トレックス・セミコンダクターは、電源ICを中心としたアナログIC専業メーカーだ。高効率で低消費、低ノイズの電源ICを小型パッケージで実現する技術力を強みとする。産業機器/車載機器、ウェアラブル機器向けなど成長市場に向けた製品戦略を強化しつつ、既存製品分野ではモジュール製品向けなどを展開する。これらの取り組みによって、高収益体質のさらなる強化を図る。
――2014年のビジネス状況はいかがでしょうか。
藤阪知之氏 2015年3月期の業績予想は、前年(2014年3月期)実績は上回るが、期初の計画に対してはやや下回る見通しとなった。取り組みを強化している産業機器や車載機器向けのビジネスは順調で、今後も計画通りに推移する見込みだ。これに対して、国内市場でデジタルカメラやゲーム機器、家電機器などに向けたビジネスは、前年実績に比べるとプラス成長となるものの、期初の目標は未達となりそうだ。利益面では、為替レートが想定より円安で推移していることもあり、最終的には通期予想に対して上振れすることになるだろう。
――順調に推移している産業機器や車載機器向けのビジネスについて、その概要を教えてください。
藤阪氏 産業機器と車載機器向けのビジネスについて、応用分野別の売上高構成比でみると、全売上高に対して両分野を合計した比率は、2014年3月期に約32%だったものが、2015年3月期には約37%に高まる見通しだ。これを2016年3月期には42、3%まで引き上げていきたい。
――2015年3月期は、産業機器向けの構成比が5ポイント上昇する予想です。その理由を教えてください。
藤阪氏 国内外で監視カメラ向け電源ICの需要が拡大した。特に欧州や中国市場で好調に推移している。スマートメータ向け需要も順調である。現在は海外メーカーに対するビジネスが中心となっているが、今後は国内メーカーからの受注も増えてくるだろうと期待している。電池駆動のシステムは、電池交換を行わずにどれだけ長時間使用できるかがカギとなる。このため、消費電力が極めて小さい電源ICが求められる。こうしたローパワー領域は当社がもっとも強みとする分野である。
――車載機器向けも好調です。
藤阪氏 カーナビやカーオーディオなどに向けた需要が堅調に推移している。カメラモジュールを搭載したバックモニターやドライブレコーダー向けなどで着実に受注を獲得することができた。車載機器や産業機器向けのビジネスは、システムレベルでの提案や技術支援がベースとなる。当社が得意とする低消費電力技術や小型化技術を基盤とした提案力が、顧客から高く評価されているのではないだろうか。
――2015年の事業戦略について、お聞かせください。
藤阪氏 家電機器などの既存分野で、これから大きな需要拡大は期待することができない。このため、産業機器や車載機器、ウェアラブル機器、医療機器など新しい市場で、顧客を着実に獲得していきたい。収益体質のさらなる強化に重点を置くが、同時に売上高も着実に拡大していきたい。挑戦的ではあるが、売上高でも年率10%増にチャレンジしていく計画だ。
売上高の分野別構成比率をみると、最近では産業機器と車載機器向けの構成比率が高まってきた。とはいえ、現状では家電機器やPCなど従来製品向けが約半分を占めている。これら従来製品向けの落ち込みをカバーすることができれば、売上高で2桁成長し続けることは不可能なことではない。
――従来製品向けでの落ち込みをどのようにしてカバーしていかれるのでしょうか。
藤阪氏 その1つはモジュール製品向けのビジネスを拡大することである。通信モジュールやメモリモジュールといった用途に、電源ICチップとコイルを一体化したDC-DCコンバータ「マイクロDC-DC/XCLシリーズ」の活用を提案していく。この1〜2年はモジュール製品向け電源ICの開発にも取り組んできた。その成果を受注に結び付けていきたい。
XCLシリーズは、小型パッケージで電力消費が少ないことが特長だが、それ以上に「ノイズが低い」点を強調したい。この特長がノイズに敏感な通信モジュールやメモリモジュールのメーカーから高く評価されている。モジュール製品向けのビジネスを拡大していくために、通信用チップセットの大手メーカーが提供するリファレンスボードなどに、推奨電源ICとして採用されるように活動を強化しているところだ。
