トレックス・セミコンダクターは、国内半導体企業としては数少ない電源IC専業メーカーだ。ICのセミカスタム化などを柔軟に行える体制やサポート力を強みに特に産業機器/車載向けビジネスで事業を拡大している。社長の藤阪知之氏は「2014年は産業機器、車載向け事業をさらに広げ、年間10%前後の売り上げ成長を目指す」と語る。
――2013年、ビジネスの状況はいかがでしたか。
藤阪知之氏 今期、2014年3月期に関しては当初の想定を上回るなど、順調だといえる。当社の売上高の約2/3はドルベースであり、昨今の円安傾向が大きく貢献している。同時に近年取り組んできた原価低減策や、注力分野である産業機器、車載向けビジネスの拡大の効果で、対前年比で10%近い増収増益を達成できる見込みだ。
――近年、産業機器/車載向けビジネスへの注力を進めておられます。その狙いと昨今のビジネスの概況をお教えください。
藤阪氏 当社は電源IC専業メーカーとして、特に高性能/高効率/低ノイズの電源ICを超小型パッケージで実現する技術を強みの1つとして、デジタルカメラや携帯電話機、PCなどといった民生用モバイル機器を中心に事業を展開してきた。しかし、近年は民生機器市場は価格競争が激しく、利益を確保した持続的成長を実現することが難しくなってきている。そこで、当社は3〜4年ほど前から、民生機器市場に対しては、従来以上に独自性を発揮した高付加価値製品の提供に重点を移してきた。それと同時に、これまでの技術力を生かし、産業機器や車載向けの中高耐圧品の拡充を進め、新たなビジネス立ち上げを行ってきた。
車載向けでは、カーナビなど車載情報機器向けで着実に受注を獲得し、2014年3月期は対前年比7〜8%の増収を達成できる見込みだ。13年3月期は8%程度だった全社売上高に占める車載向け売上高比率も10%を超えるまでに高まる。
産業機器向けは、中高耐圧品の製品拡充とともに、代理店を含めた販売サポート体制の強化策も功を奏して、今期は10%以上の大幅な成長を達成できるところにきた。売上比率も今期は25%程度まで拡大する見込みで業績に大きく寄与している。
――産業機器、車載向けビジネスの拡大の要因としては製品拡充や販売チャネル強化などを挙げておられますが、国内外のアナログICベンダーも注力する市場であり、競争は激しいと思います。その中で、トレックスとしてシェア向上を実現できた要因はどの辺りにありますでしょうか。
藤阪氏 当社は、国内では珍しい電源ICに特化したメーカーであり、従業員も電源ICを専門にした集団となっている。それ故、電源回路/システムに精通する技術者/営業担当ばかりであり、システムレベルの提案、技術支援が行える体制が当社の強み。
加えて、各システムの要求仕様に最適化するためのICのセミカスタム化にも柔軟に対応できるという点も当社の大きな特長となっている。一般的に、ICのセミカスタム化は製品価格の上昇や収益圧迫の要因となるため、電源ICメーカーとしては対応を嫌がるケースが多い。当社の場合、設計当初からセミカスタムに柔軟に対応できる仕組みを入れ込んでいる他、ICの特性を任意に変更できる独自レーザートリミング技術なども構築できている。そのため、少量生産の案件でも、製品価格を抑えながら、より顧客にとって最適な電源ICを提供できる体制が整っている。
これらのサポート力、セミカスタム対応力が、徐々にではあるが、産業機器/車載市場にも浸透、評価されてきた結果、シェアアップが実現できていると思う。さらに当社の強み、特長の認知、理解を深めれば、さらなるビジネス拡大が見込めると考えている。
――2014年の事業戦略について、お聞かせください。
藤阪氏 引き続き、産業機器、車載市場での事業を広げていくことと、民生分野での高付加価値製品の比重をより高めていくことに重点を置きたい。
――産業機器/車載市場向けた製品開発戦略をお教えください。
藤阪氏 2013年同様、中高耐圧品のラインアップを拡充していく。現在、40V耐圧プロセスでの量産を実施しているが、2014年は60V耐圧プロセス技術の開発を加速させ、さらに高電圧、大電流対応製品を投入したい。車載向けには、お客さまの要望にさらに応えるため、高温動作対応やさらなる品質強化に向けた技術開発を実施していく。さらに、産業機器/車載市場に限らないが、当社製品と補完関係にある半導体製品ベンダーとの業務提携を行い提案の幅を一層広げていく計画も進めている。
――半導体ベンダーとの業務提携について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
藤阪氏 2013年に、海外のディスクリート半導体ベンダーと業務提携を結んだ。提携先とは、互いの製品を融通し、共同での拡販や製品への混載を行っている。これにより、当社は電源ICだけでなく、周辺のディスクリート半導体も同時提案できるようになり、ビジネスの幅や製品ラインアップの強化が見込める。2014年は提携に基づいた製品投入も本格化する見込み。またパッケージ技術などの共同開発も展開していく。
さらに2014年は、組み込みプロセッサベンダーなど電源/アナログICベンダー以外の半導体ベンダーとも連携し、よりシステムレベルでの提案を行いやすい体制作りを進めていきたいと考えている。
――独自性のある高付加価値製品の開発、展開状況はいかがですか。
藤阪氏 高い放熱性で小型、低背化を実現するパッケージ「Ultra Small Package」(USP)や高速過渡応答技術「HiSAT-COT制御」など、独自技術は数多い。その中でも、電源ICチップとコイルを一体化したDC-DCコンバータ「マイクロDC-DC/XCLシリーズ」への評価が高い。小型で周辺ICを削減できる電源ICチップに、さらにコイルを一体化させたことで、一層の電源回路の縮小が図れる他、ノイズを抑制できるメリットもあり、モバイル機器から車載機器まで多くの引き合いを得ている。2013年は、降圧型に加え昇圧型を製品化し、2.0A出力までの大電流対応を進めた。2014年はさらに大電流、高耐圧への対応を進めるとともに、HiSAT-COT制御など独自機能、特性を備えた電源ICチップとの組み合わせを増やし、マイクロDC-DCの拡充を進めていく予定だ。
――LED照明用駆動IC分野への参入も進められています。
藤阪氏 現在は、スタンダードともいえる照明用駆動ICを量産し、一部顧客に向けての提供を開始した段階。顧客からのフィードバックなども得ながら、技術ノウハウを高めつつある状況だ。まもなく、LED駆動用回路をオンライン上でシミュレーションできるツールなども公開し、より充実したサポート体制も提供できる見込み。2014年は、当社独自の機能、特性を実現した製品を開発、投入し、より本格的なビジネス立ち上げを実現したいと考えている。
新規ビジネスとしては、市場拡大が見込まれるセンサー分野に対し、センサーやセンサー関連製品も開発、投入していきたいと思っている。
――最後に2014年の業績見通しをお聞かせください。
藤阪氏 経済環境に関しては、不透明な部分があり予測は大変難しいが、今以上に市況は悪化しないとみている。ビジネスについては、注力している産業機器、車載向けで2013年と同等の成長率を維持する計画であり、維持できる見込みだ。全社売上高としても、市況に左右されることなく、10%前後の成長を目指していきたい。
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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日