中国の半導体進化をあなどることなかれ 「逆風」が後押しに:強力な国策で急速に進化(3/3 ページ)
米国による規制に苦しむ中国は、半導体産業において重要な局面を迎えている。設計や製造技術は急速に進歩していて、研究活動も活発化している。厳しい逆風の中で、設計技術、製造技術ともに着実に力を付けている。
逆風に耐え抜くHuawei
Huaweiは、国際的な圧力と規制が続く中、垂直統合型の回復力のある国内半導体サプライチェーンを確立するという野心的な方向転換を図り、統合デバイスメーカー(IDM)の野望を効果的に追求している。
Huaweiの拡大は、米国の制裁に対する直接的な対応である。同社は、地方の政府機関からの財政支援を受けて、先進チップのエンドツーエンドの国内サプライチェーンの構築を目指していると報じられている。
Huaweiの「Ascend」チップシリーズの進歩は、NVIDIAの最上位製品との潜在的な性能差にもかかわらず、中国にとって「十分な性能の」AIハードウェア戦略が実行できることを示唆している。
報道によると、Huaweiは中国全土で少なくとも11のファブを運営しており、メモリやロジックチップ、ファウンドリーサービスにも大きな影響を与えている。R&Dセンターを含めると、同社の拠点は20カ所に及ぶ可能性がある。
SMICや、より広範な中国のファウンドリーセクターは、先進ノードの推進と並行して、成熟プロセスノード(28nm、40nm、55nmなど)の生産能力を積極的に拡大している。
この現実的な注力は、安定した収益を確保し、市場シェアを獲得し、最先端チップを必要としないセグメントで世界的な依存関係を生み出す可能性がある。
SMICの2024年の売上高は好調だったが、12インチウエハー(多くの場合、成熟ノード)が全体の77%を占めており、これを裏付けている。2025年1月に28nmプロセスの価格を大胆に40%も値下げしたことは、この競争戦略の好例である。このように、中国のファウンドリー戦略は、戦略的自立性に向けて先進ノードを追求する一方で、成熟ノードでは激しい価格競争を繰り広げるという2つの側面から成り立っている。
中国は、先進的なパッケージング技術にも多大な投資を行い、進歩を遂げている。JCETやTongfu Microelectronics、Huatian Huichuang Technologyなどの中国企業は、チップレット、2.5D/3Dインテグレーション、FOWLP(Fan Out Wafer Level Packaging)の生産能力の強化に取り組んでいる。
先進パッケージングは、微細化の課題を抱えながらもチップ性能を向上させる1つの手段であるが、コスト効率の高い微細化は、材料と専用装置の成熟した国内サプライチェーンにかかっている。
中国が直面する課題
中国の半導体産業は進歩を遂げているものの、製造歩留まり、コスト競争力、そして人材育成に苦戦している。先進的な製造技術とサプライチェーンにおける継続的な問題により、2020年の低い水準(約16%)から自給率(2025年までに70%、2030年までに100%)を達成することは困難だと思われる。
これらの目標は、定められた期限までに厳密に達成できるというよりも、むしろ野心的なものであり、調整や戦略的セグメントへの集中につながる可能性が高い。
最も可能性の高い短期的な見通し(今後5〜7年)は、国内市場の漸進的な成長と、世界市場における二極化の両方になるだろう。中国はDUVベースのプロセス、製造装置、材料、そして先進的なパッケージング技術を進化させ、成熟市場および中規模市場における自給自足体制を強化し、世界的に強力な競争相手となるのではないか。
中国の半導体強化の道のりは、国家的な野心、多額の投資、エンジニアリングの創意工夫、そして根強い地政学的および技術的な逆風が複雑に絡み合っている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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