STが車載マイコンに「全振り」 STM32も車載展開へ:エコシステムを生かす(2/2 ページ)
STMicroelectronicsが、車載マイコン分野を加速させる。車載用ではSoCも開発していたが、いったん停止し、マイコンに全リソースをかける。汎用マイコンとして高いシェアを持つ「STM32」も車載向けに展開していく。
「STM32」を車載へ
汎用マイコンで高いシェアを持つ「STM32」も車載用に展開していく。車載用となる「STM32 A」シリーズの詳細は、搭載するコアも含めてこれから発表する予定だ。中條氏は「STM32が持つ巨大なエコシステムを車載分野でも活用できることが最大のメリットだ」と語った。
中條氏は、産業用プラットフォームであるSTM32と車載用プラットフォームであるStellarの融合に期待していると述べる。特に注目しているのはAIの活用だ。STは2024年12月、組み込みAIに向けたSTM32の新製品として「STM32N6」を発表した。独自設計のNPU「Neural-ART アクセラレーター」を搭載し、AI処理性能を従来比600倍に高めたものだ。
「STM32N6のようなマイコンが、車載分野でどのように活用されているのかについて着目している。STとしては、クルマの末端にエッジAIの機能を持たせることが、クルマの利便性や快適性の向上につながると考えている」(中條氏)。STマイクロエレクトロニクスのマイクロコントローラ製品 マーケティング&アプリケーションでディレクターを務める石川義章氏は「統合制御プラットフォームであるStellar P/Gがあり、その末端には何にでも使える汎用マイコンが必要だと考えた。民生分野と産業分野の要件に応えてきたSTM32の性能や機能は、車載分野でも比較的すんなりとはまる。Stellar P/G、STM32 Aによって、自動車においてマイコンとして担うべき機能を面でおさえていく」と説明した。
中條氏は車載マイコンにリソースを集中させる理由について「マイコンは、IDMとして最も効率よく投資できるもの。われわれは、ST全体としての強みを発揮するためにシステムソリューションの提供に力を入れており、マイコンは(電源ICやセンサーなどの)他の製品と一番組み合わせやすい製品でもある」と語った。
「電動化とデジタル化の波が同じタイミングで一気に押し寄せているのが、現在起きている車載アーキテクチャの大変革の特徴だ。STは車載用プラットフォームと産業用プラットフォームを融合し、顧客の価値創造へとつなげていく」(中條氏)
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