メディア

スマートグリッドの進化形「デジタルグリッド」がもたらす未来とは?NIWeek 2011現地リポート

世界各国でエネルギーインフラの見直しが進んでいる。米国ではオバマ大統領の掛け声でスマートグリッド化が進行中だ。日本では3月に発生した大震災の影響でエネルギー政策の見直しが迫られており、再生可能な自然エネルギーの大量導入を見据えた議論が活発化している。NIWeek 2011では、新たな時代のエネルギーシステムに取り組む研究者や開発者が未来展望や成果を披露するとともに、NI製品を適用するメリットについて語った。

» 2011年09月07日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
PR

 近代の日本において、電力の存在を一般市民が今ほど強く意識したことはなかっただろう。2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故の影響で、東京電力の電力供給能力は大幅に低下した。そして迎えた夏。政府は電力需要のピークを15%削減するという目標を掲げ、東京電力と東北電力の管内を対象に電力使用制限令を発動した。これまで「地球温暖化への対策」「低炭素社会の実現」といった掛け声をどこかひとごとのように聞いていた市民も、日常生活のさまざまな場面で節電を強いられている。

図1 図1 デジタルグリッド構想について語る阿部力也氏 東京大学で特任教授を務める。電気事業者の電源開発(J-POWER)に長く勤務した経験を持つエンジニアで、くしくも原発事故が起きた福島県の出身である。

 「3.11」を境に、日本の電力事情は一変した。その影響を受けるのは市民生活だけではない。企業は、節電や計画停電の影響で事業活動を制限されてしまう。これは経済の停滞を招き、復興の足かせになりかねない。原子力発電を推進してきた政府のエネルギー戦略も、大きな見直しを迫られている。「政府が2010年6月に策定したエネルギー供給の戦略的マスタープランでは、2030年までに原子力発電所を現在の54機から14機増やして68機とし、稼働率も現在の60%から90%まで高めるとしていた。しかし、見直しは避けられない」。こう指摘するのは、東京大学の大学院工学研究科 技術経営戦略学専攻で特任教授を務める阿部力也氏だ(図1)。

 果たして原子力から再生可能エネルギーへの移行は可能なのか? そのときに求められる電力網の姿とは? ―― 阿部教授は、NIWeek 2011のエネルギーテクノロジサミットで基調講演に立ち、独自の構想である「デジタルグリッド」に基づく電力網の未来像を語った。米国に向けた提言も盛り込まれており、世界各地から参加した聴衆が講演に耳を傾けていた。

太陽は無限のエネルギー源

 まず阿部教授は、再生可能な自然エネルギーが人類のエネルギー需要をどの程度賄えるか検証してみせた。その答えは、100%だという。

 同氏が各所の統計データなどを基に調べたところ、世界の1次エネルギー消費量が年間500EJ(エクサジュール=10の18乗ジュール)あるのに対し、原油や天然ガス、ウラニウム、石炭など旧来のエネルギー資源の埋蔵量は約6万EJ相当で、消費量の120年分という計算になる。一方で自然エネルギーは、水力資源については年間11EJ相当と少ないものの、風力資源では年間1000EJ相当が存在している。

 さらに太陽光発電については、地球上の大陸の10%の面積に発電効率が10%の太陽電池を敷き詰めたと仮定した場合に、年間1万1700EJを生み出せると試算した。これだけでも年間消費量の20倍に相当する。これが毎年生み出される。確かに、10%もの土地に太陽電池を設置するのは現実的ではないだろう。しかし太陽電池の効率は年々向上しており、「現在は20%まで改善が進んでいる」(阿部氏)。しかも太陽光は、化石燃料などとは異なり、再生可能な自然エネルギーである。「米国のエネルギー省(DOE)は、ネバダ州の砂漠に効率10%の太陽電池を100マイル(160km)四方にわたって敷設すれば、全米の電力に相当する800GW(ギガワット)を賄えると試算している」(同氏)。

 また阿部教授は、1970年代から2000年代までの30年間で、太陽電池の発電量当たりのコストが2桁近くも低下したことを示し、この傾向が続けばコストの観点からも太陽光発電に可能性があることを指摘した。

