アナログ・デバイセズは2014年、パートナーなどと構成するエコシステムを活用したシステム提案と、顧客との接点強化をさらに進める。日本法人社長の馬渡修氏は、「2014年は当然、2013年を上回る業績を残し、少しでもプラス幅を広げていく。そのためにも、2014年は、顧客との接点をより強めて行きたい」と抱負を語る。
――2013年10月期通期業績を発表されました。
馬渡修氏 2013年10月期は、欧州経済の低迷や中国での設備投資の鈍化などが影響し、当初の予想を下回る結果となった。日本市場に限った場合、円ベースでは前年比プラス成長を確保できた。また、四半期ごとに業績は回復、成長していることは、新年度である2014年10月期、2014年に向けて明るい兆しでもある。
用途分野別に見ても、明るい兆しは多い。特に、自動車向けは2013年10月期も2桁伸長を達成した。過去5年の年平均成長率は約20%に達しており、急拡大が続いている。
産業機器分野も、モーター制御関連や省エネルギー関連システム向けへのデザインインは好調であり、通信インフラ向けでも、LTEやLTE-Advanced基地局用RF関連領域で高いシェアを維持できている。近年、注力を続けている医療分野は、デザインインから売り上げ計上までの期間が長いものの、デザインイン自体は好調を維持しており、将来に向けた期待がより一層拡大している。
――世界的に市場が低迷している民生機器向けはいかがですか。
馬渡氏 ご存じのように、スマートフォン/タブレット端末などが好調な影で、テレビやデジタルカメラなどの民生機器分野は苦戦が続いている。当社としては、よりハイエンドな領域に特化した民生機器分野をフォーカスする。例えば、デジタル一眼カメラやハイエンドオーディオ機器、放送機器などの分野に重点を置いていく方針だ。
――2014年は、明るい兆しが多く、2013年を上回る良い年となりそうですね。
馬渡氏 当然、2013年を上回る業績を残し、少しでもプラス幅を広げたいと考えている。そのためにも、2014年は、顧客との接点をより強めて行きたいと考えている。
――顧客との接点強化策とはどのようなものをお考えですか。
馬渡氏 大口顧客だけでなく中小規模のメーカーも含めた全ての顧客を対象に、あらゆる側面から接点強化を、販売代理店、パートナー企業とともに実施していきたい。
昨今、アナログ技術が高度化するとともに、顧客側のアナログ回路設計リソースが不足する傾向が強くなっている。その中で、性能が優れたデバイスを提供するだけでは、使いこなしてもらうことは難しい。そのため、性能の優れたデバイスに、周辺デバイス、ソフトウェアを組み合わせたリファレンス(評価)ボードなど、よりシステムレベルでの提案が必要になっている。
システムレベルでの提案には、よりハイレベルな技術サポートを提供していくことが重要になる他、顧客要望を的確に把握することも大切になり、これまで以上に接点を強化しなければならない。当社や販売代理店の技術スキルの向上を図るとともに、(中小規模メーカーなどロングテール市場である)「コアマーケット」への接点強化を目的にしたWebサイトにおける日本語コンテンツの充実やオンラインを活用したツール提供やサポート体制をより一層強化したい。
――システムレベル提案に向けた評価ボードなどの作成状況はいかがですか。
馬渡氏 基本的に新製品でリファレンスボードなどを用意し、評価しやすい環境を整えている。その上で、それらリファレンスボードを使ってより規模の大きいシステム開発が行えるよう、パートナー企業のボードやソフトウェアとの連携性を高めている。
例えば、大手FPGAベンダーのザイリンクス社などと も連携し、互いのリファレンスボードを生かしたソリューション作りを行っている。最新のインタフェース規格JESD204Bに対応するソリューションも提供しており、既に国内メーカーのお客様にも採用いただいている。また、ルネサス エレクトロニクス社とは、当社の高性能アナログICとルネサスのマイコンを中心とした製品を組み合わせたソリューション情報を提供する「Solution- Edge」を協働運営している。両社のリファレンスボードを 簡単に接続するインターポーザボード「SE SP-01」を製品化したところなので今後に期待したい。このように、2014年もパートナーと連携したエコシステムによる、システ ムレベル提案を強化していく方針だ。
また、よりシステムとして完成した「プラットフォーム」を開発する専門部署を新設し、RFレーダーやセンサーインタフェースなど現在8つのアプリケーションに向けたプラットフォームの開発を行っている。2013年10月にはその第1弾として、70MHzから6GHzまでという幅広い周波数帯をカバーするソフトウェア無線向け高集積型RFトランシーバ「AD9361」をベースにしたプラットフォームを市場投入している。2014年はこうしたプラットフォームを数多く投入する予定だ。
――競合他社の多くもシステムレベル提案に注力し、一部の総合半導体メーカーでは、自社製品だけでシステム構築するなどの試みを行っています。ADIとしてのシステムレベル提案はどのあたりに独自性、特長がありますか。
馬渡氏 当社は高性能アナログICとともに、MEMSセンサー、DSPなども展開し幅広いソリューションが提供できる体制にある。しかし、1社で全ての市場要求に応えることには限界があり、パートナーを含めたエコシステムとして提案することが現実的だ。1社単独の固定されたものよりも、充実したエコシステムの中から、最適なハード、ソフトを選択できる方が、より良い結果が得られるだろう。
ただ、エコシステムによる提案では、構築したシステムに対し誰が責任を持つのかが不明瞭になるという欠点があるのも事実だ。ADIとしては、エコシステムを活用しながらもADIとして試験し、保証できる完全なシステムソリューションを増やしていく方針だ。
加えて、日本法人でも、日本市場に応じたエコシステム、ソリューションの構築を行っている。例えば、特定小電力無線分野を中心に、国内10社ほどのモジュールメーカーと協業しており、それらのメーカーからADIの高性能アナログICを活用したよりシステムソリューションが提供され る環境も整っている。
――成長が続いている自動車向けビジネスの2014年の展望をお聞かせください。
馬渡氏 自動車市場では、車載情報機器間やECU間を高速に結ぶインタフェース「APIX」や高速バス規格関連製品をはじめ、MEMS技術を応用したデジタル絶縁デバイス「iCoupler」が一層伸長する見込みで、年間2桁成長を維持できそうだ。将来に向けては、全ての車種への搭載が見込まれるミリ波レーダーシステムに対し高周波無線技術を用いたRF製品のデザインイン活動などを積極的に行っていく予定だ。
――成長市場として、医療分野への参入を図る半導体ベンダーも増加していますが、ADIとしての医療分野でのビジネス戦略はどのようなものですか。
馬渡氏 当社の医療向けビジネスの歴史は長い。特に、画像診断装置を中心に医療機器用のデータコンバータ、アンプなどでは高いシェアを獲得している。
今後は、もう少し個人ユースの医療端末分野、特にバイタルサインモニター向けのヘルスケア分野にも製品を積極展開していきたいと考えている。当社のコア製品であるデータコンバータ、アンプ、RF製品に加え、低消費電力な設計を可能とするMEMSセンサーや光センサー、高精度測定を実現した新世代の高集積度デバイスなどを提案していきたい。
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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日