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世界最大級、15メガワット次世代風力発電の開発に貢献――“再構成可能なI/O”で挑むNIWeek 2014現地リポート

最先端の産業分野やエネルギーなどのインフラ分野で使われるデータ計測/制御システムは、「柔軟性」と「高速処理」がより求められるようになっている。ナショナルインスツルメンツ(NI)製品の柱となる“再構成可能なI/O”、すなわち「RIOアーキテクチャ」はこうしたニーズに応えるべく10年の歳月をかけて進化を遂げてきた。“世界最大級”とされる、15メガワットの次世代風力発電機の開発にもおおいに貢献している。

» 2014年09月04日 00時00分 公開
[PR/EE Times]
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 家電からモバイルデバイス、産業機器、インフラ機器など、あらゆるモノがネットワークにつながりスマート化するモノのインターネット“IoT”は、急速に世の中に広まりつつある。さまざまなモノからデータが発信され、それによって今まで見えなかったことが見えるようになり、これまでできなかったことができるようになってきつつある。

 特に産業やインフラ分野においては、効率の良い生産や高度な制御を行うために、複雑な状況下で高速なデータ収集・制御システムが求められるようになっている。こうした市場の要求に応え、けん引しているのがナショナルインスツルメンツ(NI)のモジュール式計測/制御用ハードウェアに搭載された「RIOアーキテクチャ」+システム開発ソフトウェア「LabVIEW」という強力な組み合わせである。

加速するRIOアーキテクチャの進化

 RIOアーキテクチャの“RIO”は、「再構成可能なI/O」を意味する。その中心はLabVIEWを通じて自由にプログラミングして構成を変えられるFPGAであり、これにプロセッサと、ニーズに合わせて取り替えられるモジュール化された入出力インタフェース部(I/O部)を加えた構成になる。ソフトウェアでプロセッサに処理させるのではなく、ハードウェア(FPGAの回路構成)をプログラミングで変更することにより、通常のソフトウェア処理では不可能な、複雑で大量、高速の処理を可能にしている。

「RIOアーキテクチャ」入出力インタフェースの処理をFPGAにまかせることでプロセッサの負荷を軽減し、データ処理を大幅に高速化した

 NIは2004年に世界初のソフトウェアデザイン可能なコントローラとして「CompactRIO」を発表した。2011年にはプロセッサをマルチコア化した。2013年には、ARMコアを統合したXilinxのFPGA「Zynq(ジンク)」を搭載した新しいRIOアーキテクチャを発表している。同バージョンはWindowsに加えてLinuxベースのリアルタイムOSに対応する。

 さらに2014年は、Intelの低消費電力プロセッサ「Atom」を搭載し、スロット数を抑えてコストパフォーマンスを重視したComactRIOと、手のひらに収まる1枚の基盤サイズの「System on Module(SOM)」を発表した。

 RIOアーキテクチャは、ハイパフォーマンスな製品からコストパフォーマンスを追求した製品や小型製品などそのバリエーションを拡大している。

NIWeek2014で発表された「System on Module(SOM)」。Xilinxの「Zynq-7000 All Programmable SoC」を搭載した小型制御用ハードウェア

 NIWeek 2014の基調講演では、CompactRIOを使った半導体検査装置をイメージしたテクノロジーデモが披露された。カメラ入力による画像処理(監視)、ステッパーモータやサーボモータの複雑な動作制御、同期させた入出力、そしてディスプレイへの表示までをわずか1台のCompactRIO(PCは使われていないことを強調しておく)でやって見せた。

基調講演で披露された、PCを使わずCompactRIOだけで構成された半導体検査装置のテクノロジーデモ
デモ装置のシステム構成図。画像処理による監視、アームなどの動作制御、タッチディスプレイのUIのすべてを1台のCompactRIOで行っている

複雑な電力網をリアルタイムで監視

 英国のイングランド、ウェールズ、スコットランドの各州で送電網を展開するNational Gridは、陸上に7ギガワット、海上に4ギガワットという巨大な風力発電システムを持ち、なお年率で20 %も伸びつつあるという。これらで発電した電力はHVDC(高圧直流送電)を使って送られている。ここで問題なのは、風力発電が持つ不安定さで、従来の原子力発電所などからの電力と合わせた上で電流や電圧の変動などを一定以下に抑える必要がある。

 National Gridが電力網の状態監視に導入したのが、CompactRIO+LabVIEWで構築されたシステムだ。これによって状態監視システムを進化させることができ、電力供給網全体をリアルタイムで監視することが可能になり、結果としてひずみを抑えた質の高い電力を供給できるようになったという。National GridのパワーシステムズエンジニアであるDanson Michael Joseph氏は「NIのCompactRIOを使ったことにより高速で柔軟な状態監視システムが構築できた」と述べている。

ウェールズ州とイングランド州の電力のクオリティを表すグラフ。縦方向はひずみの大きさ、横方向は時間軸。グラフのデータはデモのために用意したものではなく、その時点のリアルタイムなデータが刻々と表示されていた。なお、グラフの前に見える白と黄色の箱が、CompactRIOを組み込んだ電力監視ステーションである

 一方米国で開発中の次世代風力発電機においてもRIOアーキテクチャは活用されている。

 世界では、2013年の時点で320ギガワットもの電力が風力発電によって賄われている。10年前に比べると、実に10倍になっているのだ。より低コストで発電するために風力発電機は巨大化していて、現在のところ世界最大級となる8メガワットの風力発電機は、プロペラの直径が、超大型旅客機であるエアバス「A380」の2倍にもなる巨大な建造物である。こうした発電機は陸から遠く離れた海上に設置されるため、問題となるのが信頼性だという。

 米国サウスカロライナ州Clemson Universityは、米国エネルギー省の委託で次世代の15メガワット風力発電機を開発している。ちなみに15メガワットとは、米国の家庭1万2215戸で1カ月間に消費される電力に相当する量だ。

 同大学の施設では、風を受けて回るプロペラの代わりに発電機の軸を回すテストリグを作って発電機を動かし、1000個を超えるセンサーを配置して信頼性向上のためのデータを収集している。さらに、発電した電力を電力網シミュレータに送り、発電量の変動が与える影響を分析している。これらのシステムはCompactRIOの他、NIの計測/制御機器である「PXI」や「FlexRIO」などで構成している。Clemson University/Duke Energy EGRIDのDirector of Operationを務めるCurtiss Fox氏は、「NIのシステムによって、メカニカルなテストと電力網への影響へのテストを併せて行うことができる」と話し、次世代風力発電機の信頼性を高めることへのNIの貢献を評価した。

Clemson Universityの施設でテスト中の風力発電機のイメージ
NI製品を駆使して構築された、電力網シミュレータ。風力発電機で発電される電力が既存の電力網に与える影響をシミュレートする。

 プロセッサ+FPGA+入出力インタフェースという、柔軟に構造が変更でき高速処理が可能なRIOアーキテクチャと、その能力を容易に操作できるようにするLabVIEWの組み合わせは、産業用システムの制御はもちろん、非常に大規模で複雑な電力網の監視システムや次世代発電機の開発現場において、能力を遺憾なく発揮し、大きな助けとなっている。


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提供:日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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