既存の電力網では自然エネルギーを生かせない

 人類にとって無限のエネルギーたる可能性を秘めた太陽光発電。しかし太陽光発電を含む再生可能エネルギーの恩恵に浴するには、乗り越えるべき課題がある。太陽光や風力に由来する再生可能エネルギーは、天候や気象による出力の変動が大きく、制御が難しいという特性を持つ。ところが既存の電力網は、そのように出力の変動が大きいエネルギー源を大量に導入できるようには設計されていないのだ。

 一般に、電力網を流れる交流電力の周波数は正常値を維持する必要がある。電力の需要(消費量)に対して供給(発電量)が不足すると周波数は低くなり、反対に供給が超過すると周波数は高くなる。それにより周波数が正常値から大きく外れると、電力網につながった発電機同士の同期がとれなくなり、送電がストップしてしまう危険性があるのだ。そこで日本の電力会社は、この周波数の変動を検出し、石油火力発電などの出力を調整することで、需給を常にバランスさせている。しかし前述のような特性を持つ再生可能エネルギーが電力網に大量に流れ込めば、この変動を抑え切れなくなってしまう。

「スマートグリッド」だけでは不十分

 打ち手の1つは、電力網の区域(系統)と区域の間をつなぐ電力回線の容量を増やすことだ。そのようにして系統間の連系を強化すれば、供給が超過している系統から不足している系統に向かって生じる電力潮流の許容量を拡大できる。それにより電力網全体で見れば大きな変動に対しても需給のバランスがとれるようになるので、周波数を正常値に維持しやすくなる。

 だが、これには代償が伴う。このように系統間の連係を強化すると、大規模停電のリスクが高まってしまうのだ。阿部教授は、米国の北東部で2003年8月に発生した大規模停電を例に挙げ、次のように指摘した。「この停電の引き金は、たった1つの古い変圧器だった。同期した電力網同士が互いに影響し合い、カスケード状に停電範囲が拡大し、大規模な停電に発展するというメカニズムだ。太陽光や風力のように変動の大きいエネルギー源も、同じように電力網に影響を与える。小さな障害が次の障害を招き、それが広がって大規模な停電を引き起こしてしまう」。

 そこでもう1つの打ち手として今注目を集めているのが、旧来の電力網に情報通信技術を融合させる次世代電力網「スマートグリッド」である。特に米国では、オバマ大統領が打ち出した「グリーン・ニューディール政策」で目玉の1つに位置付けられており、政府の支援も手厚い。スマートグリッドでは、各種の電力測定を実施し、ネットワーク経由でデータを送信する機能を備えた高機能電力メータ(いわゆるスマートメータ)を導入する。これで需要側の情報を詳しく収集して供給の調整に役立てたり、障害発生時に原因を素早く特定して復旧を迅速化したりすることが狙いだ。

 この仕組みをうまく生かせば、需要をある程度は制御できるだろう。例えば、需要の変動に応じて電気料金を動的に変えたり、電力を消費する機器の動作モードを直接制御したりといった具合だ。しかし、「脱・原子力」や「脱・石油火力」をかなえるような大規模の再生可能エネルギーが電力網にもたらす変動を吸収するには、この程度ではまったく足りない。もっと抜本的な打ち手が求められる。

電力網をデジタルネットワーク化せよ

 そこで阿部教授が提唱するのが、独自に構想した「デジタルグリッド」である。情報のネットワークであるインターネットやLANのアーキテクチャを、電力網に持ち込むというコンセプトだ(図2)。

図2 図2 デジタルグリッドの全体像 互いに独立し、自立的に運転できる細分化された電力系統(セル)同士が、デジタルグリッドルーターと呼ぶ装置を介して連系し、大規模な非同期電力網を構築する。セル間で動的に電力を融通し合うことが可能だ。出典:阿部力也氏

 デジタルグリッドでは、旧来の巨大な同期電力系統を小さな電力系統(セルと呼ぶ)に細分化し、セル間で動的に電力を融通する。セルは、発電装置と蓄電装置、負荷からなり、自立的に運転できる最小単位の系統を指す。各セルはそれぞれ非同期に運転し、互いの周波数のズレを許容できる高い独立性を確保する。セルのサイズは、地方や、州もしくは都道府県、市、工場、家庭といった具合に、さまざまな大きさに設定することが可能だ。こうしたセルを数多くつなぎ合わせて非同期に連系させることで、大規模な分散型の非同期電力系統を構築する。1つのセルは複数のセルと接続でき、1つのセルの中に複数のセルを組み込む、入れ子構造を採ることも可能だという。

