リニアテクノロジーは2014年、高性能アナログICに特化する中で、より大きな付加価値を生む「先端製品群」の拡販を強化する。日本法人代表取締役の望月靖志氏は「2014年は、顧客の“期待以上の価値―Value Beyond Expectation―”を提供する“先端製品群”の拡販により、飛躍的に顧客価値を向上し、顧客のグローバルな勝利につなげる」と語る。
――2013年はどのような1年でしたか?
望月靖志氏 2013年は良い1年だった。日本国内についてはアベノミクス効果からか、2013年5月辺りから月を追うごとに良くなってきている。円安により輸出関連企業の利益が上昇し、それが研究開発や設備への投資につながっており、歯車が良い方向に回り出した。特に、すそ野の広い自動車業界は堅調であり、中小企業も含め、全般的に市況は回復してきている印象だ。通信インフラも、スマートフォン普及に伴うデータ量の増大などにより投資は回復傾向にある。
当社が注力している自動車、産業機器、通信インフラ/サーバ・コンピュータの各分野全てで好調だった。
――2013年秋には、新たな試みとしてアナログ技術者向けのイベントを日本で開催されました。
望月氏 10月30日に、世界でトップクラスのアナログ・グル(アナログの巨匠の意)であるロバート・ドブキン氏(弊社のCTO:最高技術責任者)やスティーブ・ペトケビッチ氏(弊社のパワー製品群のGM)、東京工大の松澤昭先生、東芝の板倉哲朗氏などを招聘し、“アナログ・グルとの集い”を東京で開催し、日本全国から420人のアナログにかかわる技術者、経営者、アカデミック分野にかかわる方々に参加頂き盛況を得た。また、12月3日には、弊社が無償で提供しているアナログ電子回路シミュレータ「LTspice」の“ユーザーの集い”も東京で開催し、日本全国から340人のアナログ技術者に参加して頂いた。これらのイベントは、日本のアナログ技術者の育成を狙ったものだ。
1970年代ぐらいまでのアナログの時代、日本の電機業界は世界を席巻した。そして、1980年代からのデジタルの時代になり、日本もデジタルに注力した。しかし、しばらくの間は、競争力を維持したものの、その後、徐々に日本の電機業界は世界的な競争力を失っていった。これは、デジタルの技術革新が一定水準に達し、価格競争に入った時点で競争力を失っていったということだ。
デジタル自体の技術革新が一定水準に達した後、デジタルを最大限に生かすには、デジタル特性を引き出すためのアナログ技術が重要になる。つまり優れたシステムを作るには、優秀なアナログ技術者が不可欠である。しかし、日本ではアナログ技術者が不足している。アジアの企業が価格中心の製品で台頭してきた現在、日本企業は付加価値製品で対抗し、打ち勝っていかなくてはいけない。この先、日本の電機業界の競争力を高め、半導体需要を拡大させるには、アナログ技術者の育成が不可欠だと考えている。そのための「うねり」を作り始めたのが2013年だったと考えている。
――2014年以降もアナログ技術者の育成支援を続けられるということですね。
望月氏 もちろん2014年以降も継続して行っていく。イベント開催だけでなく、日頃からさまざまな支援を行っていく。例えば、見えないアナログを可視化する電子回路シミュレータであるLTspiceは教育にも最適なツール。既に複数の国内大学から教育現場で活用したいとの打診を受けており、講師の派遣なども含めサポートしていくつもりだ。もちろん、企業からの要請があれば、支援したいと考えている。
ただ、アナログ技術者の育成は、時間を要する。アナログエンジニアリソースが不足する開発現場に対しては、技術者がいなくても高性能なアナログを構築できる製品の提供という面からも支援を行ってきたい。
――開発負担を軽減する製品とはどのようなものがありますか。
望月氏 その代表的な例が、「μModule」だ。外見は、10〜20mm角程度の半導体デバイスだが、中身は、半導体チップに、コンデンサやコイルなど受動部品も含めたモジュールになっている。DC-DCコンバータを搭載した電源系の製品であれば、このμModuleに出力電圧を決める抵抗と入出力コンデンサを追加するだけで、高精度/高効率な電源を構築できる。開発期間も実装面積も大幅に削減できるなどの利点がある。既に電源系を中心に、絶縁回路、A-Dコンバータ駆動回路を1パッケージ化した製品など50種を取りそろえている。また、μModuleを使うことにより、基板面積を大幅に削減し、飛躍的なコストダウンを実現している顧客も多い。このように顧客が期待する以上の価値を提供している。
2014年は、飛躍的な顧客価値をもたらすμModuleなどの製品を、“先端製品群”と位置付け、拡販を図っていく。
――他の“先端製品群”について教えてください。
望月氏 1つがPSM(パワー・システム・マネージメント)製品。電源関係の遠隔監視やソフトによる各種設定変更が行えるデジタル電源の利点と、高効率/高精度のアナログ電源の利点を兼ね備えたデジタル制御型アナログ電源ソリューションだ。PSMを用いれば、複雑な電源設計が簡単にでき、また出力電圧の上限値/下限値の負荷を与えて試験するマージニングテストなども自動化でき、生産効率も高められる。また、システムが故障した際に電源関係のパラメータのログが自動的にE2PROMに保存されるので、品質解析などの時間も大幅に短縮できる。このような顧客が期待する以上の価値を提供することによって需要が急拡大している。
2013年に発売をスタートしたBCDプロセスを採用したレギュレータシリーズも、暗電流を2.5μAに抑えながら96〜98%という高効率を実現するなど新たな“先端製品群”として期待している。その他にも、イーサネット経由で90Wの大電力を供給できる「PoE++」関連製品や低消費電力/高信頼を特長とした無線モジュール(ダスト・ネットワークスブランド)、高シェアを維持しているEV/HEV向けのバッテリ・マネージメントIC、超高速逐次比較(SAR)型A-Dコンバータなどがある。
――2014年、“先端製品群”の拡販以外に計画されている事業方針はありますか。
望月氏 “期待以上のモノづくり”とは、製品のデータシートのスペックの保証はもちろんのこと、顧客の製品の開発、量産、End of Lifeまでの全てを一貫してサポートするということだ。顧客の製品開発にあたっては、迅速なタイムツーマーケットを実現させるための充実した技術サポート、顧客の量産にあたっては、品質保証はもちろんのこと、ダイバンク方式による一貫した短納期を実現、またマルチファブ方式によるBCM(事業継続管理)体制を確立している。さらに、顧客の製品のEnd of Lifeまでサポートするために、製品のディスコン(製造中止)を行わないというポリシーをもっている。顧客から期待されている以上のモノづくりは、会社設立以来、30年以上に渡って、会社のモノづくりの中核を成しており、これにより、顧客のさらなる信頼を獲得して行きたい。
――2014年の展望をお聞かせください。
望月氏 産業機器、通信インフラ市場は投資の回復傾向が続き、自動車市場も堅調だろう。特に、自動車市場の電子化は、1日に例えるならばまだ午前9時の状況。これから、まだまだテクノロジーは進化する段階であり、当社にとってビジネス機会はとても多い。
2014年は、2013年の良い流れが続く。他社にはまねできない、顧客が期待する以上の価値を提供する高性能アナログ製品と、顧客が期待する以上に価値のあるモノづくりをさらに強化して、日本法人として2014年も、2桁%台の成長を実現したい。
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提供:リニアテクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日