触覚はPSOC 4、関節にGaN、目や耳も――人型ロボット向けで攻めるInfineon:embedded world 2026(2/2 ページ)
米国や中国を中心に開発が加速するヒューマノイドロボットに向け、Infineon Technologiesは各種センサーやマイコン、パワー半導体など知覚や制御、駆動を支えるソリューション展開を強化している。今回、同社のHead of Application Management RoboticsであるNenad Belancic氏に話を聞いた。
関節にはGaNが効く
Belancic氏はまた、人型ロボットには1台当たり最大60個ほどのモーターが搭載されるようになると指摘。特に腕や指などの小さな関節を制御するモーターの制御には、より小型なソリューションが求められる。ここで同社が強みを持つ窒化ガリウム(GaN)パワー半導体製品を用いることで、同程度の性能のシリコン品と比較して大幅な小型化が実現できると強調した。
実際に会場では、ロボットの肘関節を動かすモーター制御のデモを展示していた。
関節部分に搭載する円形の基板には、同社が2025年1月、「ワイドバンドギャップ(WBG)パワー半導体の能力を最大限に引き出す」モーター制御用マイコンとして発表した「PSOC Control C3」やゲートドライバー内蔵のGaNハーフブリッジICおよび、磁気抵抗(TMR)電流センサーなどを搭載。小型かつ高効率な動作を実現するとしている。同社はレファレンスデザインボードも用意している(レファレンスデザインボードの詳細は下図)
Belancic氏は「当社はモーターコントローラーやGaNパワーデバイスに加え、センサーレスFOC(Field Oriented Control)を実現するための電流センサーなど、業界が求める小型モーターの実現に必要な製品群をそろえ、有利なポジションにあるといえる」と強調していた。
また、モーター制御やパワー領域に加え、モーターそのものにも今後さらなるイノベーションが求められるとも説明。「GaNの性能を十分に引き出すには低インダクタンスのモーターが求められ、それによってシステム全体の価値を最大化できる。現状では、従来のモーターに新しい技術を適用するにとどまるケースが多く、それでは効果は限定的だ。例えるなら、古い車に新しいエンジンを載せただけでは一定の性能向上にとどまり、本来の性能は引き出せない。車体側の改良が必要であるのと同様に、モーターも進化していくだろう」と説明した。
60GHzレーダーやハイブリッドToFセンサー、MEMSマイクも
このほか、会場では60GHzレーダーやハイブリッドToF(Time-of-Flight)センサーによる周辺の検知および、MEMSマイクとエッジAI向けマイコン「PSOC Edge」による音声認識AIなどのデモを紹介していた。
Belancic氏は「ヒューマノイドの活用は、まず完全な自動化や半自動化に至る前段階の領域から始まる。そして最終的な目標、いわば『究極形』はコンシューマー向けだろうが、そこに至るまでには多くの反復が必要になる。特に機能安全の面をしっかりと満たす必要があり、コストも引き下げていかなければならない。一般消費者がヒューマノイドに5万ユーロを支払うことは難しい。一方で産業界では5万ユーロはそれほど大きな金額ではなく、まずはそこが第一のステップになる。既にさまざまな企業が、特に自動車産業においてヒューマノイドを導入し、知見を蓄積している」と説明した。
さらに「現時点ではロボティクスにおける明確な標準は確立されていない。多くのISOワーキンググループが、どの程度の機能安全が求められるかを定義している段階にあるが、今後、ヒューマノイド分野で機能安全の重要性が一層高まるのは間違いない。Infineonは車載向けの『AURIX』ファミリーを有していて、自動車分野で培ってきた知見をロボティクスへ展開できる。コンシューマー、産業、そして高度な機能安全が求められる車載分野の全てを提供するInfineonは『ヒューマノイドのためのワンストップショップ』として展開できる」と語った。
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