 こうしてセル同士を互いに独立させておけば、再生可能エネルギーの導入を進めやすくなる。あるセルで再生可能エネルギーの出力が大きく変動しても、その影響が他のセルに波及しにくく、大規模な連鎖停電事故のリスクを抑えられるからだ。

 阿部教授はこのデジタルグリッドを「電力のインターネット」と表現する。その理由は、ネットワークのアーキテクチャが似通っているというだけではない。デジタルグリッドでは、送配電系統を能動的に制御することで、あたかもインターネットが電子メールをあるPCから遠く離れた別のネットワークに所属するPCに届けるように、電力をあるセルから任意のセルへと自在に送れるようになるという。これまでに提案されているスマートグリッドでは、送配電系統を受動的にしか制御できないため、こうした機能は実現できなかった。

実現のカギを握る「電力のルーター装置」

 このコンセプトを実現するカギとなるのが、電力のルーターと呼ぶべき装置だ。阿部教授が考案した「デジタルグリッドルーター(DGR)」である。各セルの電力ポートごとに組み込まれ、他のセルの電力ポートに取り付けられたDGRと電力回線を介して接続する。そして、セル間の電力の流れを制御するとともに周波数の差異を吸収し、実際に電力をやりとりする役割を担う。

 DGRの実体は、複数のACポートを備えた双方向DC-ACコンバータである。複数のセルとの間で、経路を任意に切り替えて交流電力をやりとりすることが可能だ。例えばポートA、ポートB、ポートCと3つのACポートを備えるDGRで、各ポートに別々のセルが接続されている場合、ポートBにつながったセルからポートCに接続されたセルに電力を送るには、ポートBで受け取った交流電力をAC-DC変換でいったん直流電力に変換し、再度DC-AC変換を施してからポートCに出力する。

 このDGRの最大の特徴は、インターネット通信機能と、コンピュータによる制御機能を搭載していることだ(図3)。それによりデジタルグリッドのコンセプトを実現する。具体的にはこうだ。DGRの各ACポートには、インターネットのIPアドレスに相当する個別のアドレスを与えておく。あるセルのDGRから他のセルに電力を送る際には、目的地とするセルに組み込まれたDGRの特定のACポートのアドレスを含む電力情報を、電力本体に同期させて流す。隣接したセルのDGRは、電力情報を解析し、その電力が自分のセルに向けて送られたものかどうかを判断する。もしそうでなければ、隣接するまた別のセルにその電力を流す。これを繰り返すことで、最終的な送信先に電力が届くという仕組みだ。阿部教授は、DGRの内部でこうした制御を担うコンピュータについて、「セルのサイズが家庭単位であれば、NIのNIシングルボードRIOを利用できるかもしれない」と述べた。

図3 図3 デジタルグリッドルーターが「電力のインターネット」を実現 デジタルグリッドルーター(DGR)のACポートそれぞれに個別のアドレスを付与しておく。あるセルから別のセルに電力を送る際には、このアドレスを宛先として指定し、PWM変調された電力本体の前後に電力情報(図中のIPヘッダーとIPフッター)を付加して電力回線に流す。回線につながったDGRがそれぞれこのアドレス情報を判別して経路を切り替えることで、最終的な宛先のセルに電力を送り届ける仕組みだ。出典:阿部力也氏

電力の識別が自由市場を開く

 こうして実現するデジタルグリッドでは、上で述べたDGRの機能によって、電力網を流れるある単位電力が「いつ・誰が・どこで・どうやって発電したものか」を識別できるようになる。

 旧来の電力網では、いったん電力網に流れ出した電力はすべて同質化されてしまう。連続的で切れ目の見えない、「アナログ」的なエネルギーだったといえる。この「アナロググリッド」では、供給される電力の価値は、品質を除くとエネルギー量の多寡しかなかった。

 それに対しデジタルグリッドでは、ある単位電力にそれぞれ識別情報が付与され、他の電力と区別可能な「デジタル」的なエネルギーとして電力網の中を移動させられるようになる。そうすれば、単位電力ごとにカーボンフットプリントや再生可能エネルギーの利用割合といった価値を付加することが可能になり、その価値を「商品」として取引できるようになると阿部教授は語る。「電力の世界に真の意味での競争市場経済が持ち込まれ、効率的な成長が始まる。大きなパラダイムシフトになるだろう」(同氏)。

