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“ひねり”を加えたユニーク製品で新たな価値を生み続けるサイプレス日本サイプレス 応用技術部長 全英守氏

サイプレスは、メモリ、USBコントローラといった規格対応が前提の汎用製品を扱うが、規格への準拠だけにとどまらず、ユニークな技術/機能を盛り込んだ“サイプレスらしい”特色ある製品展開を行っている。さらに多くのマイコンやASICを置き換える可能性を持つ独自デバイス「プログラマブルSoC(PSoC)」のビジネス規模も順調に拡大。さまざまな用途分野で存在感を強めつつあるサイプレスの日本法人で応用技術部長を務める全英守氏に製品戦略などについて聞いた。

» 2014年09月01日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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――サイプレスの事業について教えてください。

全氏 現在、3つの事業部門があり、主に4つの製品群を展開しています。Memory Producuts Division(MPD)の「メモリ」、Programmable System Division(PSD)のプログラマブルSoC「PSoC」と「タッチセンサーコントローラ」、Data Communications Division(DCD)の「USBコントローラ」です。

 売り上げ規模は、MPDとPSDの2事業部門で90%近くを占めますが、DCDも含めて3事業が注力事業であり、ほぼ等しく研究開発費を投資し、それぞれが特徴ある新製品を投入しています。また次世代要素技術開発は、各事業部門で行っている他、子会社でチップサイズパッケージ(CSP)技術の開発などを行っています。

不揮発のnvSRAMとFRAMに重点

――では、事業別に製品開発状況について教えてください。まずは、メモリ事業の状況はいかがですか。

全氏 メモリ事業では、主に同期/非同期SRAM、不揮発性SRAM、不揮発性FRAMといったメモリ製品を展開していますが、最近では特に不揮発性メモリの拡充に力を注いでいます。

 急な電源遮断時でも、確実にデータを保持、記録する信頼性の高いメモリへのニーズは高くなってきており、不揮発性メモリ需要の拡大が見込めるからです。

 サイプレスでは、揮発性のSRAMに不揮発性のSONOSメモリを組み合わせた不揮発性SRAM「nvSRAM」を展開しています。従来のSRAMと同様の高速なランダムアクセス読み出し/書き込みが行える上に、電源遮断/電源異常時に不揮発性のSONOSメモリに自動的にデータをコピー、保存するものです。不揮発性メモリながら速度面で電源遮断時のデータ記録に弱かったE2PROMや従来SRAMで必要だったデータ保持用のバックアップバッテリーが必要ありません。

 nvSRAMとともに、もう1つの不揮発性メモリとして「FRAM」も展開しています。FRAMは、強誘電体を利用した不揮発性メモリで、2012年にFRAMメーカーのRamtron(ラムトロン)を買収するなどし、強化を続けています。旧Ramtron製品も、サイプレスの品質基準を適用することで、より高い品質レベルを達成することができ、最近は車載用途での採用数も拡大しています。

――nvSRAMとFRAMは、同じ不揮発性の組み込みメモリという点で、競合しているようにも見えますが。

全氏 技術的なメリット、デメリットが異なり、nvSRAMとFRAMですみ分けができています。大まかに分類すると、高速アクセスが必要なパラレルインタフェースを求める用途はnvSRAMを中心に、FRAMはより低消費電力を必要とする用途向けにシリアルインタフェースを中心に展開しているといえます。また、FRAMは現状2Mビットの容量まで供給されています。一方で、nvSRAMは16Mビットまでの大容量品まで対応できます。nvSRAMとFRAMは補完関係にあり、今後も並行して新製品の開発を行います。

――同期/非同期SRAMについてはいかがですか。

全氏 各種メモリインタフェースに対応するメモリの幅広いラインアップを維持、拡大させていくとともに、高付加価値製品を強化していきます。例えば、このほど製品化した16Mビット容量の非同期SRAMがあります。この製品は最新の65nmプロセス技術を使用しているのですが、こうした微細プロセスを使用すると宇宙線など放射線の影響を受けやすく、ミッションクリティカルな用途では無視できないエラーが発生する危険性が高まっています。そこで、新製品にはシングルビットのエラー訂正機能(ECC)を搭載するなどして耐放射線性を高めています。

システムコスト低減に貢献

USB関連製品ラインアップ

――では、USB関連製品の展開状況についてお教えください。

全氏 現在は最新のUSB3.0対応製品の拡販を進めているところです。従来のUSB2.0までの実績、ノウハウを生かした特長のあるUSB3.0対応製品のラインアップが整いました。デバイスコントローラ、ハブコントローラ、ブリッジICなどです。

――USBコントローラの場合、規格への対応が主であり、価格競争に陥りがちな製品分野ですが、どのような特徴を持たせているのですか。

全氏 いろいろな特徴があります。代表的なものが、通信品質の良さです。規格準拠のための仕様を大きく上回る通信品質を実現しており、配線長が長いなどノイズが乗りやすい環境でも安定した通信が行えます。そのため、基板設計にゆとりが生じ、システムコストを低減することに貢献します。

