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最新ドローンを分解 半導体は「ほぼ中国製」この10年で起こったこと、次の10年で起こること(84)(3/3 ページ)

今回は、2024年に日本で発売されたドローン2機種を紹介する。すっかり身近になったドローンを分解すると、数多くの中国製半導体が使われていることが分かる。

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日本専用品「HOVERAir X1 Smart」を分解

 図5は、2024年に日本専用として発売されたドローン本体99gの「HOVERAir X1 Smart」の様子である。電源アダプター、充電器、ドローン本体が梱包されており、コントローラー無しの製品となっている。ドローン本体のカメラが被写体を認識し、追従、ホバー、旋回など多彩な空撮を行う(弊社では分解だけでなく空撮業務にも使用中)。空撮データはスマートフォンに転送できる。図5左下に充電器の基板を示す。HOVERAir X1 Smartは中国ZEROZERO ROBOTICSの製品だ。今回報告している製品の前世代品は2023年に米国で発売されていて、2024年1月にラスベガスで開催された「CES 2024」のニューヨークタイムズ紙の「The Beat of CES 2024」に選出されている。


図5 「HOVERAir X1 Smart」[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図6はHOVERAir X1 Smartの充電基板上のチップの様子である。中国半導体メーカー製のチップで構成されている。USB Power Deliveryチップ、システム制御マイコン、パワー半導体などが中国製だ。弊社では多くの充電器を分解し観察しているが、中国製比率はいずれの製品(日本メーカー製品含む)でも極めて高い。電池制御、電源制御は2020年以降、民生分野の製品では中国の独壇場になりつつある状況だ。


図6 HOVERAir X1 Smartの付属充電器基板[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図7はHOVERAir X1 Smartの内部の様子である。モーター制御基板には中国製のモーター制御マイコン、駆動系のチップがびっしりと並んでいる。ドローンだけでなくお掃除ロボット、カメラ向けのジンバルなども同様に中国チップ群がずらりと並ぶ。


図7 HOVERAir X1 Smartのモーター駆動基板[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図8はHOVERAir X1 Smartの画像処理、通信、飛行制御基板の様子である。こちらには中国製チップは存在せず、米Qualcommのチップセット(プロセッサ+電源+通信)構成になっている。プロセッサは画像処理とAI処理機能を搭載している。HOVERAir X1 Smartは撮影カメラに加え、常時周囲の画像を捉えていて、衝突を回避しながら飛行する。着陸は手の平をかざせば認識し、ゆっくりと手の平に降りてくる。こうした処理もQualcommプロセッサが行っている。


図8 HOVERAir X1 Smartの画像処理基板[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

Qualcommチップを採用した「Ray-ban Meta」

 図9は2023年10月に発売になった「Ray-ban Meta」の様子である。この製品の詳細は省略するが、こちらもQualcommのAR向けチップセットを採用している。多くの製品の内部で、中国半導体の比率が高まっている他、Qualcommのようなチップセット化(丸ごと化)もますます進んでいるのが分かるだろう。


図9 2023年10月に発売された「Ray-ban Meta」[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 次回は「Copilot+ PC」におけるQualcommのチップセットを報告したい。


執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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