「Copilot+ PC」を分解 際立つQualcommのスタートダッシュ:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(85)(4/4 ページ)
2024年6月、「Copilot+ PC」が各社から一斉に発売された。今回、テカナリエは「Surface Laptop(第7世代)」を分解。ひと際目立っていたのが、真っ先にCopilot+ PCに対応したQualcommのチップセットだ。
Qualcommの参入でPCでもチップセット化が進む?
表1はCopilot+ PC対応のSurface Laptopと2024年1月に発売されたDELL PCの内部比較である。DELL PCはIntelの新プロセッサ「Core Ultra」を採用する。Intel製チップはプロセッサとWi-Fiで、それ以外のチップは全て台湾あるいは米国のPC向け半導体メーカー製になっている。PCは、歴史は長いがチップセット化がスマートフォンほど進んでいない。しかしQualcommの参入によって、PC内部もスマートフォン並みに”1社による独占的なチップセットの搭載”が進む可能性もあると思われる(PCがQualcomm製メインになることは考えにくいので可能性は低いが)。
表2はAMDのプロセッサ「Ryzen 7 8840U」を採用するGPD社のゲーミングPC「WIN4」である。内部の構成はIntel製とほぼ同じ。チップセットにはなっておらず、PC向けの多くの定番チップが採用されている。
図6は、Qualcomm Snapdragon X Eliteのチップ開封によるシリコン型名である。プロセッサはTSMCの4nm世代を適用して製造されている。特性を安定化させるためのシリコンキャパシターも多数パッケージに組み込まれていて、これもQualcommの設計となっている。弊社では電源ICも含めてQualcommチップの開封解析を一通り行った。非常に多くのチップがスマートフォン向けチップと同じ構成、または流用となっている!
図7はSurface Laptopと同じ日に発売となったCopilot+ PC対応のLenovo「Yoga Slim 7x」の様子である。こちらも内部はQualcommチップセットで構成されている。
ことしの9月以降にはなるが、今夏から秋にはCopilot+ PCのIntel版、AMD版を報告したい。
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