LabVIEWが電力サービスの基盤ソフトウェアに

 さらに阿部教授は、このようなデジタルグリッドを築くためにもう1つ重要な要素があると指摘した。デジタルグリッドを構成する複数の階層を制御する基盤ソフトウェアである。電力事業者のシステム上で稼働し、デジタルグリッドを介して取引される電力商品のトランザクションやグリッドの制御を担う高位ソフトウェアと、DGRの内蔵コンピュータ上で動作し、電力シーケンスの制御などを受け持つ低位ソフトウェアである(図4)。

図4 図4 基盤ソフトウェアが重要になる デジタルグリッドでは、電力の配送や商品としての取引を管理したり制御したりする基盤ソフトウェアが重要な役割を果たすようになる。そのソフトウェアの1つとして有力視されるのがNIのLabVIEWだ。出典:阿部力也氏

 また同氏は、「制御システムにおいてもパラダイムシフトが必要になる」との見方を示した。「独自設計のプリント基板で構成したアナログ方式の制御システムは、電力の制御と計測を担う『マザーボード』と『パワーボード』で置き換えられるだろう。そして、旧来はプリント基板にハードウェアとして実装されていた機能を、ソフトウェアが代わって実行するようになる」(同氏)。さらに同氏は、そうしたソフトウェアの1つとして、「NIのLabVIEWは、極めて大きな役割を果たす可能性がある。LabVIEWを使うことで、電力に関連した新しいサービスを誰もが作り出せるようになるかもしれない」と述べている。

その他のテクニカルセッション 〜 次世代の鉄道変電所監視システム

 NIWeek 2011のエネルギーテクノロジサミットでは、スマートグリッドの話題の他にも、テクニカルセッションで東芝の佐竹信彦氏が発表した、鉄道の変電所の監視システムにNI製品を適用する取り組みが参加者の関心を集めていた(図5)。

図5 図5 東芝が鉄道の電力設備監視にNI製品を適用 社会インフラシステム社 電力流通システム事業部 鉄道電力システム技術部 鉄道電力システム第二担当 主務の佐竹信彦氏が講演した。

 佐竹氏によると、同社の顧客である鉄道会社が変電所の監視システムに求める要件は大きく3つある。1つ目は信頼性だ。「鉄道会社が最も重視するのは、安定した運行を維持できることだ。もし事故や故障が発生したら、その状態から迅速に復旧するとともに、すぐに原因を検証することが求められる」(同氏)。2つ目は、鉄道では電車の運行によって電力供給側から見た負荷が急激に変動するため、その過渡的な現象に対応できなければならない。「故障によって生じる電流波形と、通常時の電車の負荷による電流波形を区別することが難しい場合もあるほどだ」(同氏)。このため監視システムは、10kサンプル/秒を超えるサンプリング速度を備える必要があるという。

 3つ目は、変電所内のさまざまな設備の状態を一元的かつ同時に把握したいという要望だ。変電所内の監視対象は多岐にわたる。具体的には、高電圧の遮断器や、変圧器、中圧スイッチギヤなどである。さらに、単一の変電所のみならず、線路に沿って数十kmごとに設けられる複数の変電所から情報を集約し、総合的な解析を実施したいというニーズもある。

鉄道の電力設備を見守る目も「スマート」に

 そこで東芝は、これらの要件に応えるべく、高速かつ高精度のデータ集録に基づく総合的な監視システムを開発しており、そのシステムにNIのハードウェア製品とソフトウェア製品を活用しているという。ハードウェア製品は、組み込み型の制御/データ集録装置などを利用しており、「100チャネルを超える計測ポイントから、10kサンプル/秒を上回る高い速度で、リアルタイムにデータを集録できる」(佐竹氏)と評価した。

 さらに、NIのソフトウェア製品のメリットについても、「解析機能の開発に適用しており、短期間で顧客の要求に応えられるようになった。また、あらかじめ用意されているフーリエ解析のライブラリを使って、供給電力の電流波形を周波数領域で分析することで、通常時の電流波形と異常時に表れる特定の周波数成分を持った電流波形を従来よりも容易に判別することが可能になる」(同氏)と述べた(図6)。

