NXPセミコンダクターズジャパンは、「2015年12月期の売上高を2012年12月期と比べ2倍とする」シナリオを、1年早めて達成できる可能性が出てきた。これを受けて2017年12月期には、2012年12月期の3.5倍となる売上高を目指す。主力分野の車載向けICに加え、安全で堅牢なコネクション技術を中心に、ソリューション・ビジネスを強化していく。また、世界トップシェアとなったロジックやディスクリートなどのスタンダード製品の販売も引き続き強化する。
――2014年を振り返って、状況はいかがでしたか。
原島弘明氏 ビジネスは総じて好調であった。グローバルで見ると、2012年は厳しく、2013年にはタブレット端末向けなどに動きは出てきたものの、全体的には低調であった。2014年に入ると、中国市場におけるLTE(Long Term Evolution)サービスの立ち上がりに伴うRF製品の需要拡大や、PCの買い替え需要による台湾市場での需要増加、設備投資が始まった。それに伴い半導体需要も膨れ上がり、2014年夏には需給がタイトになった。2014年末にはタイト感も落ち着きつつあるが、日本も含めて市場からの引き合いは『依然として強い』というイメージだ。2014年12月期の業績については、全世界の売上高が55億米ドルを超える見通しで、2013年に比べて2ケタ成長が見込まれている。
日本市場では、売り上げ比率が高い車載向けICを中心に、順調に推移している。新たな市場となるセキュリティ関連の需要も立ち上がってきた。日本法人における2014年12月期の売上高は前年に比べて50%増加する見込みである。このため、日本法人が目標として掲げてきた、「2015年12月期の売上高を2012年12月期と比べ2倍とする」シナリオを、1年早めて達成できる可能性が出てきた。
――日本法人の売り上げ規模が2倍になると、製品の構成比率も変わりますか。
原島氏 NXPセミコンダクターズジャパンの社長に就任した2012年11月当時は、車載向けICの売り上げ比率がおおよそ7割を占めていた。車載向けIC事業は今でも堅調に売上高を拡大しているが、それ以外の製品も車載向けICを上回る伸び率で売上高が増えている。このため、売り上げ構成比でみると2014年は、車載向けIC比率が6割程度となるだろう。
その理由の1つは、汎用ロジックICやディスクリートといったスタンダード製品の事業拡大である。社長就任後から地道な営業活動を続けてきた成果だと考えている。着実に市場シェアを拡大することができた。もう1つはID認証製品である。日本市場でもバンキングなどの認証用途にID認証用ICの導入が広がっている。モバイル決済サービスの動向が全世界で注目を集めており、これからはNFC(近距離無線通信)技術をベースとしたリーダ/ライタ装置の需要拡大に期待したい。
――日本における今後の事業見通しについてお聞かせください。
原島氏 日本法人において2017年12月期の売上高を、2012年12月期に比べて3.5倍とする新たなシナリオを描いている。このシナリオが達成できれば、全社における日本での売り上げ構成比は現在の8%強から、10%を超える比率にまで高まることになる。そのための準備を始めたところだ。2014年12月期見込に比べると1.5〜1.6倍の計画となる。
これまでは、車載用、汎用、ID認証など、NXPが強い製品分野で事業規模を拡大してきた。今後は新市場に対するアプローチや、それに必要な経営資源の投入なども含めて、もう一度戦略を建て直して、ビジネス領域を広げていかなければならない。これからが本当のチャレンジとなる。
これからの社会はIoTのもとに、あらゆるものがインターネットにつながる時代となる。NXPは、このIoTの時代を迎えるにあたってキーとなる技術をすでに提供している。通信が活発になるほど、ハッキングなど不正アクセスが生じないように、データの安全性を担保することが一段と重要となる。各国のパスポートにはNXPの認証技術/セキュリティ技術が採用されている。安全で堅牢なコネクション技術は、NXPが最も強みを発揮できる分野でもある。
いずれモバイル決済サービスが日本でも普及するだろう。2020年に開催される東京オリンピック/パラリンピックには、世界標準規格に準じた決済サービスに対応できるモバイル機器を持参した人が、世界中から来日する可能性が高い。その時に必要となるのが世界標準規格に対応できるリーダ/ライタ装置製品だ。
――事業戦略として、これまでと異なる点はありますか。
原島氏 これまでは、スタンダード製品に高性能ミクスド・シグナル(HPMS)製品の自動車、ID、産業機器/インフラ、民生/コンピュータを加えた、5つのビジネスユニット(BU)で事業を展開してきた。これからは各BUの単独活動に加えて、BU同士が相互に連携した提案活動も必要となるだろう。
