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セキュア・コネクションで実現するIoT社会NXPセミコンダクターズジャパン セキュリティ&コネクティビティ事業部長 山本尚氏

NXPセミコンダクターズは、「Secure Connections for a Smarter World」(よりスマートな世界を実現するセキュア・コネクション)を全社スローガンに掲げて、ソリューションビジネスを展開する。IoT社会の実現に向けて、同社が強みとするアイデンティフィケーションを基盤技術として、リーダーシップを発揮していく方針である。NXPセミコンダクターズジャパンでセキュリティ&コネクティビティ事業部の事業部長を務める山本尚氏に、技術/製品戦略などを聞いた。

» 2015年08月24日 00時00分 公開
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全社で最も規模の大きい事業

――NXP全社の事業戦略の中で、アイデンティフィケーション(ID:Identification)事業の位置付けを教えてください。

山本氏 ID事業は、2014年2月よりセキュリティ&コネクティビティ(S&C)事業部に統合され、新たなスタートを切りました。担当する製品は認証技術を含む近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)製品やRFID(Radio Frequency Identification)製品に加え、マイコンやインタフェース系IC、オーディオアンプや電源用ICなど多岐にわたります。これ以外のビジネスユニットとしては、車載システム向けデバイス製品を担当する「オートモーティブ事業」と、汎用半導体製品などを担当する「スタンダードプロダクト事業」があります。

 NXP全体の部門別構成をみると、2013年の実績で旧来のID事業とオートモーティブ事業の売上高がほぼ同等の規模となり、2014年以降は他の製品群も取り込んだS&C事業が、全社で最も規模の大きい事業となりました。

――ID事業の売上高が、オートモーティブ事業のそれを上回った主な理由は何ですか。

山本氏 大きく2つあります。1つは携帯電話にNFC機能が搭載されたことです。2011年より携帯電話向けNFC需要は盛り上がり、現在では携帯電話用NFC市場で当社のシェアは90%に達しています。

 もう1つは、金融市場向けスマートカード用IC事業の拡大です。従来、金融系スマートカード向けICでは高いシェアを獲得していました。また、当社は早くから非接触型ICにも注力してきました。2011〜2015年には中国市場で非接触型スマートカードの導入が進んだこともあり、事業拡大に弾みをつけました。金融系カードにおける当社のシェアは接触型と非接触型を合わせた全体市場で50%強です。非接触型のみであれば、70〜80%の市場シェアを確保できています。

NXPはセキュリティ向けIC市場で高いシェアを獲得している(クリックで拡大)
出典:NXPセミコンダクターズ

2020年に向けて、国内でも飛躍へ

――日本市場におけるS&C事業の現状と取り組みを教えてください。

山本氏 もともとNFC技術は、ソニーとフィリップス(現NXPセミコンダクターズ)が共同開発した近距離無線通信技術であり、国際標準規格として認証されています。日本ではFeliCa(フェリカ)という名称で一般に普及しています。

 金融系スマートカード向けでも、日本ではATM装置にカードを挿入するため、機械的強度をさらに高める必要があり、これまでは当社が参入しきれていない市場でした。このため、2011〜2012年に大手印刷会社と協力し、日本のATM装置に対応できるモジュールを開発しました。その成果が受注に結び付いてきているので、これから期待できる市場です。

 交通系カードだけでなく、金融系カードにおいても現在主流となっている接触タイプから、非接触タイプへの移行が期待できます。一例ですが、米国を中心に広がりつつあるモバイル決済サービス「Apple Pay(アップルペイ)」の動向に注目しています。日本でも「iPhone」のシェアが高く、Apple Pay が本格的に利用されるようになれば、非接触型リーダー装置の普及などNFC市場に対する影響もかなり出てくると想像できます。最近では「Android Pay」や「Samsung Pay」なども登場しています。

 2020年には東京オリンピック/パラリンピックが開催されます。そこには世界中で非接触型の金融系スマートカードを利用している一般消費者が、日本に集まってくるでしょう。これ以外でも、2016年1月より施行されるマイナンバーカード(個人番号カード)があります。行政利用から始まり、いずれは非接触型の利点を生かした民間サービスへと広がる可能性にも期待しています。

――非接触型カード決済システムの場合、セキュリティ面で課題はありませんか。

山本氏 非接触型カードを用いた場合、最大で「20ポンド」あるいは「25米ドル」といったように支払額の上限を決めるなど、現状では比較的少額決済に限定しているようです。Apple Payの場合、指紋認証でセキュリティを担保することになっています。カード側に指紋認証機能を搭載することは、電源供給の面で技術的に厳しいと思われますが、クラウド型サービスでオンライン認証するなど、これからの技術革新に期待しています。

さらに進化するNFC

――NFC応用技術はこれから、どのような進化を見せるのでしょうか。

山本氏 NFC機能は、「コンタクトレスフロントエンド(CLF)」と「セキュアエレメントデバイス(SE)」の2つのブロックに大別することができます。通信を行うだけであればCLFのみで対応することができます。CLF部は以前のものよりも通信速度や受信感度が向上しており、性能の違いは通信可能な距離の差として現れます。

 個人情報などを保護する場合にはセキュアエレメントの機能が必要となります。しかも、システムに組み込むためには高度な技術や十分な知識が設計者に求められます。Googleが既に発表しているホストカードエミュレーション技術を活用すると、ホストプロセッサー側で本来セキュアエレメントにて担われるカードエミュレーション機能を実現できます。システム機器メーカーのセキュリティに対する考え方にもよりますが、今のところホストカードエミュレーション技術は、セキュリティ面での懸念もあり、決済用途にはあまり広がっていないようです。

