連載
半導体の前工程プロセスで製造する「シリコンキャパシタ」:福田昭のデバイス通信(460) 2022年度版実装技術ロードマップ(84)(2/2 ページ)
「4.2 基板内蔵部品」のうち、「4.2.2 シリコンキャパシタ」の概要を紹介する。
シリコン基板にコンデンサ、抵抗、インダクタを作り込む
シリコンキャパシタは、ほかの受動部品を作り込むことで回路基板を形成できるという特徴を備える。複数のキャパシタによるアレイ素子、キャパシタ(コンデンサ)と抵抗を一体化した複合素子、シリコン基板に抵抗とインダクタ、キャパシタを集積化したIPD(Integrated Passive Device)などの事例がある。
シリコンキャパシタの多機能化事例。左はキャパシタアレイ素子とRC複合素子。右は抵抗とインダクタ、キャパシタを搭載したIPD(Integrated Passive Device)基板に応用してプリント基板の回路モジュールを小型化した例[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
半導体レーザーのパルス駆動回路にシリコンキャパシタを適用
半導体レーザー(LD:Laser Diode)のパルス駆動回路には、積層セラミックコンデンサ(MLCC)が使われる。レーザーの出力パルスは出力波形が矩形に近く、時間幅が短く、ピーク出力が高いことが望ましい。しかしコンデンサや配線などの寄生素子により、実際には出力波形は丸みを帯び、時間幅は長く、ピーク出力が低くなってしまう。
そこでMLCCの代わりにシリコンキャパシタを搭載することでパルス駆動回路の物理的な寸法を縮め、寄生素子を減らす。またパルス駆動回路の基板にシリコンのIPDモジュールを導入すれば、出力波形の品質をさらに高められる。
半導体レーザー(LD)のパルス駆動回路に載せるコンデンサを積層セラミックコンデンサ(MLCC)(上図)からシリコンキャパシタ(下図)に変更した例。駆動回路全体を小型化できる[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「30年に3000億円規模」のシリコンキャパシター市場、後発ロームが見いだす勝機とは
ロームは2023年9月、独自技術を採用したシリコンキャパシターを発表し、同市場に参入した。後発として市場に挑むロームに戦略を聞いた。 - 電子部品を基板に内蔵させて実装面積を減らす
今回からは「4.2 基板内蔵部品」の概要を解説する。 - 3端子貫通型フィルタの接続方法と実装レイアウト
今回は「(2)3端子貫通型フィルタの接続と実装のポイント」の概要を説明する。3端子貫通型フィルタを電源ラインに接続する2つの方法と、それぞれの用途を解説する。 - チップ抵抗器の小型化が過度な温度上昇を招く(前編)
今回から、第4章第1節第3項「部品実装・設計時の注意点」の概要を説明していく。この項は、「熱設計」「電気性能」などの4つのパートで構成される。 - 表面実装型電子部品(SMD部品)の開発動向(後編)
後編となる今回は、「セラミックコンデンサの高容量化・低ESR化、薄型化」や「チップ抵抗器の高電力化」について解説する。 - プロセッサやメモリなどの進化を支えるパッケージ基板
今回は第3章第4節第8項(3.4.8)「パッケージ基板」の概要を説明する。パッケージ基板の変遷と、パッケージ基板に対する要求仕様のロードマップを解説する。