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矛盾を抱える技術課題に“解”を提供するリニアテクノロジー 代表取締役 望月靖志氏

リニアテクノロジーは、自動車や産業機器など技術進化が急速に進む分野で、高性能/多機能化と小型/低消費電力/低放熱化を両立させるなどのソリューション提供を通じて、事業規模をさらに拡大させる方針。「他社ができないことを実現するのがリニアテクノロジー。自動車、産業機器、通信機器などは次世代に向け技術課題が山積している状態は当社にとって追い風で、課題を解決する“解”を提供する」と語る日本法人代表取締役の望月靖志氏に聞いた。

» 2015年01月13日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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おおむね景気は良い

――足元の市況ですが、どのように見られていますか。

望月靖志氏 1カ月におおよそ20〜25社の顧客を訪問しているのだが、「景気が悪い」という顧客はいない。一部、業績が悪い企業も、われわれの競合他社も含めてあるようだが、それらの悪い部分は、個別的な問題であり、おおむね景気は良いと言い切れる。

 中小規模の企業は、好景気の恩恵を受けるまで時間が掛かるが、日本での小口顧客向け売り上げをみても伸長しており、そういった意味でも市況は良くなっているのは明らかだ。

 半導体製造装置の向こう半年程度の受注状況を見ても、堅調なようで、しばらくは景気の良い状態が続く見通しだ。

――業績はいかがでしょうか。

望月氏 2015年度第1四半期(2014年7〜9月期)の全社売上高は、当初予測を上回り前年比9%増を達成した。日本市場に限っても、市況を反映し、予想を上回るペースで売上高は伸長している。

 特に日本での業績伸長を引っ張っているのが、売上高の45%を占める自動車向けと、同じく40%を占める産業機器向けだ。通信機器向けに関しては、無線機器向けに関しては需要の海外シフトが顕著で苦戦気味だが、100G、400Gといった次世代高速通信対応機器への投資が活発な有線機器向けは好調で、売り上げ伸長に貢献している。

国内売上高45%に達した自動車向けビジネス

――日本での売り上げのうち、自動車向けが45%に達しました。

望月氏 自動車向けのビジネスはまだまだ拡大する。1日に例えるならば、午前10時の状況だと思っている。

 自動車には今後も電子化によって多くの機能が、新しく搭載される。そのため、1つの機能、1つのIC当たりのサイズ/スペースが小さくなり、熱の問題もシビアになっていく。加えて、電機/エレクトロニクスは、機械/メカトロニクスと違って完全な不良率ゼロの達成はあり得ず、万が一、不良が発生した場合でも安全を担保する技術が必要だ。このような自動車分野の技術課題は山積している。

 リニアテクノロジーは創業以来、他社ができないことに挑戦して、成長してきた企業。自動車分野が抱える技術課題の山の大きさだけ、われわれにチャンスがあると考えている。

 このことは、自動車のみならず、産業機器や通信機器分野でもいえることだ。

 国内産業機器メーカーは、価格競争主体の領域はアジア勢に譲り、ハイエンドの部分で世界をリードしようとする傾向が強く、「多機能化」と「小型/低消費電力化」を同時に実現させるという矛盾した技術課題を克服しようとチャレンジしている。100G、400Gへと性能を向上させつつある通信機器分野もそうだ。そうした技術的課題がより顕著となっていることは、われわれにとって追い風になっている。

技術課題は「追い風」

――「多機能化」と「小型/低消費電力化」という矛盾に対し、どのような製品を提供しているのですか。

望月氏 分かりやすい例が、「μModule」だ。10〜20mm角程度の半導体デバイスのような外見なのだが、パッケージ内部は、半導体チップに、コンデンサやコイルなど受動部品が実装されたモジュールになっている。わずかな外付け部品を付けるだけで、高精度/高効率な電源をはじめとした回路を実現できる製品だ。既に、電源用を中心に、絶縁回路、A-Dコンバータ駆動回路など50品種以上を製品化している。

 これまで産業機器分野を中心に、電源など回路の大幅な小型化を実現するソリューションとして採用が拡大し、その売り上げ規模は過去4年間で年率35%のハイペースで急成長してきた。μModuleの需要はさらに拡大していく見込みだ。

 他にも、自動車分野に向けてBCDプロセスを採用したレギュレータ「LT86xxシリーズ」は、暗電流を2.5μAに抑えながら96〜98%という高効率を実現する技術課題を解決する製品として、車載分野で採用が急拡大している。

アナログに固執せず、“ソリューション”を提供

――リニアテクノロジーといえば高性能アナログICのイメージが強い中で、「dust(ダスト)」ブランドの無線モジュールビジネスも注力されています。その狙いを教えてください。

