MIPSが新CEOの下で戦略を刷新 RISC-Vに軸足を移す:登場から40年(2/2 ページ)
MIPSアーキテクチャが市場に投入されてから、ことしでちょうど40年になる。その間、さまざまな浮き沈みを経験したMIPだが、2023年に就任した新CEOの下、新しい戦略を展開しようとしている。
RISC-Vに軸足を移す
Wasson氏はEE Timesのインタビューの中で、RISC-Vへの方向転換や、同社の新しい戦略の内容の他、MIPSがどのような方法で設計者たちに“支配権を返す”のかについても説明した。
RISC-Vへの方向転換に関しては、「RISC-Vは、MIPSコアの価値を高める上で基礎となるものであり、汎用RISC-V製品にしようとしているわけではない。われわれは、MIPSの最盛期を支えた全ての要素を、完全に同じ状態で維持している。方向転換していく上で、まさに基礎となるものだ。汎用的なRISC-Vプロバイダーという位置付けとは切り離そうとしている」と語った。
同氏は、MIPSコアのバリュープロポジション(価値ある提案)を維持することの重要性を強調すべく、長期にわたってMIPSを使用している企業が数多く存在するという点を挙げ、「例えば、Mobileyeは長年にわたりMIPSを使用している。実際に、世界のADAS(先進運転支援システム)全体の70%が、MIPSで動作している」と述べている。
データ移動とハード仮想化に集中投資
Wasson氏は、MIPSが特にデータ移動に強い理由や、マルチスレッディングのような同社の主要技術の優位性がいかに重要であるかを説明した。「計算密度を高めながら低レイテンシでデータ移動を実現するというコンセプトについては、非マルチスレッドの手法ではなく、マルチスレッド手法の方がうまく対応することができる。現在量産されているマルチスレッドプロセッサは、唯一x86だけだ。Armもそれに追い付きつつある」と述べる。
「われわれが特にこだわっているのが、クラウドにおけるデータ移動だ。当社にとっては大規模な投資対象となっている」(Wasson氏)
もう一つのメリットとして挙げられるのが、ハードウェア仮想化だ。
「現在、HPC(高性能コンピューティング)の話題で持ちきりだが、その中でMIPSにはどのような優位性があるだろうか。MIPSは、ハードウェア仮想化が可能である。つまり、同じシリコン上で複数のOSを共存させることができるのだ。このため、高性能化や高効率化、低オーバーヘッドを実現することができる。これが、われわれが守ってきたMIPSアーキテクチャ特有の特性だ。こうしたハードウェア仮想化により、ハイエンドのHPCだけでなく、自動車などの分野でも活動できるようになる」(Wasson氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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