高速性とセキュアエレメント

――NFC市場におけるNXPの強みは何ですか。

山本氏 大きく2つあります。1つは非接触の性能/特性が競合他社製品に比べて優れている点です。非接触型スマートカードの場合、カード会社が通信/認証に要する時間の上限値を規定しています。セキュリティの度合いにもよりますが、一般的な768ビットのキー長を用いた認証では、400ms以下と規定されていますが、当社の製品は250ms以下を達成しています。チップの性能が高いのは、独自の設計技術やプロセス技術によるものです。

 もう1つはセキュアエレメントの機能も含めて、ワンストップでターンキーソリューションを提供できる唯一の企業だということです。セキュアエレメント上にはJava OSやカード会社特有のアプリケーションが実装されます。当社は、eパスポートや金融系カード向けセキュアエレメント技術で多くの実績を持っています。これらの技術をベースに高度なセキュリティを提供することができます。

PN66Tモジュールの外観

 これらの特長を備えた製品の1つがNFC IC製品「PN66Tモジュール」です。CLFの感度が向上したことで、カードエミュレーションやリーダー/ライタモードの性能が向上しています。オプションの5Vドライバを用いると、アンテナサイズを従来に比べて最大60%も削減することが可能です。小型形状が求められるウェアラブル端末に適しています。金融系やMIFARE規格などに対応する検証済みのエンドアプリケーションなどに向けて、完全統合型ソリューションを提供します。

玩具、ペアリング……広がるNFCの応用範囲

――NFC技術の活用が期待される新たな応用市場はありますか。

山本氏 NFC技術は多くのゲーム機器にも搭載されています。今後も需要拡大が期待できる市場です。一例として、ゲーム機器や玩具メーカーなどが連携し、次世代のゲーム業界を見据えて進めている「クロスメディアプロジェクト」が挙げられます。ゲームソフトやアニメーション、映画など、バーチャルとリアルのコンテンツを融合した世界です。遊び方の一つとして、NFCチップが内蔵された小さな玩具を、NFCを搭載したゲーム機やスマートフォンにかざすと、玩具からデータが読み出され、ゲーム中にキャラクターや剣、盾などのアイテムが登場したりします。NFCチップにはデータを書き込むこともできます。

 ゲーム機器業界では、新たな技術要求もあります。本来、NFC技術はカード/端末機器とリーダー装置が1対1でデータの送受信を行います。ところが、トレーディングカードとして販売されている専用カードを使ったゲームでは、「一度に何枚ものカード情報を読み込みたい」という要求があります。この場合、別の技術を用いるのが一般的ですが、ユーザーはNFC技術にこだわっています。NFC技術だとスマートフォンを活用できるからです。こう言った消費者のトレンドに技術革新で応えていくのも、当社の使命だと考えています。

――ゲーム機器以外でも注目市場はありますか。

山本氏 期待できる分野の1つとして、ペアリングの用途があります。スマートフォンや音楽プレーヤに録音した音楽を外部スピーカで聞く場合、Bluetoothなどの近距離無線通信方式が利用されますが、機器同士を接続するためにペアリングが必要となります。その場合にNFC技術を用いると簡単に設定を行うことができます。デジタルカメラで撮影した画像データをプリンタに送信する場合も同様です。ペアリングを頻繁に行うような用途に適しています。

 さらに、純正品などを認証する真贋判定用途にも期待しています。例えば、USB Type-Cは電源になり得る接続部品です。規格を完全に満たしていないケーブルを使った場合に、過電流などによって、誤動作や故障の原因となることがあります。純正品と認識されなければ、機能を制限したり電力供給を停止したりすることができます。市場のニーズによって、いずれは、USB Type-Cパワーデリバリ用ICと認証用ICを統合した製品を提供していく可能性もあります。

――RFIDの応用市場はいかがでしょうか。

山本氏 すし店や食堂などでお皿の下部にRFICタグが取り付けられていることがあります。量り売りの食材などの場合も、お皿に盛り付けた後に計量して、その重さをタグに書き込みます。レジではそのタグデータを読み取り、料金を支払うシステムです。海外では駐車場の入退車管理を、ナンバープレートに取り付けられたRFIDタグで行う事例もあります。さらに、ワインなどの食料品や日用品、衣料品などにも、RFIDタグを取り付けて、製品管理が行われていますが、現状では全体有効市場の3%程度しか普及はしていません。潜在需要の大きい市場だと思います。

Secure Connections for a Smarter World

――NXPが全社スローガンとして掲げられている「Secure Connections for a Smarter World」について、その概要を教えてください。

山本氏 IoT社会の実現に向けて、大きな技術トレンドを挙げるとすれば、「すべてがつながる」、「すべてがスマートに」、「すべてがセキュアに」ではないでしょうか。こうしたトレンドに対応していくことがNXPのビジネス機会創出につながると確信しています。例えば、オンライン人口は10億人強で、オンライン接続されている機器は500億台強です。2017年までにインテリジェンス機能を搭載した機器は800億台強に達すると推定され、サイバー攻撃による経済的損失は約5000億米ドルに上るとの予測もあります。

IoT社会の実現に向けた大きな技術トレンド (クリックで拡大)
出典:NXPセミコンダクターズ

 こうした中でNXPは、「Secure Connections for a Smarter World」を全社スローガンに掲げました。eパスポートや銀行系カード、MIFARE規格準拠のスマートモビリティカードおよび、リーダー装置、携帯端末などに搭載されるID認証チップでトップシェアを獲得しています。これらの分野で蓄積してきたセキュア技術を、当社の多くの製品に付加して、ソリューションを提供していきます。もちろん、当社のオートモーティブ事業でもセキュア技術は重要であり、水平展開されることになるでしょう。


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提供:NXPセミコンダクターズジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月30日

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