たった1つの倉庫に常時130万個の在庫を抱える、電子部品ディストリビューターの大手Digi-Key Electronics(以下Digi-Key)。発注と同日に出荷する、年中無休の体制で顧客サポートを行うなど、ユニークなサービスを提供し続けている。IoT(モノのインターネット)などエレクトロニクス業界の新しいトレンドが進化する中、Digi-Keyは、どうありたいのか。プレジデントのDave Doherty氏が、今後の戦略などを含めて語った。
――2017年を振り返って、売上高や製品出荷数など、いかがでしょうか。
Dave Doherty氏 2017年の年間売上高は、創業以来初めて20億米ドル以上を達成した。日本では前年比21%増で着地し、大変よい業績を残した1年となった。出荷数についても2016年比で12%増と、大幅な増加を記録した。
――過去最高となる業績を達成できた理由については、どうお考えですか。
Doherty氏 2017年は、製品に対する需要が全般的に極めて強かったことが大きいだろう。2018年上半期には、在庫不足が生じる製品もあるとみている。当社は常に顧客の需要を予測し、“手元にある”在庫を、1億3000万米ドル分、増加した。
数多くの新たなテクノロジーが台頭しており、その中でも特にIoT(モノのインターネット)関連の勢いが強い。こうした市場のトレンドに応えるべく、Digi-Keyは、既存および新規のサプライヤーの新しいデバイスを約10万個追加した。当社のWebサイトにアクセスしてくださる顧客は、IoT向けのあらゆる製品やサービス、ホワイトペーパーなどのコンテンツを見つけることができるだろう。
IoTなど新しい技術に関連する部品を選ぶ際、信頼性の高い部品やサプライヤーをどう判断するかというのは、エンジニアにとってはリスクが大きい作業となる。われわれは、「安心して設計に使える部品」だけをサイトに掲載しているので、エンジニアが信頼して探しにこられるようなサイトでありたい。
――2018年の事業戦略と売上高目標をお聞かせください。
Doherty氏 当社の主要戦略は、「即、出荷」できる部品の種類と在庫を拡大していくことにある。とりわけ、全ての発注に対して、発注日と同じに出荷するというハイレベルなサービスは維持していきたい。Digi-Keyは、SKU(Stock Keeping Unit)に対して130万個以上の部品を在庫として持っている。われわれのWebサイト(www.digikey.jp)では、570万個以上に上る部品に対してアクセスがある。
当社は、顧客がアクセスできる新しいコンテンツや機能をさらにWebサイトに追加するなど、特にWebサイトの強化に注力していく。「Digi-Keyは、電子部品や設計に対するニーズを全て満たしているワンストップショップであるとともに、迅速な出荷と優れたカスタマーサービスを受けられるディストリビューターである」と、顧客に認識していただくことを目指している。
さらに、既存のサプライヤーの新しいデバイスも積極的に加えていく予定だ。顧客のニーズにさらに対応していくために、検索エンジンやソーシャルメディア、技術系イベントやフォーラムなど、さまざまなツールやイベントを活用してマーケティング活動も行っていく予定だ。
売上高目標については、明確な数値については言及を控えたいが、Digi-Keyのこれまでの成長率は、市場の成長率の2倍を達成してきた。2018年も、このペースを維持していきたい。特に、IoTや産業オートメーションなど、接続性(コネクティビティ)が関連する分野について、製品の売り上げが伸びると見込んでいる。
――日本市場での戦略については、いかがですか。
Doherty氏 Digi-Keyと日本の関係は古く、Digi-Keyの創業近くまでさかのぼることができる。日本の歴史的な重要性と影響力は、今日のわれわれや、ビジネスのやり方において重要な役割を果たしてきた。日本での当社の成長は目覚ましいものがあり、日本のエンジニアが、設計・開発プロジェクトにおいて当社を信頼してくれていることには、大変感謝している。
われわれは2018年以降も、日本に、72時間以内に確実に出荷できる体制を維持することを含め、日本顧客向けのサービスの向上と拡大を目指していく。
――今後の投資計画を教えてください。
Doherty氏 Digi-Keyのビジネスの拡大に直結するのは、何といっても倉庫、そして在庫だ。2017年も約9万3000m2を増築したが、2018年以降、2億〜3億米ドルを投入して、倉庫の床面積をさらに20万4300m2増設する。
――2018年、ディストリビューター業界は、どのように変化するとお考えですか。半導体市場予測については、いかがでしょうか。
Doherty氏 顧客にとって、ビジネスプロセスとコミュニケーションのスピードを加速するためには、Webベースのツールが欠かせないものになっていくだろう。M2M(Machine to Machine)の採用や、市場で競争力を維持するためにさまざまな形態の機械学習などのAI(人工知能)の導入に、企業がより積極的になるにつれ、API(Application Programming Interface)の支持が高まるだろう。
これによって、新しい市場トレンドに向かうサプライチェーン全体に対して、これまでとは異なる要件が増えてくるはずだ。さらに、現在の多くのERP(企業資源計画)ベースのシステムも変わっていくと考えられる。
今後は、個々のニーズとユーザーエクスペリエンスを理解し、常に変化し続ける生産活動や設計活動に付加価値をもたらす組織が、ディストリビューター業界のリーダーとなっていくだろう。もちろん、われわれはその立ち位置を目指す。
半導体市場についても、堅調に成長するとみている。IoTなどの新しい技術に限らず、既存のあらゆる技術が、一般人の日常生活にますます浸透していくと考えられるからだ。
――Digi-Keyは、エンジニアにとってどのような役割を果たすべきだとお考えですか。エンジニアは今、どんな課題を抱え、Digi-Keyはそれにどう応えていくのでしょうか。
Doherty氏 エンジニアは、情報と技術的なサポートを求めてわれわれのサイトに来る。エンジニアにとって、Webで入手できるコンテンツの重要性がより高まり、地理的、時間的な制約から実際にサプライヤーなどにコンタクトすることが少なくなっている。われわれがWebサイトを充実させることは、設計や試作を容易にするだろう。
課題としては、「エンジニアが、知りたい情報や技術サポートを1つの場所で、かつ自分の母国語で入手できるかどうか」を挙げられるかと思う。われわれは、あらゆるコンテンツを1つの場所に集約し、当社のテクニカルスタッフあるいは部品サプライヤーからの知見をできる限り提供できるようにしていきたい。
ディストリビューターとは、「エンジニアにとってのワンストップショップ」であるべきだと思う。必要な部品を探して購入し、BOM(Bill of Material)を作成し、量産に必要な量も購入できるような、そういった場所とサービスをエンジニアに提供することこそ、ディストリビューターの役目だ。
――電子部品のディストリビューター市場において、何か注目に値すべき変化はありますか。
Doherty氏 この業界において、リードタイムが長くなっているというトレンドがあることに注目している。われわれは現在のところ、リードタイムを改善するための厳しいタイムスケジュールはないが、実は、業界のこうした課題は、Digi-Keyにとっては強みでもある。リードタイムとターンアラウンドタイムは、極めて重要だ。1つの倉庫に集約していることと、即座に出荷できる電子部品の在庫数は業界一、という当社の異なる強みは、当社を他社と差別化する、利点となっている。
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提供:Digi-Key Electronics
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月15日