低抵抗の樹脂電極MLCCを従来比2倍に大容量化、TDK:独自開発の電極構造
TDKは、樹脂電極品ながら端子抵抗を通常電極品と同等に抑えたMLCC「CNシリーズ」のラインアップを拡充した。3216サイズで静電容量22μFと、3225サイズで47μFの2種類で、既存品の約2倍の静電容量を実現している。
TDKは2023年9月12日、樹脂電極品ながら端子抵抗を通常電極品と同等に抑えた積層セラミックコンデンサー(MLCC)「CNシリーズ」のラインアップを拡充した。3216サイズ(3.2mm×1.6mm×1.6mm)で静電容量22μF、3225サイズ(3.2mm×2.5mm×2.5mm)で4μFの2種類で、従来比2倍の大容量化を実現した。
一般グレード品と車載グレード品をそろえ、車載用電子制御ユニット(ECU)および、産業用ロボットなどの電源ラインの平滑/デカップリング用途での使用を想定する。車載グレード品は車載規格AEC-Q200に準拠している。
1個当たりのサンプル価格は3216サイズが50円、3225サイズが100円(いずれも税別)。2023年9月から量産を開始していて、当初は月産500万個を予定する。
TDK独自の電極構造を採用
通常のMLCCの電極は銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)の3層構造になっている。ただ、高電圧の電源ラインではショートの発生を抑制することが重要であるため、銅の上に導電性樹脂を組み込んだ樹脂電極タイプのMLCCが有効となる。樹脂電極タイプのMLCCでは、導電性樹脂が基板曲げ応力を緩和し素体クラックの発生とそれによるショートを抑制し高い信頼性を実現する。
一方、樹脂層は高抵抗であるため、樹脂電極品は通常電極品に比べて端子電極の抵抗がわずかに高くなる。TDKが2021年9月に製品化したCNシリーズは、樹脂層を端子の全面に組み込まず基板実装面側のみに塗布することで、基板曲げ応力による影響を緩和しつつも抵抗値の上昇を抑えた新タイプの樹脂電極品だ。CNシリーズでは電流が導電性樹脂層を通過しないため、端子抵抗を抑えることができる。
TDKが、たわみ量10mmの条件で基板曲げ試験を実施した結果、通常電極品では素体クラックが入った一方で、CNシリーズは、従来の樹脂電極品と同様に素体クラックが確認されなかったという。TDKは「基板曲げは一般のMLCCでは1mm、車載用途でも2mm耐えられれば十分だとされている。基板曲げ10mmという非常に厳しい試験でもCNシリーズでは素体クラックが確認されず、端子の全面を樹脂で覆った従来品と同等の性能を確認した」と説明している。
また、従来の樹脂電極品の課題であったインピーダンスとESR(等価直列抵抗)についても、CNシリーズは通常電極品と同等の結果を確認しているという。
今回新たに開発したのは、3216サイズで静電容量22μF、3225サイズで47μFのもの。材料の改良や設計の見直し、工法の精度向上によって、いずれも従来品と比較して約2倍の静電容量を実現。部品数と実装面積の削減に貢献するとしている。
TDKの担当者は、「もともと通常電極タイプのMLCCを使っていて、メカニカル応力への対策をしたいが抵抗の大きさがネックだったというケースで、CNシリーズへの置換が進むことを期待している」とした。
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