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チップ抵抗器の小型化が過度な温度上昇を招く(後編)福田昭のデバイス通信(452) 2022年度版実装技術ロードマップ(76)(2/2 ページ)

後編となる今回は、「チップ抵抗器の温度上昇と基板放熱の関係」と、「基板放熱に適した新たな温度基準と取組み」の概要を紹介する。

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基板の配線を広くすることでチップ抵抗器の温度上昇を緩和

 またチップ抵抗器のサイズが小さくなると一般的には、同じ負荷電力でも温度上昇が激しくなる。ここで重要なのが、プリント基板の配線幅である。配線幅が放熱性能を大きく左右するからだ。

 熱流体シミュレーションによると、配線幅が1mmと細いと「1608M」サイズの温度上昇は「3216M」サイズに比べて10%〜15%増加する。また「3216M」サイズでも温度の上昇幅は約40℃とかなり大きい。

 配線幅が39mmと大幅に太くなると、温度上昇そのものが低下するとともにサイズの違いによる温度差が縮まる。「3216M」サイズの温度上昇幅は約10℃にとどまる。そして「1608M」サイズの上昇幅は「3216M」サイズから1℃〜2℃の増加とあまり違わない。

チップ抵抗器のサイズと基板の配線幅(1mm〜39mm)、温度上昇の関係
チップ抵抗器のサイズと基板の配線幅(1mm〜39mm)、温度上昇の関係。チップ抵抗器は1個。負荷電力は0.2W。熱流体シミュレーションの結果[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

負荷電力を決める温度の基準を周囲温度から端子部温度に変更

 ここまで見てきたように周囲温度を基準とする従来の負荷軽減曲線では、基板の放熱性が大きく影響するチップ抵抗器の温度上昇を緩和しづらい。そこでJEITAに所属する抵抗器メーカーは、周囲温度ではなく「抵抗器端子部(端子部はんだフィレットの中央部)の温度」を基準とする負荷軽減曲線を提案した。

 端子部温度が−55℃〜+125℃の範囲では定格電力の100%を負荷電力とした。+125℃を超えると負荷電力は低下し、200℃でゼロとなる。

周囲温度を基準とする負荷軽減曲線(左)と端子部温度を基準とする負荷軽減曲線(右)
周囲温度を基準とする負荷軽減曲線(左)と端子部温度を基準とする負荷軽減曲線(右)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

 JEITAはこの基準をIEC(国際電気標準会議)に提案済みであり、IECのTC40/WG41(抵抗器とコンデンサの標準化を検討するグループ)はテクニカルレポートを2017年に発行した。さらにIECは2023年8月に表面実装型固定抵抗器に関する国際規格IEC60115-8の改定版である第3版(Third Edition)を発行し、定格電力を定める温度の基準を「端子部温度」に変更した。

 なお本ロードマップの発行時点ではIEC規格は改定作業の途中であり、本文もそのようになっているので留意されたい。改定版の概要と意義については抵抗器大手のKOAが詳しい解説をWebサイトに掲載しているので、ご興味のある方には一読をおすすめする。

⇒(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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