デートコード「2年ルール」は古い? 半導体進化に応じたトレーサビリティを(前編):半導体製品のライフサイクルに関する考察(10)(3/3 ページ)
半導体の安全性と信頼性に大きく関わる半導体。そのトレーサビリティは、半導体の性能の進化に応じて、実情に見合う内容にアップデートされるべきものだ。今回は、半導体トレーサビリティの現状と課題、そして、半導体トレーサビリティがサプライチェーンのレジリエンス向上にどう影響するのかを3回にわたって解説する。
15年以上性能を維持できる製品も 「2年間ルール」との大きなギャップ
「2年間デートコード」ルールは、初期の半導体製造における水分吸収やウィスカ成長などのリスクに対応するため導入された。当時は保管環境の管理が不十分で、長期保管による不具合が多発していたためだ。しかし、現在では材料やプロセス技術、保管規格(JEDEC JEP160、J-STD-033)の進歩により、製品は15年以上性能を維持できることが実証されている。また、「長期保管した半導体や、古いデートコード品は使えるのか?(前編)」と「同後編」で述べたように、試験では電気的・機械的特性やはんだ付け性に劣化はほぼなく、酸化防止技術やフラックス改良により信頼性も確保されている。また、偽造リスクは製品の古さではなく、無許可の流通経路に起因し、AS6496に準拠する流通業者は、20年以上の保管品でもトレーサビリティを保証し、真正性を証明する記録を保持している。それにもかかわらず、業界には依然として「2年間ルール」というレガシー慣行が残っている。
- 2年基準の起源:初期の半導体製品において、湿気による損傷や電気的ショートといったリスクに対処するために2年間の保管期間ルールが設けられた。これは、保管環境が不安定であったため、信頼性と安全性を確保するために保守的な基準が採用された
- 技術とプロセスの改善:材料科学や保管技術の進展により、製品の耐久性は大幅に向上。最新の化合物は湿気の吸収を減少させ、剥離を防ぎ、表面仕上げによる改善により、ウィスカの発生を抑えた。規制された保管基準により、従来の2年を超える製品ライフサイクルがさらに保証される
- 実証的な証拠と業界の変化:長期的な研究と実証データにより、適切に保管された製品が15年以上にわたり機能を維持することが実証されていて、2年のデートコードの必要性が疑問視されている。この証拠は、現在の技術力と科学的発見に一致する業界標準の更新が必要であることを裏付けている
最後に
「2年間のデートコード」に依存し続けることは、半導体業界にとってサプライチェーンの効率を最適化する機会を逃すことになり得る。実証的な証拠によれば、適切に保管された製品は、最新の基準に従えば、2年をはるかに超えてもその機能を維持することが証明されている。結局、製品の老朽化に関する誤解に対処するには、長期保管の科学について関係者を啓蒙するための協調的な取り組みが必要となる。
サプライチェーンがますます複雑化し、業界全体で信頼性への要求が高まる中、トレーサビリティはレジリエンスの方程式において不可欠な要素となる。適切な保管、厳格な規格の順守、そして新たな技術の登場により、透明性が向上し、半導体製品の長期的な供給が保証されることで、トレーサビリティの可能性は大きく広がっていくことになる。
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