2023年SiCパワーデバイス世界売上高ランキング、首位はST:onsemiは順位2つ上げ2位に(2/2 ページ)
市場調査会社のTrendForceはSiCパワーデバイス市場についての調査を発表した。それによると、2023年の市場シェアはSTMicroelectronicsが32.6%を占めて首位となり、onsemiは23.6%で前年の4位から2位に浮上した。続くInfineon Technologies、Wolfspeed、ロームを含めた上位5社が総売上高の91.9%を占めていたという。
「経営戦略の誤り」で後退のWolfspeed
Wolfspeedについては、TrendForceは「経営戦略の誤りによって過去2年間市場機会を逃し、パワーデバイス事業の後退につながった」と指摘する。ただし同社は依然として世界最大のSiC材料サプライヤーであり、特に車載グレードのMOSFET基板向けで、8インチ領域では先行者利益を得ている。
同社は、米国ノースカロライナ州に建設中の新工場「John Palmour Manufacturing Center for Silicon Carbide」(JP工場)の生産開始を控えている。これによって材料生産能力を大幅に増強し、米国ニューヨーク州のモホークバレー工場でも試運転を進めることが期待される。しかし同社は依然として膨大な遊休生産能力と立ち上げコストに直面していて、これが財務状況を大きく圧迫している。TrendForceは、Wolfspeedがこの難局を問題なく乗り切れるかどうかはモホークバレー工場の稼働状況とJP工場の計画にかかっているとみている。
ロームは2023年11月、ソーラーフロンティアの旧国富工場(宮崎県国富町)を第4のSiC工場として買収した。2024年中に8インチSiC基板の生産を開始し、その後パワーデバイスの生産を始める予定だ。同社は、Vitesco Technologies、マツダ、吉利汽車などの自動車メーカーやティア1サプライヤーと長期的なパートナーシップを確立し、次世代パワーモジュールの開発を加速させ、市場シェアを高めている。
TrendForceは、SiC業界全体について「急成長と激しい競争の局面にあり、規模の経済が何よりも重要だと考えている」としている。主要な垂直統合型(IDM)メーカーはこれまでの保守的で着実な戦略から、積極的なSiC拡大計画に転換し、主導的地位の確立を目指している。現在、世界で10社以上が8インチSiCウエハー工場の建設に投資しているといい、市場の拡大が続く中、競争はさらに激しくなることが予想される。
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