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HBM系が主役、DDR系が脇役になるDRAM市場福田昭のストレージ通信(291) 半導体メモリの行方をアナリストが解説(1)(2/2 ページ)

今回から、2025年8月に開催された「FMS(the Future of Memory and Storage)」の一般講演の一つを紹介する。アナリストであるJim Handy氏の講演「Memory and Storage, Current Status and Future Projections(メモリとストレージの現状と将来)」だ。

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データセンターへの投資が2023年末から急激に拡大

 次は主要なクラウドサービス企業がハイパースケールデータセンター(DRAMの主要な応用分野)に投資した金額(有形固定資産)の四半期推移である。対象期間は2021年第1四半期から2025年第2四半期までの4年と半年。サービス企業(あるいはサービス名)は、「Alphabet(Google)」「Meta」「Amazon(AWS)」「Azure(Microsoft)」「Alibaba」「Apple」である。

 これら6企業(6サービス)が固定資産(有形固定資産)に費やした金額の総計は、2021年第1四半期(1Q21)から2023年第3四半期(3Q23)までは変動がありながらも平均的には同じくらい(400億米ドル前後)だった。

 それが2023年第4四半期(4Q23)以降は急激に増加しつつある。2024年第4四半期(4Q24)から2025年第1四半期(1Q25)には総額が約800億米ドルに達した。2023年第3四半期(3Q23)の約400億米ドルから、わずか1年半で2倍に拡大したことになる。直近の2025年第2四半期(2Q25)は投資金額がさらに上昇し、1000億米ドルに近づいた。

主要なクラウドサービス企業がハイパースケールデータセンターに投資した金額(有形固定資産)の四半期推移
主要なクラウドサービス企業がハイパースケールデータセンターに投資した金額(有形固定資産)の四半期推移。サービス企業(あるいはサービス名)は下から上に「Alphabet(Google)」「Meta」「Amazon(AWS)」「Azure(Microsoft)」「Alibaba」「Apple」の順である。企業(サービス)別に見ると、2023年末から2025年前半に投資金額を拡大しているのは「Alphabet(Google)」「Meta」「Amazon(AWS)」「Azure(Microsoft)」であることが分かる。

DDR4系DRAMの容量単価が2025年4月以降に爆上げ

 最後はDRAMの記憶容量当たり単価に関するスライドである。大原氏が2025年6月18日付の記事(「DRAM業界をかき乱す中国勢、DDR4の供給の行方は?」)で詳しく報じたように、大手DRAM3社がDDR4系DRAMの生産を2025年末で終了させることと、中国のDRAMベンダーであるCXMTなどによるDDR4系DRAMの極端な低価格攻勢(2024年)、さらにはCXMTがDDR4系DRAMの生産休止を決めたことにより、DDR系DRAM市場は混乱状態にあるもようだ。

 そしてHandy氏がFMSの講演で示したスライドが、DDR4系DRAMとDDR5系DRAMの記憶容量(ギガバイト=8Gbit)当たり単価(スポット市場の最低価格)の推移である。


DDR4系DRAMとDDR5系DRAMの記憶容量(ギガバイト=8Gbit)当たり単価(スポット市場の最低価格)の推移(2024年3月〜2025年7月)。赤線がDDR5系、黒線がDDR4系と思われる(グラフには表示がない)[クリックで拡大]

 2024年3月から2025年3月までの13カ月間は、DDR4系の単価は一貫して漸減してきた。2024年3月時点で約1.50米ドルだったのが、2025年3月時点では約1.00米ドルとおよそ3分の2に値下がりした。この期間、DDR5系の単価は2ドル前後でおおむね一定で推移した。

 ところが2025年4月になると、DDR4系の単価が急激に上がり始める。同年6月には2米ドルを超え、DDR5系と単価がほぼ変わらなくなる。ここで重要なのは、DDR5系でも2025年3月以降は単価が上昇傾向にあることだ。DDR系全体で供給不足となっていることが分かる。

(次回に続く)

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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