望月氏 われわれは、技術課題に対し、“ソリューション”を提供していくことが目的であり、アナログだけにこだわるわけではない。

 実は2014年に、われわれにとってエポックメイキングとなる「LTC2983」という製品を発売した。このLTC2983は、熱電対やサーミスタなど温度センサーからの入力を処理し、デジタル出力するというICで、プロセッサコアとしてARMコアを搭載するなどデジタルの色合いが濃い製品だ。これも、複雑な温度センサーからの信号処理をワンチップで行うための“ソリューション”として製品化したものだ。

 無線モジュールについても、設置に制約があり煩雑な有線接続を、無線に切り替えるためのソリューションとして提供するものだ。無線の場合、メリットが多い半面、通信が途切れるなど信頼性やスピードという面で課題を抱える。リニアテクノロジーの無線モジュールは、通信速度はある程度だが、切れない確実な無線通信を必要とする用途に特化した無線モジュールであり、インフラ監視やプラント/工場管理用途での普及拡大を狙っている。

――日本での無線モジュールビジネスに着手され、間もなく2年が経過します。

望月氏 無線モジュールビジネスは、5年、10年先を見据えた中長期的な事業として位置付けているが、徐々にビジネスが軌道に乗りつつある。2014年9月には、当社の無線技術の国内での普及をめざし、「ダスト・コンソーシアム」を立ち上げた。コンソーシアムには、システムインテグレーターやソフトウェアベンダー、機器メーカーなど百数十社の賛同を得て発足し、第1回の会合には120人のパートナーの参加があった。今後も定期的に会合や分科会を開催し、パートナー間での情報交換し、無線を導入しやすいソリューションを構築していきたいと考えている。

楽観視せず、先を見据える

――市況の良さ、技術課題解決へのニーズ拡大という追い風の下、2015年は期待できますね。

望月氏 良い流れではあるが、決して楽観していない。市場は、早い速度で変化していく。為替1つ見ても、以前は2〜3年掛かったような値動きが、わずか2〜3週間で動いている。関連業界の再編の動きも依然として活発だ。

 目まぐるしく環境が変化する中で、業績を押し下げるような突発的な事案が起こる可能性も大いにあり得る。われわれは、想定されるリスクに対し、常にバックアップを用意し、リスクをプラス要因に変えられるような準備を行っていく必要があると考えている。

 分かりやすいリスクとしては、市況の下降局面だ。いつかは分からないが、必ず市況が悪くなる時期は来るわけで、その時を乗り切り、勝ち抜くための投資をしていかなければならない。

 振り返れば、2000年ごろ、当社の日本での売り上げの約60%を携帯電話機やノートPC向けで売り上げていたにもかかわらず、民生機器向けは価格競争主体の市場となると予測し、自動車分野へと舵を大きく切った。自動車向けビジネスは立ち上げに時間が掛かる市場で、多くの苦労もしたが、当時の判断により、民生機器市場の低迷を尻目に成長することができた。

 今も同じで、持続可能な成長を実現するため、5〜10年先を見据えた投資を行わなければならない。

市場を自ら創り出す

――投資先はどの辺りになりますか。

望月氏 中長期的な投資としては、無線モジュールやエネルギーハーベスト向け電源ICなどがそうであり、デジタル色の濃いLTC2983などソリューション提供を目指していく姿勢も5〜10年先を目指したものだ。

 また、市場が縮小し続ければ、いくらシェアを獲得しても、いずれ成長できなくなる。そのためにも、市場が広がるような投資も必要だと考えている。具体的には、アナログエンジニアを育てて、日本のアナログ、エレクトロニクス市場を拡大させたいと考えている。2013年に続き、2014年12月に“アナロググルとの集い”を開催したのも、そうした思いから。当社のグルと、接点を持ってもらうことで次世代のグルが日本で育ってもらえればと思う。また学生レベルや新人技術者向けには、アナログ設計開発支援ツール「LTspice」の普及、啓もうを行っている。LTspiceは、分かりにくいアナログを見える化することができる回路シミュレーションであり、1人でも多くのエンジニアに利用してもらえるよう無償で提供している。2015年もLTspiceユーザー向けイベント(4月)やアナロググルとの集い(秋予定)などを通じ、アナログ技術者育成、強いては日本のアナログ市場拡大を目指していく予定だ。

 もちろん、自動車、産業機器、通信機器といった市場でも持続的な成長を目指していく。正しい投資先の答えは、市場、顧客の要望の中にある。私自身も含め、市場/顧客との接点を常に強化して、不測の事態が起こっても成長し続けられる体制を目指していく。


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提供:リニアテクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月12日

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