XCLシリーズは、ウェアラブル機器から車載機器まで、さまざまな用途から引き合いを得ている。2014年11月にはドイツで開催された「エレクトロニカ」に出展した。スマートメータなど産業機器メーカーなどから、XCLシリーズのサンプル品請求や評価基板に対する問い合わせが殺到しており、大口の受注も入ってきた。電池駆動のスマートメータ向け電源ICとして、電力消費が少ないことが評価されたようだ。
XCLシリーズの生産数は月間100万個に近づきつつあり、主力製品の1つとなってきた。モジュール製品に向けた展開や、欧州における産業機器メーカーからの大口受注などもあって、2015年度には3〜4倍の規模に拡大していきたい。増産に必要な投資も2015年3月までには完了する予定だ。
――ウェアラブル機器向けも、これから期待できる市場ではないでしょうか。
藤阪氏 これまで、ウェアラブル機器関連では、100社近くへのデザインイン活動を行い、量産受注は既に数十社を超えている。サンプル品を出荷して評価してもらっている案件も100件以上はある。 動作時に加えて、待機時の自己消費電流が極めて小さいのが当社製品の特長だ。
2015年は、市場に投入されるウェアラブル機器のほぼ半分で当社の製品を使ってもらえるよう努力したい。いずれはコモディティ製品となる可能性は高いが、それまでは高いシェアを獲得していきたい。将来的にウェアラブル機器は介護などの用途にも広がっていくと予想されている。これら社会インフラに活用される領域は、製品自体が性能や特性を求められる市場である。当社の製品が貢献できる分野を見極めて、きっちりとサポートしていきたい。
――産業機器向けビジネスについて、2015年はどのように取り組みますか。
藤阪氏 もっと海外市場に注力していきたい。特に米国市場では十分に食い込めていない。これが2015年における課題の1つでもある。そのためには、米国市場で営業活動の質を高めていくことが重要だ。今のところ詳細な計画があるわけではないが、現地のニーズに合わせた製品開発を行うための体制を整えていくことも検討しているところだ。
2014年5月に、米国のパワー半導体メーカーの「IXYS」と相互販売提携契約を結んだ。海外市場を強化していく手段の1つである。当社の製品をIXYSが米国や欧州市場で販売する。当社製品が海外の産業機器メーカーに入り込むチャネルとして期待している。ただ、売上高として成果が出てくるのは2016年かそれ以降になるだろう。当社も日本市場でIXYS製の民生機器向けICやパワーMOS FET、IGBTなどを個別あるいは当社製品と組み合わせて販売していくことになる。
――中高耐圧品の開発について教えてください。
藤阪氏 耐圧60Vで、動作温度範囲が125℃対応のパワー半導体製品を製造できるプロセス技術の開発を終えた。開発したプロセスを活用してパワー半導体製品をラインアップしていく。高耐圧プロセス技術の開発は今後も継続して行うが、今のところ当社がターゲットにしている用途向けICは、今回開発したプロセス技術で対応することができると考えている。
――車載機器向けの製品開発戦略はいかがですか。
藤阪氏 具体的な開発内容は明らかにできないが、顧客から製品仕様に関する要求は聞いており、協力してICチップを開発しているところだ。車載用途では、既にアイドリングストップシステム向け電源ICを開発し、供給しているが、汎用製品として一般市場に売り出せるのは5年後となろう。
――2015年の投資計画についてお聞かせください。
藤阪氏 大きな案件としては3つ予定している。基幹システムの再構築、CADを中心とした開発ツールの整備、そして、XCLシリーズの増産に向けたベトナム工場の拡張である。XCLシリーズの増産に関しては2015年3月をめどに量産体制を整えていく。開発ツールへの投資は、デジタル回路を内蔵した電源ICの開発に対応するためで、より高精度の回路設計と開発期間の短縮を実現していくのが狙いである。最近は、電源ICも外部からコントロールするケースが増加しており、メモリブロックやインタフェース回路を電源ICに組み込む必要性が高まっている。これらとは別に、米国市場における事業拡大に向けた投資も行う予定だ。
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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月12日