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パワーマネジメントICに注力するインターシル、インフラ/産業機器に向けた60V入力対応の電源ICを製品化

48Vの入力電圧から直接1Vの出力電圧を生成する――このようなDC/DCコンバータに利用可能な制御IC「ISL8117」が登場した。12Vなどの中間バスが不要になるため、部品コストを低減でき、効率を高めることが可能だ。

» 2015年07月24日 10時00分 公開
[PR/EE Times]
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 パワーマネジメントIC(電源IC)は極めて有望な市場である。さまざまな電子機器において、かつてないほどにパワーマネジメントICの重要度が高まっているからだ。

 その背景には大きく3つのトレンドがある。1つ目のトレンドは、サーバやストレージ機器、ネットワーク機器、産業用電子機器などの消費電力が増大していることである。消費電力が増大すれば、電気料金も増える。しかも発熱量も大きくなるため、空調機器を稼働させる電力も欠かせない。その分だけ、電気料金がかさむ。従って、コスト削減のため、高効率で電力を変換するパワーマネジメントICに対する需要が急激に高まっているわけだ。

 2つ目のトレンドは、スマートフォンやウェアラブル機器、ヘルスケア機器、IoT対応センサ・モジュールなどの電子機器が急増していることだ。こうした電子機器にとって、電池駆動時間は極めて重要な特性になる。しかも、小型であることが必須だ。そのため高効率な上に小型のパワーマネジメントICが求められている。

 3つ目は、自動車のエレクトロニクス化である。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に代表される車両の電動化はもちろんのこと、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Assistant System)やインフォテインメント機器などの導入が急ピッチで進んでいる。こうした動きが進めば進むほど、それらに電力を供給するパワーマネジメントICが必要になる。今や自動車は、パワーマネジメントICにとって一大市場と化しつつある。

売上高の20%強を研究開発に投じる

 米国のアナログ半導体メーカーであるIntersil(インターシル)は、パワーマネジメントIC市場における有力企業の1社である。同社の実績は豊富だ。パソコン用マイクロプロセッサに電力を供給するパワーマネジメントICでは、「R3テクノロジー」や「R4テクノロジー」といった同社独自の高速負荷応答技術を業界に先駆けて導入し、これまで市場を牽引してきた。さらにデジタル電源ICでは、2008年に米Zilker Labsを買収し、その製品と技術を取り込んだ。デジタル電源では、押しも押されもせぬトップ企業となっている。

 そのIntersilは、約1年前に経営陣を刷新し、新たな経営戦略の下で再出発を切った。新たな経営戦略では、同社の技術的な強みであるパワーマネジメントICに注力する。対象となるアプリケーションは大きく分けて3つある。すなわち、「インフラ/産業」「モバイル」「車載/航空宇宙」である(図1)。同社は、こうした市場に向けた製品力の強化を急いでいる。「新経営戦略では、全社売上高の20%強を研究開発に投じるようになった」(同社のIndustrial Power Products部門でDirector of Marketing and Applicationsを務めるLokesh Duraiappah氏)という(写真1)。

図1 Intersilが狙う3つのアプリ
パワーマネジメント製品に注力するIntersil(インターシル)の重点アプリケーションは、「インフラ/産業」「モバイル」「車載/航空宇宙」である
写真1 IntersilのIndustrial Power Products部門でDirector of Marketing and Applicationsを務めるLokesh Duraiappah氏

 対象となる製品は全部で5つある。DC/DCコンバータ制御ICと、DC/DCコンバータIC(POLレギュレータIC)、リニア・レギュレータIC、MOSFETドライバIC、電源モジュールである。

高電圧配電バスに対応

 今回Intersilは、上記の5つのラインアップのうち、DC/DCコンバータ制御ICに含まれるインフラ/産業分野向け製品を発表した。具体的には、最大入力電圧が+60Vと高い同期整流方式対応の降圧型DC/DCコンバータ制御IC「ISL8117」である(図2)。このICに、パワーMOSFETやインダクタ(コイル)、コンデンサなどを外付けして、DC/DCコンバータ回路を構成する。

図2 最大入力電圧が60Vと高い降圧型DC/DCコンバータ制御IC
型番は「ISL8117」。同期整流方式に対応する。ハイサイドとローサイドのパワーMOSFETを外付けして使う