 またハブコントローラですと、USBホストが存在しない場合でも、ハブからデバイスに電源供給できるGhost Charging機能や、デバイス側からホスト側へのアップストリーム給電も行えるAccessory Charger Adaptor Dock(ACA-Dock)機能といった先進機能を搭載した製品を投入しています。さらに、USB3.0は、USB2.0以前の規格と互換を保つため、実質的にUSB3.0とUSB2.0の2つのコントローラを搭載している構造になっています。当社では、この2つのコントローラを両方使うShared Link機能をハブコントローラに搭載し、4ポートハブながら、4ポートのUSB3.0と4ポートのUSB2.0の計8ポート分を同時使用できます。こうした機能も、システムレベルでの高機能化、低コスト化に貢献する機能になっています。

静電容量センサーやバッテリー制御に向くPSoC

――次に、プログラマブルSoC「PSoC」の製品展開状況についてお伺いしますが、まず、PSoCとは、どのようなデバイスなのでしょうか。

プログラマブルSoC「PSoC」の概要

全氏 CPUコアやメモリに加え、プログラマブルなA-D/D-Aコンバータやアンプなどのアナログ機能、タイマーやカウンタなどのデジタル機能、主要なインタフェース機能などを1チップ化したシステムオンチップです。言い換えれば、ペリフェラル部分がプログラムで再構成できるようになったマイコンです。8ビットCPUコアを搭載する「PSoC 1」「PSoC 3」の他、ARM Cortex-M3を搭載した「PSoC 5LP」、ARM Cortex-M0搭載の「PSoC 4」の製品ファミリがあり、現在は、最新製品ファミリであるPSoC 4のラインアップ強化を進めている段階です。

――PSoCの採用状況はいかがですか。

全氏 さまざまな応用用途で採用数が増えてきています。例えば、ノートPCなどに搭載されるマルチセルのリチウムイオンバッテリーのマネジメント用途があります。バッテリーに合わせた電流監視用のアナログ回路が自在に組め、複雑な制御処理も行えるという点で、PSoCの利点が活かしやすい用途といえます。バッテリーマネジメントに限らず、センサーからの信号をアナログ/デジタル処理するあらゆる用途にPSoCは向いており、採用数を増やす一因になっています。

 PSoCのもう1つの特徴が、静電容量ボタン技術「CapSense」を搭載している点です。冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなど白モノ家電を中心に、従来の機械式スイッチから、静電容量式のタッチボタン/キーにユーザーインタフェースが変わりつつあります。これは、摩耗などによる故障リスクや、水/ホコリに対する弱さなど機械式スイッチが抱えた課題がない上、デザイン面、コスト面でもタッチボタン/キーが優れているという理由から、白モノ家電の他にも産業機器などでも採用が増えています。

 ただ、ボタンやキーの形状に合わせて静電容量の検知する感度を調整する必要があり、それぞれの制御用デバイスをASICなどで開発するのは難易度が高くなっています。その点、PSoCの場合は、プログラマブルなのでパラメータなどを自在に調整できるため、静電容量ボタンにも非常に適したデバイスになっています。

 静電容量センサー制御機能を持ったマイコンもありますが、当社のCapSenseは独自の機能を多く持っている点で、優位性を発揮しています。その1つが、水検知機能であり、他にない機能でしょう。また面倒なパラメータ設定を自動で行う開発ツールも提供している点も、PSoC、CapSenseへの評価につながっています。

 PSoCは、さまざまなマイコンを置き換える可能性を持ったデバイスです。特にCapSenseはその良さを実感しやすい技術であり、まずはCapSenseを試してもらいながら、PSoCの採用数をさらに伸ばしていきたいと考えています。

デジカメ、車載など多用途展開へ

――PSoC、CapSenseの技術をベースに、タッチパネル制御ICも展開されています。

全氏 数多くのスマートフォンに採用され、高いシェアを得ています。CapSense同様、タッチパネル制御ICでも、独自の水検知技術を持っており、当社の強みの1つになっています。1つのチップで自己静電容量センシングと相互静電容量センシングの両方を使うことで水を検知する技術であり、特許も取得しているため他社はまねできない技術になっています。

 現行世代の「Gen5 TrueTouchコントローラ」は、高い耐ノイズ性能を持っており、ノイズの多い安価な充電器を接続した場合などでも誤動作を起こさないタッチスクリーンが実現できます。さらに、ホバーやスタイラスといった複数の次世代機能に対応した製品も順次投入しており、タッチパネル制御ICのトップランナーとしての地位を確保していきたいと思っています。

――タッチパネル制御ICの日本での展開方針をお聞かせください。

全氏 世界的にはスマートフォン向けの展開が主だが、日本ではスマートフォン以外の機器への展開を強化していく方針です。デジタルカメラをはじめ、車載情報端末、プリンタなどタッチパネルを搭載する機器は増えており、そうした用途に対応できる多くの品種をラインアップしていきたいと考えています。


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提供:日本サイプレス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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