1チップで9軸モーター制御が可能 ルネサスの新ハイエンドMPU:産業用通信にも柔軟に対応(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは、1チップで産業ロボットのモーターを最大9軸まで制御できるハイエンドMPU「RZ/T2H」を発表した。主要な産業イーサネット通信を始め、さまざまなネットワーク通信に1チップで対応できる。
モーター制御に必要な周辺機能も集積
最大9軸のモーター制御に必要な周辺機能を1チップに集積しているのも、RZ/T2Hの大きな特長の1つだ。モーター制御に必要となる「三相PWMタイマー」や「電流値測定用のΔΣインタフェース」「エンコーダーインタフェース」を9軸分搭載した。これらの周辺機能は、Cortex-R52の低遅延バス(Low Latency Peripheral Bus)上に配置されており、最小遅延でレジスターへアクセスできる。
生産現場では、PLCやモーションコントローラ、DSC(分散制御システム)、CNC(数値制御装置)など、さまざまなコントローラ機器が導入されている。RZ/T2Hには、4個のイーサネットポート、3個のギガビットイーサネットMAC(GMAC)および、イーサネットスイッチが内蔵されている。これらを自由に組み合わせることで、「EtherCAT」や「PROFINET」「EtherNet/IP」「OPC UA」および、次世代の「TSN」規格など、主な産業イーサネットや汎用イーサネット通信に1チップで対応できるようにした。
この他、PCIe Gen3×2レーンなどの高速通信インタフェース機能や、TrastZoneをはじめとするセキュリティ機能、3.1MSPS(0.32マイクロ秒)の高速変換A-Dコンバーターなど、さまざまな機能を1チップに集積した。
なお、RZ/N2HはRZ/T2Hと比べΔΣインタフェースやエンコーダーインタフェースのチャネル数などがわずかに少ないものの、基本的な性能は同等だという。大きく異なるのはパッケージの大きさである。RZ/T2Hは外形寸法が23×23×0.8mmの729端子FCBGAで提供。これに対しRZ/N2Hは、21×21×0.8mmの576端子FCBGAで供給する。
ルネサスは、RZ/T2H向けソフトウェアとして「Flexible Software Package(FSP)」や長期サポートのLinuxパッケージを提供する。また、9軸のモーターを駆動できるインバーターボードや多軸モーター制御サンプルソフトウェア、モーター制御ツール「Motion Utility Tool」も用意している。
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