果ガスの排出を増やさない、という目標を定めている。また国際航空運送協会(IATA)は、温室効果ガスの排出を2050年には「ネットゼロ」にすることを目標としている。

 これらの目標達成は容易ではない。運航方式の改善、機体の軽量化、エンジンの効率向上、電動化、水素燃焼技術の導入、バイオ燃料の導入といった技術開発が必須だとされている。

エアバスが「ゼロエミッション航空機」を構想

 そのような中、航空旅客機メーカー大手のエアバスは2020年9月に「ゼロエミッション航空旅客機」の構想を発表した。2035年の実用化を目指す。「ターボファン」モデル、「ターボプロップ」モデル、「ブレンデッド・ウィング・ボディ」モデルと呼ぶ3種類のコンセプトモデル(「ZEROe」)があり、いずれも液体水素を燃料とするガスタービンエンジンと水素燃料電池のハイブリッド推進システムを採用している。2020年代後半にコンセプトモデルの試作機を完成させるとする。

エアバスが公表した「ゼロエミッション航空機」の構想
エアバスが公表した「ゼロエミッション航空機」の構想[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

 「ターボファン」モデルは、2つのハイブリッド水素ガスタービン方式ターボファンエンジンを備える。客席数は120席〜200席、航続距離が2000海里(約3700km)であり、中距離中型旅客機に相当する。巡航速度は時速870kmである。液体水素燃料タンクは機体後部にある圧力隔壁のさらに後ろにレイアウトする。

 「ターボプロップ」モデルは、2つのハイブリッド水素ガスタービン方式ターボプロップエンジンを備える。客席数は100席以下、航続距離は1000海里(約1850km)であり、近距離小型旅客機に相当する。巡航速度は時速612kmである。液体水素燃料タンクは「ターボファン」モデルと同様に圧力隔壁の後方にレイアウトした。

 固定翼と胴体を一体化させた「ブレンデッド・ウィング・ボディ」モデルは、2つの水素ターボファンエンジンを備える。客席数は最大200席、航続距離は2000海里(約3700km)、巡航速度は時速828kmである。液体水素燃料タンクは固定翼の下に配置する。また胴体幅が広いという独特の形状を活かした内部レイアウトを可能とする。

⇒(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る