高速大容量の光ファイバ通信を支える光コネクタ:福田昭のデバイス通信(461) 2022年度版実装技術ロードマップ(85)(2/2 ページ)
長きにわたり続いてきた「2022年度版実装技術ロードマップ」の解説シリーズは、今回で最終回となる。今回は、基板対基板コネクタと光コネクタの動向を解説する。
数多くの要素技術で構成される光コネクタ
光ファイバケーブル同士を接続する光コネクタには、金属配線基板や金属ケーブルなどを接続するコネクタに比べ、高い加工精度が要求される。光ファイバは光が伝搬する中心部のコアと、光をコアに閉じ込める周辺部のクラッドによって構成されており、コアの直径は長距離伝送用のシングルモードファイバで10μmしかない。
シングルモードファイバ用の光コネクタは、直径が10μmしかないコアの位置を高い精度で合わせなければならず、位置ズレが少しでもあると大きな損失を生じる。そこで光コネクタでは光ファイバを「フェルール」と呼ぶ円筒状の部品に固定する。そして「整列割スリーブ」と呼ぶ円筒状の部品にフェルールを挿入し、フェルール同士を突き当てることで光信号を伝送する。
整列割スリーブはフェルールに合わせて寸法が決められている。フェルールの直径(外径)には2.5mmと1.25mmがあり、それぞれ専用の整列割スリーブが組み合わされる。整列割スリーブの内径は、フェルールの外径よりもわずかに短くしてある。
フェルールの先端部分は通常、研磨しておく。光ファイバの接続端面における反射損失をなるべく小さくするためだ。研磨方法には平面研磨やPC(Physical Contact)研磨、APC(Angled PC)研磨などがある。
光コネクタの基本的な構造(右上)とフェルールおよび整列割スリーブの例(左下)、研磨方法の例(右下)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
単心と多心の光ファイバケーブル
光コネクタには用途や光ケーブルなどの違いによって数多くの種類が存在する。代表的な光コネクタにはSC(Subscriber Connector)形コネクタ、LC(Lucent Connector)形コネクタ、MT(Mechanically Transferrable)コネクタなどがある。
光ファイバケーブルでは、1本のケーブルが収容する光ファイバ線の数を「心」あるいは「芯」で表現する。1本の光ファイバ線を収容するケーブルを、「単心ケーブル」と呼ぶ。直径が2.5mmのフェルールに対応した「円筒形単心ケーブル」用コネクタの代表例がSC形コネクタ、直径1.25mmのフェルールに対応した「円筒形単心ケーブル」用コネクタの代表例がLCコネクタである。いずれもロック(固定)機能を備えた中継アダプタを介して接続する。
複数の光ファイバ線を収容するケーブルは「多心ケーブル」と呼ぶ。多心ケーブル用コネクタの代表例は、テープ(リボン)状のファイバケーブルをつなぐMTコネクタである。2本のガイドピンを備えた角形のコネクタであり、接続状態の固定にはクリップを使う。構造は簡素であるものの、ガイドピンは精密加工によって作られており、精度の高い接続を実現している。
光ファイバコネクタの例。左下は中継アダプタを介して単心ケーブルを接続するコネクタ。右下はテープ(リボン)状の多芯ケーブルを接続するコネクタ。右上は、1本の光ファイバに複数のコアを内蔵させたマルチコアファイバ(4コアタイプ)の断面構造例[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
光ファイバケーブルの伝送容量向上は、多心化によって進められてきた。最近では1本の光ファイバに複数のコアを内蔵させることでファイバ当たりの伝送容量を高める「マルチコアファイバ」が登場している。マルチコアファイバではフェルールとコネクタが従来の単数コア(シングルコア)とは違ってくる。
ここからはお知らせである。JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会は2024年5月29日に、ローマップの更新版となる「2024年度版 実装技術ロードマップ」の発刊を発表した。発刊に合わせて同年6月11日には、完成報告会を東京で開催する。
そこで本コラムのシリーズ「2022年度版実装技術ロードマップ」は、今回をもって最終回としたい。長きにわたるお付き合いに深く感謝するとともに、次のシリーズにご期待されたい。
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