 発売したICの最大の特長は、24Vや36V、42V、48Vなどの高い入力電圧を一気に1V付近の低い電圧に変換できることだ。Duraiappah氏によると、「高電圧配電バスの採用が最近のトレンドだ。中間バスは、排除される方向にある」という。高電圧配電バスを使うメリットは2つある。1つは、変換効率を高められることだ。中間バスを使うと、DC/DC変換は2回になる。高電圧を低電圧に一気に変換すれば、DC/DC変換を1回に減らせる。その分だけ効率の低下を抑えられる。もう1つは、部品コストを減らせることである。中間バスを使うとDC/DCコンバータ回路が2つ必要になるが、高電圧配電バスであれば1つで済む。

 例えば、通信やネットワークのインフラ機器に適用すれば、12Vの中間バス電圧が不要になり、配電システムを大幅にシンプルにできる(図3)。48Vを12Vに変換する中間バス用の降圧型DC/DCコンバータ回路を削減でき、DSPやFPGA、RFチップなどに電力を供給するPOL(Point of Load)用のDC/DCコンバータ回路だけで構成可能になる。

図3 中間バスが不要に
通信やネットワークのインフラ機器における配電システムに「ISL8117」を使うことで、12Vの中間バスを不要にでき、配電システムを簡略化できる

 さらに、最大入力電圧が+60Vと高いため、サージ電圧に対する信頼性を高めることも可能だ。図4は、医療診断システムの例だ。AC/DCコンバータやバッテリから初段のDC/DCコンバータ回路への入力電圧は24V、もしくは36Vを使う。この入力電圧に、その15〜25%に相当するサージ電圧が載っても、最大入力電圧が60Vと高いため、後段の回路に悪影響を与えることを防止できる。信頼性を高められるわけだ。

図4 サージ電圧に対する信頼性が高まる
医療診断機器の配電システムに「ISL8117」を使えば、入力電圧にサージ電圧が載っても、後段の回路に対して悪影響を与えることが防止でき、信頼性を高められる

バレー電流モード方式を採用

 入力電圧範囲は+4.5〜60Vで、出力電圧範囲は+0.6〜54Vである。スイッチング周波数は100k〜2MHzの範囲で設定できる。最小オン時間は40nsと短い。

 フィードバックループの制御方式には、バレー(Valley)電流モードを採用した(図5)。「最小オン時間が40nsと短いため、ピーク(Peak)電流モードでは電流波形に大きな雑音が載ってしまい、安定した制御が実現できない。バレー電流モードを使えば、PWM信号のオフ時間でサンプリングすることが可能なため、安定した制御が得られる」(Duraiappah氏)という。

図5 バレー電流モード
PWM信号のオフ時間に、インダクタに流れる電流をサンプリングする。このためオン時間が非常に短くても、安定した出力電圧制御を実現できる

 このほか、アダプティブ・スロープ補正と呼ぶ技術も導入した。この技術は、電流モード方式でも50%を超えるデューティ比で動作させることを可能にするものだ。一般に、バレーでもピークでも電流モード方式では、デューティ比が50%を超えると電源動作の安定度が低下するという問題がある。今回は電流波形を自動的に調整するアダプティブ・スロープ補正技術を導入することで、この問題を解決した。

 ハイサイドとローサイドのパワーMOSFETを外付けして使用する。ゲート・ドライバ回路は集積した。この回路の駆動能力はソース時に2A、シンク時に2Aである。最大出力電流は、外付けのパワーMOSFETの性能に依存するが、約30Aが得られるという。変換効率は、+24V入力、+5V/4A出力、300kHz動作時に94%程度である。

 軽負荷時には、パルス・スキップ機能付きダイオード・エミュレーション・モードに移行して、変換効率の低下を防ぐ(図6)。シャットダウン時の消費電流は5μA、静止時は2.5mA。位相補償回路を集積したため、ユーザーが設計する必要はない。このため、外付け部品は10個と少ない数で済む。パッケージは、実装面積が4mm×4mmの16端子QFNと、6.4mm×5mmの16端子HTSSOPの2種類を用意した。評価ボードについては、2製品準備した。低出力タイプ(+3.3V/6A出力)の「ISL8117EVAL1Z」と、高出力タイプ(+12V/20A出力)の「ISL8117EVAL2Z」である。

図6 軽負荷時でも効率劣化は小さい
パルス・スキップ付きダイオード・エミュレーション・モードを採用することで、軽負荷時の効率劣化を小さく抑えた。例えば、1A出力時では、一般的な手法に比べて、効率は9.5ポイント高い

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提供:インターシル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年8月31日

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