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酸化ガリウムウエハーの低コスト量産に向け、東北大が新会社を起業次世代パワー半導体

東北大学は、β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)ウエハーの低コスト量産化を目指す同大発のスタートアップFOXを起業したと発表した。同大と同大発スタートアップのC&Aが共同開発した貴金属フリーの単結晶育成技術を用い、シリコンに匹敵する低欠陥のβ-Ga2O3インゴット/基板を、SiCより安価に製造する技術の実用化を目指す。

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 東北大学は2024年10月17日、β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)ウエハーの低コスト量産化を目指す同大発のスタートアップFOXを起業したと発表した。同大と同大発スタートアップであるC&Aが共同開発した貴金属フリーの単結晶育成技術を用い、シリコンに匹敵する低欠陥のβ-Ga2O3/基板を、SiC(炭化ケイ素)より安価に製造する技術の実用化を目指す。

OCCC法で作製したβ-Ga<sub>2</sub>O<sub>3</sub>インゴット[クリックで拡大]
OCCC法で作製したβ-Ga2O3インゴット[クリックで拡大] 出所:東北大学

 β-Ga2O3は、SiCやGaN(窒化ガリウム)に比べてバンドギャップが広く、また高性能でエネルギー損失の少ないことから、次世代パワー半導体として期待されている。さらに、β-Ga2O3はシリコン同様、原料融液から結晶成長させる融液成長が可能で、一度に大量の高品質単結晶が製造可能となる。この成長速度は、SiCと比べ10〜100倍程度と「次世代半導体材料の中でもウエハーの生産性が極めて高い」といい、理論的には低コストで低欠陥の単結晶基板作製ができるという。

 ただ、従来の結晶育成法では、高融点酸化物の融液を保持するルツボに貴金属のイリジウム(約2万6000円/グラム(2024年8月相場))を用いていて、定期的な改鋳も必要となることから、イリジウム由来のコストが半導体前工程の一部の薄膜製造を含むコストの6割以上を占めるなど、β-Ga2O3デバイス製造コストの低減は困難だったという。現状、β-Ga2O3基板はSiCよりも高価で、β-Ga2O3の普及は進んでいない。今回のスタートアップFOXは、この課題を解決すべく起業したという。

シリコンに匹敵する低欠陥ウエハー、SiCより安価に製造

 FOXは、貴金属ツルボを使用せずにβ-Ga2O3バルク単結晶製造が可能なOCCC(Oxide Crystal growth from Cold Container)法を用い、シリコンに匹敵する低欠陥のβ-Ga2O3インゴット/基板をSiCより安価に製造する技術の実用化を目指す。

OCCC法の概要図[クリックで拡大]
OCCC法の概要図[クリックで拡大] 出所:東北大学

 OCCC法は、東北大学金属材料研究所の吉川彰教授と同大学未来科学技術共同研究センターの鎌田圭准教授及びC&Aの研究グループが開発した技術で、2022年4月、同技術の開発および、β-Ga2O3バルク単結晶の作製成功を発表している(下記リンク参照)

28年に6インチ量産技術確立、33年までにIPO目指す

 東北大は、「本技術によって、酸化ガリウムの価格/品質の課題にブレークスルーをもたらすことで、酸化ガリウムの次世代パワー半導体の社会実装に貢献し、2030年予測で470億円(富士経済より)と極めて限定的にしか予測されていない酸化ガリウムの市場を桁違いに拡大することを狙う」と説明。初期は、OCCC法を用いた半導体グレードの大口径化技術開発に集中し、技術開発を加速させ、2028年中に6インチウエハーの量産技術を確立することを目指す。さらにその後、量産化工場の増設を進めるとともに6インチウエハーの実証を進め、2033年までにIPO(新規株式公開)する計画だという。

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