抵抗器の電蝕対策:福田昭のデバイス通信(456) 2022年度版実装技術ロードマップ(80)(2/2 ページ)
「4.1.3.3 信頼性」の概要を説明する。前回の「振動対策」と「クラック対策」に続き、今回は「電蝕対策」の内容を解説する。
薄膜抵抗の抵抗皮膜が水分に溶け出す
金属薄膜抵抗器や炭素被膜抵抗器などでは、水分の侵入によって電蝕が発生することがある。水分によって電位が高い側から抵抗被膜がイオン化して溶け出す。水分が抵抗皮膜を侵すとイオンの溶出によって高電位側の抵抗皮膜が消失する。そして断線不良となる。
ニッケルクロム(NiCr)薄膜抵抗器ではNiとCrがイオン化して溶出する。炭素被膜抵抗器では水分の電気分解によって発生した酸素が炭素(C)と反応して二酸化炭素のガスとなり、飛散する。
部品側の対策としては、保護膜の密着強度を上げて抵抗器内部に水分が入らないようにする、保護膜のハロゲン(主に塩素)含有量を下げる、などが実施されている。保護膜のエポキシ樹脂はハロゲン(主に塩素)を含んでおり、ハロゲンが電解質となって電蝕を促す。このため低ハロゲン化が重要な対策となっている。
実装側の対策としては、コーティング、ポッティング、モールド、ハーメチックシールなどがある。はんだ付けのフラックスにはノンハロゲン品を使う、あるいははんだ付け後の洗浄によってフラックスの残渣を取り除くことも電蝕を防ぐことになる。
硫黄と銀電極が反応して化合物を形成
硫黄を含む雰囲気では、厚膜チップ抵抗器の銀(Ag)電極に硫黄(S)あるいは硫化水素(H2S)が吸着し、硫化銀(AgS)を形成する。腐食部分であるAgSが成長すると電極を構成する銀(Ag)が消失し、断線不良に至る。
厚膜チップ抵抗器に発生した硫化銀の観察像(左)と硫化銀の発生メカニズム(右)、硫化現象が発生しやすい場所(右下)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
部品側の対策としては、電極を硫化しにくい材料に変更する、硫黄ガスの侵入を遅らせる構造を作る、などがある。実装側の対策としてはアクリル系材料によるコーティングがある。シリコン系のコーティングやポッティングは硫黄分を取り込みやすいので、逆に硫化を促しかねない。
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