ラティスセミコンダクター(以下、ラティス)は、他のFPGAベンダーと一線を画し、モバイル機器、産業機器、通信機器市場に共通する“小型・低価格・低消費電力”のニーズに応えるFPGAを展開する。ウェアラブル端末にさえ搭載可能な次世代FPGA製品の開発にも着手し、民生機器のみならず、「産業機器、通信機器でも、評価が高まりつつある」というラティスの製品・技術に関して、日本法人 社長の吉田幸二氏に聞いた。
――ラティスの強みを教えてください
吉田氏 ラティスは進化する市場の要求に適合する、カスタマイズ可能なFPGAソリューションを提供しています。最新のFPGAはモバイル機器向けを中心に、小型化、低コスト、ローパワーの技術を一層進化させ、その技術を産業機器やネットワーク機器に向けたFPGAにも展開しています。そして、「タイム・ツー・マーケット」というお客さまのニーズにも応えています。
――2014年第1四半期(1〜3月)の業績はいかがですか。
吉田氏 好調に推移しました。売上高は966万米ドルで、2013年第4四半期(10〜12月)に比べて約8%増加、前年同期(2013年1〜3月)比で35.7%も増加しました。モバイル機器などコンスーマ機器向けが好調に推移したことが主要因です。分野別の売上比率は、コンスーマ機器向け、ネットワーク機器向け、産業機器向けがほぼ1/3ずつとバランスが取れています。
――最近もさまざまな企業がラティス製品の採用を決めていますね。
吉田氏 Google社は、モジュール型スマートフォン設計に当社のFPGAをリファレンスデザインに採用しました。Helion社は、産業およびヘルスケア機器向けにFPGAベースのHDカメラソリューションを発表しました。さらに、FPGAをベースとしたUSB3ビデオブリッジやシングルチップHMIリファレンスデザインなどが各社から展開されています。
――モバイル機器向けが好調です。今後も高い成長率が続きますか。
吉田氏 ラティスは2012年末にシリコンブルー社を買収し、そのテクノロジーを採用した製品が携帯機器などバッテリ駆動の製品に用いられ、それがモバイル市場での成功の一因になりました。、世界市場でみると確かにモバイル機器向けは大きく伸びていますが、基本的にはスマートフォンなどのコンスーマ機器向け、ネットワーク機器向け、産業機器向けの3分野をバランスよく展開していきたいと考えています。、日本市場では、コンスーマ機器向けとしてカメラ向けFPGAの需要拡大に期待しており、2015年には日本市場でも3分野のバランスが取れるとみています。
――日本でのビジネスの状況はいかがですか。
吉田氏 ラティスはハイエンド市場というより、大量消費される用途にフォーカスしたFPGA事業を展開しています。そのため、消費電力やコスト、実装面積を最小に抑えた製品を用意しています。特に、ASICの補完を目的としたコンパニオン・チップとしての用途が増加しています。新たな用途開拓に向けて、CMOSセンサーとのインタフェースやI/O拡張などの用途に、パートナー企業と連携してシステム提案を行っているところです。さらに、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルヘルスケア機器などのウェアラブル機器、カメラモジュールといったモバイル機器から、マイクロサーバなどのネットワーク機器あるいは産業/医療用機器まで、新たな市場開拓に向けて、魅力あるFPGAを提案しています。
――競合メーカーや競合製品を教えてください。
吉田氏 従来のFPGAベンダーは通信分野に注力しており、コンスーマ機器市場において競合になることはほとんどありません。ラティスの製品はASICやASSP、SoCの機能を補完するコンパニオンチップとして仕様を最適化しています。今後は回路規模の小さい領域ではASICからFPGAに置き換わる場合も考えられます。また設計の柔軟性や開発期間の短縮が益々重要となっており、FPGAを選択されるケースが増えています。
――ラティスの製品展開を紹介してもらえますか。