この方針に伴い、近々事業体制も見直すことになるだろう。「Secure Connections for a Smarter World(よりスマートな世界を実現するセキュア・コネクション)」というスローガンを実現するために、より多くのビジネスパートナーなどと共にソリューションを提供していく可能性もある。
――日本市場でこれから注力していく用途を教えてください。
原島氏 自動車、プリンタを中心とするイメージング機器、そしてアミューズメント分野である。これらの分野は日本企業が世界的に強みを発揮しているセグメントであり、日本法人としてもこの分野にフォーカスしていく。産業機器やウェアラブル機器向けも引き続き注力する。
産業機器の分野はすそ野が広いが、顧客とのつながりは広がっている。車載向けビジネスにおける高い品質が信頼性の向上につながった。コモディティ製品では長期供給体制を確立している点が評価され、産業機器分野でもNXPが認知されたと考えている。
ウェアラブル機器に向けては、モバイル機器用途で培ったローパワー技術をベースにアプローチしていく。また、NFCとBluetooth Low Energy技術、あるいはこれらを組み合わせた近距離無線システムを提案できることを強みとしたい。ウェアラブル・ソリューションの強化に向けて、NXPは2014年11月にQuinticのウェアラブル/Bluetooth Low Energy IC事業を買収すると発表した。2015年3月までに買収は完了する予定だ。
――自動車向けの事業展開を教えてください。
原島氏 車載向けは、カーラジオ、カーチューナ向けIC、カーエンタテインメント向けIC、CAN/LINなどの車載ネットワーク用IC、スマートキーのイモビライザなどがコアのビジネスとしてすでに堅調に推移している。
新たな成長分野として車車間通信(V2V)向け通信モジュールにも期待している。Delphi Automotiveは、GMの「Cadillac(キャデラック)」2017年モデル向けにV2V用モジュールを提供することを発表した。この通信モジュールには、NXP製のIEEE 802.11p対応無線チップセットが組み込まれている。これとは別に、欧州では2014年11月に「Communicating Cars」と呼ぶV2X対応車両を使った「インテリジェント交通」を実証する試験走行が行われた。走行試験に使われたホンダ製スマートカーは、NXP製のセキュアな通信技術を用いて、V2Vや車路間通信(V2I)を行いながら、全長1300kmのコースを走破した。
日本では、V2V/V2Xに関する事業基盤や法律の整備などがこれから必要となるが、Delphiとの協業や欧州での試験走行は、日本における車載向けIC事業にも大きな意味を持つことになるだろう。車両の制御モジュール事業をこれから本格的に展開するため、ICチップの製造工程における品質保証体制や、アフターサポート体制の整備などにも取り組んでいるところだ。
――2015年の取り組みを教えてください。
原島氏 世界的に経営を取り巻く環境が不透明で、単年度の成長率を予測するのは難しい。こうした中で競合他社と差異化できる、競争力のあるソリューションを提案していく。特に、スタンダード製品は引き続き注力する事業の1つだ。2014年5月に発表された調査会社のデータによると、ディスクリートと汎用ロジックICの売上高を合算したスタンダード製品で、NXPのシェアが世界1位となった。
世界市場では、既にディスクリートのうちトランジスタ素子でトップのシェアを獲得している。汎用ロジックICは金額ベースこそ、首位とわずか差の2位だが、数量ベースでは1位となっており、日本でも少しずつ売り上げを伸ばしている。コモディティ製品は供給メーカーが限られてくる中で、製品の品質や供給体制などで強みを発揮し、認知度のさらなる向上を目指していきたい。
2015年はセキュリティ製品にも期待している。これまでスマートメータや民生電子機器、産業機器/FAシステムなど、さまざまな用途に提案してきた。セキュリティ製品におけるNXPの強みは、パスポート向けなど政府と一体となってICチップを実用化している点だ。一歩先行する技術を開発して、常に高いレベルのセキュリティを維持し続けている。こうした実績が競合他社との大きな違いとなっている。
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提供:NXPセミコンダクターズジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月12日