新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにも負けず、堅調な2020年となった米大手ディストリビューターのDigi-Key Electronics(以下、Digi-Key)。2021年には、拡張工事を行っていた倉庫が完成し、より一層、品種や在庫の増強に投資する。デジタルビジネス部門のエグゼクティブバイスプレジデント(EVP)を務めるJim Ricciardelli氏に、2021年の市況や戦略を聞いた。
――2020年の業績を振り返ってください。
Jim Ricciardelli氏 Digi-Keyのビジネスモデルは、デジタルプラットフォーム上での取り引きできる環境を顧客に提供するもの。そのため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下においても、ビジネス面での成長力は非常に強かった。
結果として2020年の売上高は2019年を上回り、堅調な1年になった。COVID-19感染拡大のさなかでも、サプライチェーンの混乱を防ぐべく当社を信頼し続けてくれた顧客の皆さんと、当社のチームの頼もしい仕事のおかげで、Digi-Keyは高いサービスレベルを維持できたと考えている。
――2020年は、どのような戦略に力を入れましたか?
Ricciardelli氏 Digi-Keyの事業戦略は、顧客価値に焦点を当て、継続的に投資することだ。これは1972年の設立以来、変わっていない。2020年も、パンデミックの影響が生じても、その考えが変わることはなかった。
2020年は、顧客のサポートを強化するために、新たに70社以上のサプライヤーを追加した。さらに、顧客がデジタルプラットフォーム上で商品を見つけやすく、選択しやすいように、検索エンジンの強化にも投資した。Digi-Keyの日本版サイトには毎月20万人もの顧客がアクセスし、製品を購入した。これからもユーザーエクスペリエンスを向上させるために、Webサイトの改善に向けた投資を続けていく。
――冒頭でお話されていたように、COVID-19はあらゆる業界に大きな影響を与えています。Digi-Keyにおいてはどのような影響がありましたか?
Ricciardelli氏 2020年は、「イノベーションを追求する姿勢」「困難な状況に打ち勝つたくましさ」というDigi-Keyの企業文化が、「顧客のため」という1つの目標の下、大きな変化をもたらした年だった。そのおかげで、当社はパンデミックという困難な状況においても、毎日120カ国に向けて、製品を即日出荷するという高いサービスレベルを維持することができたと考えている。
Digi-Keyでは、2300人の従業員を在宅勤務に移行させた他、当社のエンジニアが“UV(紫外線)トンネル”などの新しい安全衛生設備を自作して設置し、物流センター(PDC)で働く従業員の安全確保に努めた。また、オフィスの従業員が自発的にPDCに異動してくれたことで、PDCのスタッフを増強することができた。
4000人を超える当社の従業員が、顧客をサポートするために一丸となったことで、Digi-Keyの良い企業文化をこれまで以上に感じられた1年だった。
――米中ハイテク戦争は、いまだに先行きが不透明です。米中貿易摩擦による影響はいかがですか?
Ricciardelli氏 当社は2019年のうちに、関税を管理するための手順およびプロセスの確立に尽力したので、2020年は特に大きな影響を受けることはなかった。
さらに、2019年には、ミネソタ州シーフ・リバー・フォールズ(Thief River Falls)にある当社の敷地内に米国最大の自由貿易区(Free Trade Zone)が設立された。当社は中国から米国に輸入される製品に対する関税を、厳しい規律で管理し続けている。当社の自由貿易区では、中国からの関税の影響を受けずに日本へ製品を出荷することが可能だ。
――Texas Instruments(TI)は、2020年末までに大手ディストリビューターとの契約を終了しました。こうした動きは、半導体メーカーとディストリビューターの関係に変化をもたらしますか? Digi-Keyの、ディストリビューターとしての役割についてはどうお考えでしょうか。
Ricciardelli氏 TIの話をするならば、TIと当社のフランチャイズパートナーシップは極めて強固なものだ。当社が持つ巨大な顧客網は、TIのみならず、当社の全てのサプライヤーに大きな価値を提供している。Digi-Keyのサイトは、エンジニアが新製品を見つけるために立ち寄る“最初の場所”であり、当社の製品や在庫が、設計エンジニアたちの要求に応えていることを示している。
――COVID-19などの影響で、予想しにくい部分もあるかと思いますが、2021年の市況について展望をお聞かせください。
Ricciardelli氏 顧客が新製品の発売に向けて在庫を積み上げているため、強い勢いがあるとみている。2021年は特に、5G(第5世代移動通信)、電気自動車、産業用オートメーション、IoT(モノのインターネット)、インダストリー4.0など、新しい技術を積極的に活用する分野にとって重要な年になるだろう。
こうした技術トレンドに加え、COVID-19の影響で、仕事を含め生活に関わるほぼ全ての分野でデジタル化が加速している状況が追い風となり、2021年はエレクトロニクス業界にとって力強い成長を遂げる1年になるのではないだろうか。
――2021年におけるDigi-Keyの戦略については、いかがでしょうか。
Ricciardelli氏 引き続き、顧客価値に焦点を当てていく。非上場企業である当社は、公開企業のように株主からの圧力を受けることはない。そのため、サプライチェーンに対する顧客のニーズに応えるための投資を存分に続けることができる。顧客が最新の電子部品を簡単に選択し、イノベーションを実現できるよう、デジタルプラットフォームにも投資する計画だ。
また、2021年には数年前から行っていた倉庫拡張が完了し、18万6000m2の合計床面積を持つ大規模な新倉庫がオープンする。即日出荷に対応できる、260万点以上もの在庫を常時保有することになる。Digi-Keyは新規サプライヤーと強力なパイプラインを持っているので、引き続きサプライヤーの追加に注力し、積極的な在庫増に努める。日本での投資拡大計画もある。
2021年初頭からCOVID-19のワクチンが接種可能になるという話も出ており、エレクトロニクス業界にも世界経済にも、これ以上の混乱が生じないことを願うばかりだ。ただ、エレクトロニクス業界の成長予測に関係なく、Digi-Keyは顧客価値を高めるための投資を2021年も続けていく。
――日本でも投資を拡大していくとのことですが、具体的な計画や戦略をお聞かせください。
Ricciardelli氏 Digi-Keyにとって日本は、創業当初から非常に重要な市場だ。当社の最初のサプライヤーが日本企業だったこともあり、Digi-Keyの規律ある業務手順や習慣は、日本企業との長年のパートナーシップに由来しているものが多い。
2021年は、顧客サポートのために大阪の新オフィスに投資するとともに、日本のマーケティングチームを拡大する。2020年12月8日には、North APACマーケティングマネジャーに山下早智子氏を任命し、日本市場でのビジネスを強化すると発表した。2021年は、Digi-Keyが日本市場で大いに成長できる年になると確信している。
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提供:Digi-Key Electronics
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2021年2月12日