吉田氏 市場からの要求は消費電力や実装面積、コストを低減しつつ、モビリティを向上させることです。当社はこうした市場のニーズに応えるべく、3つのFPGAファミリを用意しています。パッケージの外形寸法が最小1.4×1.4mmと小さい「iCE40」ファミリ、I/O単価が安い「MachX03」ファミリ、そして高性能ながら基板への実装面積が小さい「ECP5」ファミリです。
――次世代製品はどのような仕様になりますか。
吉田氏 全ての情報をオープンにはできませんが、ラティスでは消費電力をさらに低減したFPGAを2016年の事業化に向けて検討中です。この製品は28nm技術を適用して、論理規模が10K LUTで消費電流は10μA未満をターゲットにしています。現行のFPGAに比べて、論理規模を30倍としても、消費電力は半分で済みます。まだ、アーキテクチャについて詳細をお話することはできませんが、複数のパワーモードで動作します。マイクロプロセッサでは以前から採用されている概念ですが、FPGAでは全く新しいアーキテクチャとなります。
――ウェアラブル機器用途でも利用できそうですね。
吉田氏 調査会社の予測によれば、ウェアラブル機器市場は2018年に約1億4000万台とみられています。タイプ別にみると眼鏡型、フィットネスバンド、時計型、手袋型などがあり、大きくディスプレイ付きとそうでない製品に分類することができます。開発中のFPGAは、動作時の消費電力を現行FPGAに比べて1/2〜1/3に低減することができます。このため、常時オンの機能やディスプレイの制御に新型FPGAを用いると、動作時の消費電力も大幅に削減することができます。
――製品ファミリとして現在、iCE40ファミリ、MachX03ファミリ、ECP5ファミリがあります。これからも3ファミリを進化させていくことになりますか。
吉田氏 はい。ただ、開発の方向性は競合のFPGAベンダーとは全く異なります。次世代FPGAは28nmプロセス技術を採用する計画ですが、他社はハイパフォーマンスのFPGAを実現するために最先端プロセス技術を適用しています。繰り返しになりますが、ラティスはローパワー、ローコスト、省スペースといった得意技術を一層進化させていくために、28nmプロセス技術を採用します。そして、モバイル機器やパーソナル・ヘルスケア機器など新しい市場の用途に適したFPGAを開発していきます。これらの基本技術は、医療機器や車載機器、産業機器そして通信機器などの用途に向けたFPGAにも順次、水平展開していきます。
――産業機器やネットワーク機器向けで新たな動きはありますか。
吉田氏 最近は機器設計者に対しても「タイム・ツー・マーケット」や「コストダウン」のプレッシャーが一段と強まっています。しかしながら、現実問題として新規にASICを設計していたのでは製品開発に間に合わなかったり、コストアップの原因になったりしています。こうしたこともあり、新規の設計案件などではFPGAを採用する事例が増えてきました。FPGAに比べて、技術の進化のスピードや供給面で、ASICに対する将来的な不安もあるのではないでしょうか。
――FPGAユーザーは設計をどのようにされているのでしょうか。
吉田氏 ケースバイケースですが、基本的に自社内でFPGAを設計される会社が多いと思います。そのために当社では、設計用ソフトウェアツール「Lattice Diamond」を提供しています。ターンキーでも利用できますが、性能や消費電力などFPGAの特長を最大限に生かすため、設計者がマニュアルでチューニングすることもできます。
――設計の効率化にはIPの活用も重要となります。
吉田氏 MIPIアライアンスに対応したIPを用意しています。PLDベンダーでこのIPをサポートしているのは当社のみです。MIPIは携帯電話機やスマートフォンなどの用途で、CMOSセンサーやバッテリ、ディスプレイといった周辺デバイスとアプリケーションプロセッサを接続するために標準化されたインタフェース規格ですが、今後は産業用途でも利用されるのではないかと期待しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:ラティスセミコンダクター合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日