図6 図6 高精度のアナログ計測と解析で故障を見つける 短絡などの故障が発生すると、高速サンプリングでそれを検知し、電力回線の異常波形(電圧と電流)を記録する(上図)。また、電力波形をフーリエ解析し、周波数領域で分析することで、異常な波形と通常時の波形を区別できる(下図)。出典:東芝

 佐竹氏はこうしたメリットに加えて、東芝が以前にNI製品を用いずに構築した監視システムとの比較も語った。「以前は、1つの変電所に複数の監視システムが混在しており、装置間の接続が非常に複雑だった。NI製品を導入したことで、全ての監視システムを単一のネットワークで結べるようになり、シンプルにできた」(同氏)。また、NI製品を活用することで、顧客である鉄道会社が変電所システム全体の状態を一元的に把握できるグラフィカルなユーザーインタフェースを構築できた。ユーザーはその単一のインタフェースから、故障時の電流波形や、電流波形のフーリエ解析結果を確認できる他、故障の個所や状態、振動解析、シーケンス図、変電所の運転履歴といったさまざまな情報にアクセスできるという。

 このように電力設備の状態を「見える化」する技術は、より規模の大きな電力システムであるスマートグリッドや、先に紹介した阿部教授が掲げるデジタルグリッドでも不可欠な要素である。NIWeek 2011のエネルギーテクノロジサミットでは、これからのエネルギーアプリケーションにNI製品が果たす役割と期待が改めて浮き彫りになったといえよう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2011年9月30日

Sponsored by

EE Times Japan Special

頭に浮かんだアイデアをグラフィカルな開発環境でブロックダイアグラムとして記述すれば、処理内容をソフトウェアで定義できるハードウェアにそれが実装され、システムができあがる――。NIはこれまで主に、テスト/計測の分野でこのコンセプトを具現化してきた。同社がこのコンセプトの中核を担うグラフィカル開発環境「NI LabVIEW」を世に出してから25年。今その適用範囲が大きな広がりを見せている。次の25年に向けて同社が描く展望とは? その展望を実現する新たな製品にも注目したい。

世界各国でエネルギーインフラの見直しが進んでいる。米国ではオバマ大統領の掛け声でスマートグリッド化が進行中だ。日本では3月に発生した大震災の影響でエネルギー政策の見直しが迫られており、再生可能な自然エネルギーの大量導入を見据えた議論が活発化している。NIWeek 2011では、新たな時代のエネルギーシステムに取り組む研究者や開発者が未来展望や成果を披露するとともに、NI製品を適用するメリットについて語った。

NIWeek 2011でひときわ多くの参加者を集めたセッションの1つが、家庭用ゲーム機のコントローラからスマートフォン、お掃除ロボットまで、消費者に身近なガジェットを「ハック」するというものだった。このセッションが、ロボット技術にフォーカスしたテクニカルサミットに設けられた理由とは? 「ハック」から、ロボット開発の要諦が見えてくる。

人類はどこから来たのか、今をどのように生きるのか、そしてこれからどこに向かうのか――。大規模な物理実験から高度な先進医療の分野まで、先端科学の挑戦が日々続いている。NIWeek 2011に設けられた「Big Physics Symposium」では、日本が世界をリードする先端科学領域の講演が参加者の関心を集めていた。さらにNIWeek 2011の会期中に受賞者が発表されたテクニカルアプリケーションのコンテスト「Graphical System Design Achievement Awards」でも、日本発の先端医療科学が脚光を浴びた。

ナショナルインスツルメンツが本社を構える米国のテキサス州オースチンで毎年8月に開催する同社最大のテクニカルイベント「NIWeek」。その大きな見どころの1つが展示会だ。広大な会場にはNIの他、同社のアライアンスパートナー(顧客要件に応じたカスタムシステムを構築するインテグレータ企業)や、LabVIEWプラットフォームに対応するツールやモジュールを提供するサードパーティベンダー各社がブースを構え、最新の製品や事例が所狭しと並ぶ。今回の「NIWeek 2011」では、日本の出展企業が集合した「ジャパンパビリオン」が設けられ、世界中から集まった参加者の注目を浴びていた。本稿では各社の出展内容に加え、NIの展示から見逃せないデモも紹介しよう。

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.