連載
マイクロOLEDドライバーICまで内製 Appleチップだらけの「Vision Pro」:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(83)(4/4 ページ)
Appleが2024年に発売した「Vision Pro」を分解した。Appleは、自社製品に使う半導体の内製化を進めていて、その範囲はディスプレイドライバーICにまで及んでいることが明らかになった。本稿の最後には、同年5月に発売された「M4」プロセッサ搭載「iPad Pro」の分解の結果も掲載している。
M4搭載の「iPad Pro」を分解
図8は2024年5月15日にAppleから発売された、M4プロセッサ搭載のiPad Proの様子である。内部の構造は前世代とほぼ同じだが、中央に配置される基板が大きく変わっている。中央にはM4プロセッサ。プロセッサ部は金属LIDで覆われており、プロセッサ真横にはRAMが接続されている。この構造は2018年の「A12X」から採用され、M1、M2、M3、最新のM4に引き継がれている。
表1は最新のiPad Proに採用されるM4を含む、M1、M2、M3、M4のチップ開封の様子である。2020年に発売されたM1と2022年のM2は、TSMCの5nm世代のプロセスで製造されている。M3、M4はTSMC 3nm製造である。くしくもM2とM3は、ほぼ同じ面積だ。Appleから発表されるシリコン上に搭載される総トランジスタ数が1.25倍。集積密度が5nmから3nmになることで25%ほどアップされていることが、数字から明らかになったわけだ。M4は今後、M1、M2、M3と同じくCPUやGPUコア数をスケーラブルに増やしたM4 Pro、M4 Maxに進化していくものと思われる。今秋には次世代iPhoneや第10世代のApple Watchが発売される。Appleの新たなプロセッサをまた報告したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「S9」のベースは「A16 Bionic」!? Appleの自在過ぎるスケーラブル戦略
Appleのプロセッサ開発力は、スピードを含め確実に上がっている。さらにAppleは、コア数を自由自在に増減し、ローエンドからスーパーハイエンドまでのプロセッサファミリーをそろえる「スケーラブル戦略」を加速している。発売されたばかりの「Apple Watch Series 9」を分解すると、それがよく分かる。 - それでもスマホの技術進化は続いている、「iPhone 15 Pro Max」「Mate 60 Pro」を分解
今回は、2023年夏に発売された話題のスマートフォン、Apple「iPhone 15 Pro Max」とHuawei「Mate 60 Pro」の分解結果を報告する。 - Apple M2 Ultraと「たまごっち ユニ」から見える、米中半導体の位置付け
今回は、Appleのモンスター級プロセッサ「M2 Ultra」と、バンダイの「Tamagotchi Uni(たまごっち ユニ)」を分解。そこから、米中の半導体メーカーが目指す戦略を読み解く。 - スマホやPCは「中身のみ進化」する時代に突入
今回は、Appleの「Mac Pro」と「Mac Studio」や、ソニー、Samsung Electronicsのスマートフォンを分解。いずれも「外観は前世代品と同じ」で、中身を大きく変更していることが共通している。 - 1つのCPUを作って「完コピ」、Appleの理想的なスケーラブル戦略
Appleのプロセッサ「M2」シリーズが出そろった。今回は、そのM2シリーズの解析結果から、Appleのチップ開発戦略をひもといてみよう。 - 最新チップを徹底比較! 〜最新スマホから復刻版ゲーム機まで
2022年第4四半期から2023年第1四半期に発売された最新プロセッサのうち、スマートフォン向けチップや、復刻版ゲーム機などに搭載されているチップを比較してみたい。